207・RUNAWAY 1
時間掛かった割には、今回は少し短いですわ。最近とあるパソコンゲームにハマっていて、執筆しておりませんでしたわ。ホンマに堪忍ですわ。
ヒュン! ヒュン! ヒュン!
蒼銀と青色の影が、エルセラの街中を素早く駆けていく。道を走りぬき、壁を走る様に移動し、街中の障害物を超える様に移動するその姿は、地球の出身者なら、青いハリネズミか? それともパルクールか? はたまた請求書と共に持ってくる、果物と似た名前の男かと思うだろうが、その正体は…。
「此処まで来れば…良いだろう…」
街角で立ち止まって、辺りを警戒するその正体は、エルセラ竜騎士団の団長・シャロンであった。
「まさか、『旋風の舞』を使って逃げる事になろうとは…」
『旋風の舞』とは、魔力によって、使用者及び他者の速度を、一時的に上昇させる魔法である。その魔法を使ってまで、シャロンが逃げていた相手とは…。
「どう、リリア。そっちには居た?」
「!?」
近くから聞こえたその声の主は、自身のもう一人の恋人であり、副団長を務めている、エリスと瓜二つの少女・レイナであった。
「私は見なかったけど、住人や他の竜騎士達が、シャロンの姿を見たって」
其処にやって来た少女・リリアがレイナに答えた。
「僕達から逃げられると思っているのかシャロンは? ってかアレくらいで逃げなくても良かったのに」
そうレイナが呆れる様に言った。
『何がアレくらいだ…俺に女の子の服着せようとして…』
シャロンも呆れる様に、心の中で呟いた。シャロンが逃げているのは、レイナとリリアに女の子の服を着せられそうになったからである。
※ ※
遡る事数十分前…シャロンがヨハンと逢引きをしようとする為、ヨハンの元に向かう途中の事であった。
「シャロン!」
「んっ?」
其処に声を掛けてきたのは、リリアであった。その後ろにはレイナも居た。
「リリアとレイナか。どうしたんだ?」
「ちょっとシャロンに用事があってさ、今良いかい?」
シャロンの影響を受けた為か、男の子の様な口調でレイナが尋ねた。正直、ヨハンの所に行きたかったが、特に約束していた訳では無い上、仮に約束していたとしても、ヨハンなら少しくらいは待ってくれるだろうと思い、応じる事にした。
「…別に構わないが、俺に用事って何だ?」
「実はさ…シャロンにやってもらいたい事があってさ…」
リリアがニヤニヤした表情で言った。シャロンは嫌な予感を感じながら尋ねた。
「何だよ…俺にやってもらいたい事って…」
「実は…此れを来て欲しいんだ!」
そう言ってレイナが取り出したのは、シックな黒でリボンが付いた衣装…いわゆるゴスロリであった。
「何でそんなのが、此処にあるんだよ!?」
エルセラの城に、シャロンの絶叫が響いた。
「…そんなに大声出さないでよ」
耳を抑えながら、レイナが不満そうに言った。
「大声出したくもなるわ! ってかそんなのどっから持ってきたんだ!?」
ゴスロリを指差しながら、シャロンが尋ねる。
「これは前に先代のヒナタ様が、デザインとして残していたのを、最近書庫を片付けていたら出て来たから、知り合いの仕立て屋に持って行って作ったんだ」
リリアが答える。
『何考えてんだ、あのアホ娘は!』
女の子好きの五代目団長のヒナタを思い浮かべながら、シャロンは心の中で嘆いた。
「ってか何で俺が其れを着るんだよ? お前達のどっちか、もしくは他の女性団員とかにでも着せれば良いだろ?」
「いやいや。此れは一番シャロンが似合いそうだから、シャロンが着るべきだと思う」
レイナがジリジリと迫りながら言ってくる。
『ヤバい…このままじゃ俺は、恐ろしい思いをさせられる…』
そう内心思った時、シャロンはレイナとリリアの背後を見た。
「おい。二人の後ろでエリスが見ているぞ! もしかしてエリスは、その服が着たいんじゃないか?」
「えっ?」
シャロンに言われて、二人は後ろを振り返る…其処にはエリスは居なかった。
「エリスなんて、何処にも居ないじゃないか…」
そう言って振り返るレイナ…其処にはシャロンの姿も無く、一体の案山子が置かれていた。そしてそれには…
『サラバダ アケチクン』
というメッセージが書かれた紙が貼られていた。
「……」
あまりの事に、一瞬思考が停止する二人。
「はっ! シャロンに逃げられた!!!」
思考が再開し、事態を宣言するリリア。
「何だよこのメッセージ!? 誰だよ『アケチクン』って?」
案山子のメッセージを剥ぎ取りながらレイナが叫ぶ。二人は知らないが、辛うじてアベルなら、メッセージの元ネタが、日本の有名ミステリー作家の作品だと気づいただろう。
「アイテムボックスの中に、何で案山子が入ってるんだ…リリア! 待機していた他の女性団員達に伝えて! ボクはシャロンを追うから!」
「分かった!」
リリアは他の女性団員が居る所に走り出し、レイナはシャロンを追って走り出した。
※ ※
「…ガキの頃、同じ幼稚園の女の子が、着せ替え人形の話をしていたけど、今の俺は正にそうなりそうだな…!」
街角から様子を確認しているシャロンであったが、其処から見えるレイナとリリアの傍に、別の女性竜騎士が集まってきた。
「援軍か…絶対掴まるかよ…とりあえず、ヨハンと合流を目指そう」
そう呟いたシャロンは、再び『旋風の舞』で加速しながら、移動していった。
さ~て、シャロンは何処まで逃げれるんやろうな…。
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