199・ヒナタはどんな娘?
今回はHiraさんも好きな、ヒナタの話ですわ。長いので分けましたわ。ヒナタの個性が分かりますわ。
「なあシャロン。聞きたいんだけど良いか?」
団長室で仕事をしているシャロンに、同じく隣の机で仕事をしているアベルが話しかけた。そのアベルの正面には、同じく机で仕事をしているエリスも居る。
団長室には元々、応接の机の除けば机は団長の机一つだけであったが、シャロンがアベルとエリスを副団長にした事により設置してのであった。
「何だよ?」
書類を見ながら答えるシャロン。
「ヒナタってどんな奴だ?」
アベルの言葉に、シャロンは書類から顔を上げた。
「…誰から聞いたんだ?」
シャロンが尋ねる。
「俺が訓練を担当している、中級騎士から。俺が来る前に、ヒナタっていう黒髪で黒い瞳の女性竜騎士が居て、五代目団長を務めてたって」
「そうか」
「で、どんな奴なんだ?」
シャロンは壁に掛かっている、歴代の団長の写真を見上げた。
「あれだ。あの一番右の女の子だ」
シャロンはヒナタの写真を指差した。
「あれって…日本人か?」
「ああそうだ…ヒナタ…本名、草薙 日向は日本の大阪からやってきたんだ」
シャロンが言った。それに対してアベルは驚いたが、エリスは既にヒナタが、シャロンの前世の国の出身である事を知っていた為に、特に驚かなかった。
「日本からって…俺達みたいに、死んでこの世界に来たのか?」
「いや…ヒナタは呼び出されたんだ」
「呼び出された?」
シャロンはアベルに、嘗てヒナタから召喚された事についての事を話した。
「マジかよ…呼び出しておいて、無職なら即追放って…自分勝手な国だな…」
「ああ、俺も聞いた時、同じ事を思ったよ」
「でも、先々代の団長に拾われたのは、ラッキーだったな…あれ? そういえばヒナタの名字はクサナギだったな…シャロン。お前の名字もクサナギじゃなかったか?」
「俺の今の名字は、ヒナタの名字を勝手に貰ったんだ。俺がヒナタの全てを引き継ぐって意味でな」
「成程…それで話は戻すが、ヒナタはどんな奴だったんだ?」
最初の質問をするアベル。それを聞いたシャロンは考える。
「俺がエルセラに来た時、ウェンリルがヒナタの事を、『変人』と言っていたが、俺に言わせれば…エロいな」
「!? エロい…?」
「色んな意味でな。しょっちゅう女性団員の胸や尻を触ったり、着替えを覗いたり、抱き付いたりしたんだよ、ヒナタは…極めつけは…エリス、ちょっと立って机の前に出て、アベルに全体像が見える様にしろ」
「? はい」
いきなり指名をされた事には不思議に思ったが、エリスは椅子から立ち上がって、机の前に出て、アベルに自身の姿を見える様に立つ。
「エリスがヒナタの話と、なんの関係があるんだ?」
「正確には、エリスが着ている、女性団員の制服だ」
エリスは外見は美少女とはいえ、本来は男の娘であるが、着ている制服は女性団員の制服であり、男性団員の制服を着ているシャロンとは、対を成していた。
「上着の方は男性団員も女性団員も、色が違うだけでデザインは同じだ…だが下の方はどうだ?」
シャロンが指摘した、女性団員の下の方…スリットが入った、マイクロミニのスカートであった。只でさえマイクロミニで短いのに、太股が見えるスリットの性で煽情的であった。
「…スリットから見える足に、目を奪われてたな…」
アベルが呟いた。
「お前、男の足に魅了されてたのかよ」
「違げぇよ! エリスを女だと思ってたんだよ…ってか関係ないだろ、その話は! ヒナタと制服のエロさと何が関係しているんだよ?」
「以前俺は、エルセラ竜騎士団の書庫で、四代目団長時代の制服の写真を見たんだが…その時は膝上くらいまでの長さだったんだよ」
「…それはつまりアレか…先々代の団長の時代から、ヒナタが団長になった後の間に、スカートが短くなったのか?」
「そういう事だ。俺はその事をヒナタに尋ねたら、『動き易い様に、短くした』って答えたんだけど…俺は納得出来なくて追及したら…『だってエロいやん。短くてスリットから太股見えてたら。それに風が吹いたら捲れて、中の履いている物を見えてラッキーやん』って答えたんだ」
「…どんだけエッチな団長なんだよ」
ドン引きするアベル。黙って聞いていたエリスも苦笑している。その時アベルは、ある事に気付いた。
「? 待てよ。ヒナタって女だろ? 普通スケベな男の団長なら、何となく分かるが、何で女のヒナタが、女の太股やチラリズムを求めるんだ…まさか…」
アベルの質問に、シャロンは溜息を吐いて答えた。
「そのまさかだ…ヒナタは、女の子が好きなんだ…」
「…わぉ…」
アベルが言葉を漏らした。
アベルはアメリカ出身である為、そういう事に理解があった
為、大して驚かなかったが、エリスは驚いていた。
「えっ!? ヒナタ団長って…女性が好きだったんですか?」
「そうみたいだな。男に対して、恋愛感情ってのが抱けなかったらしい…それとな…これはヨハンとレオンは知っているんだけど…エリスには気を使って、言ってなかった事があるんだ…」
「? 何を…ですか…?」
何か自分に不都合な事があるのではと思いながらも、気になって尋ねるエリス。
「俺…ヒナタに好きだ…って…生前告白されていたんだ…」
エリスに対して、申