204・シャロンとヨハンの情愛 3
今回にて、シャロンとヨハンの情愛は最後ですわ。しかし今回はマジで危険な描写が有りますわ。皆さん相当の覚悟を決めて読んで下さいな。
「という訳で…シャロンは眠ってしまったんだ」
苦笑しながら説明を終えたヨハン。
「…いやヨハン…一見するとその話、お前が優しいという話だが、根本的な話をすると、シャロンが自身の魔力と体調を考えなかった話って事だぞ?」
核的な事を指摘をするレオン。
「うんまあ…はっきり言ってしまえば、そうなんだけどね…」
苦笑気味にヨハンは言う。
「でもシャロンは…エルセラ竜騎士団の竜騎士や、エルセラの国に住む民達を護る為に、自身の身を削ってでも強くなろうとしているっていうのが、僕には分かるんだ…」
眠っているシャロンを見ながら、ヨハンが言う。
「愛している存在が頑張っているなら、それなりに応援してあげないとね」
「…なあヨハン…これはラティスやゲイルから聞いたんだが、お前この一月の間に、今までよりもシャロンと親密になっていないか? ラティスやゲイルは、エリスやアベルから聞いたみたいだが…」
レオンが前から気になっていた、ここ最近のヨハンとシャロンの仲について尋ねた。そしてそれは彼らだけではなく、エルセラの竜騎士達も気づいていた。
尋ねられたヨハンは、白い頬を少し赤く染めながら、静かに答えた。
「それはね…僕達…一月前に…深く愛し合ったんだ…」
「…! おいまさか…」
レオンはヨハンの言葉から、ある答えに辿り着いた。
「うん…僕達は…交わって一つになったんだ…」
ヨハンは再びシャロンの事を、穏やかな顔で見つめながら、一月前の事を話しだした。
※ ※
バサッ…
人の気配も感じられない様な森に、翼を羽搏かせながら降り立つ白いドラゴン・ヨハン。その背中には蒼銀の髪をした少女・シャロンが乗っている。
「シャロン。此処で合ってる?」
「ああ、ヨンが人が来ない所で、尚且つ泉がある所で探してもらったのが此処だ」
ヨハンの背中から降り立つシャロンが答えた。その空色の瞳には静かに燃える炎の様なモノが宿っており、胸に速い鼓動を感じていた。そしてそれはヨハンも同じであった。
シャロンとヨハンがやって来たのは、シャロンのユニークスキル・『世界の知識』のヨンにより、シャロンの質問を受けた答えが示した、大きな泉のある森であった。
その質問とは…『俺とヨハンが、誰にも見られずに、愛し合える場所を教えて欲しい』であった。
何時もならルーンも居るが、これから行う事が事により、今回は同行させずにお留守番という形になった。
「……」
シャロンは速い鼓動を感じながら、すぐ傍の樹の傍らまで行き、腰に差さっている白風を抜いて樹に立てかけて、次に背中のロンギヌスを隣に立てかけた。更には首から下げている、ヒナタのゴーグルを外して、ロンギヌスに引っ掛ける様にした。
それらを全て置いた後、その様子を見ていたヨハンに近づいて行く。
ヨハンの前まで来たシャロンは、見下ろしているヨハンの顔に、無言で手を伸ばした。ヨハンはそれに素直に応じて、シャロンと目線を合わせる様に頭を下げる。
「……」
「……」
二人は無言で見つめ合った。しかしその瞳には、先程と同様に静かな炎が宿っていた。そして何方からといわずに、静かに接吻を交わした。
「んっ…」
シャロンは下でヨハンの口を突っつく、ヨハンはそれに答える様に口を開き、中から舌を出して、シャロンの舌を押し込む様に差し込んだ。
「チュル…くぅ…チュプ…」
差し込まれたヨハンの舌を、シャロンはまるで食べるかの様にしゃぶり味わう。そんなシャロンの感触に、ヨハンは気持ち良さげに目を細める。
するとシャロンは目線を合わせていたヨハンから、体を下に下げる動きをする。ヨハンはキスを止めようとしたが、シャロンが自身の頭を掴んだままの上、目で止めないで欲しいというメッセージを感じとれた。念話を使った訳ではなく、そう感じとれたのであった。
「んちゅ…んっ…」
頭を下げた事により、シャロンの口内にヨハンの唾液が溜まっていく。最愛の存在の温かい唾液…それだけでシャロンは気分が高揚する。そして唾液が大分溜まった時…
「ゴクッ…」
シャロンは美味しそうに唾液を飲み込んだ。ヨハンの唾液を飲み込んだシャロンは、自身の首、胸、更には腹部を擦る様に触っていく。
『…俺の胃袋に…ヨハンの唾液が流れ込んで…俺の体の中で溶け合って、混ざり合ってる…』
「……」
シャロンから念話で伝えられる言葉に、ヨハンは恥ずかしくなって白い頬を赤くするが、それはシャロンも同じであった。
「ぷはっ…」
満足したのか、シャロンはヨハンとのキスを止めて口を離した。
「ヨハン…」
高揚した表情をしながら、ヨハンを見つめるシャロン。そして手を自身の後頭部に回した。
シュル…
布が擦れた音がしたかと思うと、シャロンの髪を結んでいる、エリスから貰ったリボンが解かれ、蒼銀の髪が肩まで垂れ下がった。
更にシャロンは首から下げているアイテムボックスから、大きなシートの様な布を取り出し、白風とロンギヌスを立てかけている樹の傍に敷いた。そして羽織っている赤色のエルセラ竜騎士団の団長の証のマントを外すと、シートの上に綺麗に畳んで置き、その上にリボンを置いた。
「シャロン…本当に良いの?」
ヨハンは腰に着けている蒼銀を外しながら、シャロンに尋ねる。それはこれから行う事の最終確認だった。
シャロンはヨハンの前に再び来る。
「良いんだ…俺はヨハンと一つになりたいんだ…俺はヨハンの事を愛しているから…俺は人間でお前はドラゴン…世の中は認めないかも知れないけど、俺はそんな事は気にしない…」
「…ありがとう…僕もシャロンの事を愛しているよ…」
ヨハンの優し気な言葉を聞き、同じく優し気な笑顔を向けられると…シャロンは、上着に手を掛けた…。
※ ※
「僕らは愛し合ったさ…誰の事も気にしなくて良い…例え世界が僕達の仲を認めなくても、僕らは愛し合うって誓ったんだ…」
強い意志を込めた瞳で、ヨハンはレオンに言う。
「……」
シャロンへの強い愛を語るヨハンに、レオンは何も言えなかった。
普段のヨハンは、穏やかというよりは優しい性格であり、他のドラゴンから何かを頼まれても、嫌な顔一つせずに協力をしてあげていたりする程でもある。
しかしレオンはある事に関しては、ヨハンは頑なな態度を取っている事を…それは牝のドラゴンから告白されても、決して承諾をしたりしないのであった。
断る時の口調も何時も通りの優しい口調だが、その意思は非常に硬い意思であった。そしてその意思は、シャロンを愛するという気持ちから来ている事が、レオンには理解出来た。
「…俺はお前みたいに、ヒナタを異性として愛する気持ちは無かったから、愛するという気持ちは分からないが…それだけお前が、シャロンを大切にしているってのは分かるな…」
レオンの言葉に、ヨハンは微笑みを返した。
「ありがとう、レオン…。シャロンは僕の事を強く求めたから、僕もシャロンには出来るだけ答えたよ…シャロンの空色の瞳が、僕に強く訴えていたからね…」
※ ※
再び人気の無い森の中…森の中にある泉の畔で、ヨハンが翼で体を覆い隠す様にしながら、辺りを見張る様に見つめている。
ヨハンが今身に着けているのは、額のゴーグルのみであり、そのすぐ近くには、ヨハンが愛用しているマフラーの様な布が付いた金色の首輪と手袋が置かれており…更にその近くには、乱雑に脱ぎ捨てられた、エルセラ竜騎士団の紺色の制服やサラシが置かれていた。
ヨハンは自身の腹部に、温かい感触と鼓動を感じていた。すると、その感じている存在が翼の中で動き出した。
ヨハンは静かに翼を大きく開いた。すると中から、純白の肌を見せた、ヨハンと同じく額のゴーグルと首から下げたアイテムボックス以外、一糸纏わないシャロンが出て来た。
「起きた? シャロン」
ヨハンが優し気な声で尋ねると、シャロンは全身の素肌を見せたまま、ヨハンの前に立った。
「うん…ヨハン、俺が眠っている間、周りを見ていてくれたんだな?」
「うん。誰かがやって来て、シャロンを襲わない様にね」
「俺はそう簡単にやられないけどな…ってか森の中でドラゴンに奇襲攻撃かける奴なんて、居ないと思うけどな…」
呆れる様な口調でシャロンが言った後、二人は笑った。その様子はとても少し前に愛し合っていたという風には感じられない、陽気な雰囲気であった。
「でもシャロン。どうしてゴーグルだけを、身に着けておこうって言ったの?」
ヨハンが尋ねた。
「うんそれはな、何か一つ身に着けていた方が、色々と魅力的だと思ってな…まあ、俺はこのペンダントも付けたままだけどな…」
ペンダントを触りながら、シャロンが言う。
「う~ん、人間の感性ってよく分からないね…」
「気にするな。俺がそう思っただけだ」
「そっか…じゃあシャロン、其処で水浴びでもしようか。汗も掻いたしさ」
ヨハンが尋ねると、シャロンは頷いた。そしてヨハンは、シャロンを抱きかかえると、直ぐ傍の泉に足を進め、シャロンが沈まない程度に身を泉に浸した。
「冷たくて気持ちいね…」
ヨハンが言った。
「そうだな…なあヨハン…」
「うん?」
「また…その内に愛し合おうな…俺はヨハンが求めるなら、何時でも構わないからな」
「僕だって…シャロンが求めるなら、何時でも愛するよ…」
「ヨハン…」
「シャロン…」
二人は見つめ合い…泉の中で静かに口付けを交わした。
※ ※
「そして僕らは…今まで以上に愛を誓い合ったんだ…」
ヨハンがレオンに対して、そう言い終わる。
「…よくもまあ、其処迄恥ずかし気もなく、俺に話せるよな」
少々呆れる様にレオンが言う。普通に考えれば、こんな恥ずかしい話、親友とはいえ話せる筈も無い。自分から聞いたとはいえ、少々迂闊だったとレオンは思った。
「でもレオンだって、今はシャロンのパートナーでしょ? なら知っていて欲しかったからさ」
「まあそうだけどな…まっ、お前が周りが何と言おうが、ソイツと愛し合うなら、好きにすれば良いさ…だけどヨハン…一つだけアドバイスをするぞ」
「?」
レオンが真剣な表情で言いだした。
「お前は絶対にシャロンを守れよ。俺はヒナタを助けられなかったけど、お前はまだシャロンを助けられるんだからな…飯でも食いに行ってくる…」
それだけ告げると、レオンは黒い翼を羽搏かせて、飛んで行ってしまった。
「レオン…君に言われなくとも、僕はシャロンを守るさ…」
そう強い意思でヨハンは言った。
尚、その後目を覚ましたシャロンに、ヨハンが一月前の森での事をレオンに話したと言ったら、顔を真っ赤にして滅茶苦茶恥ずかしがって怒り出し、ヨハンの柔らかなお腹を何度も叩いたのであった。
深く愛し合い、強い愛を誓い合ったシャロンとヨハンなのでした。
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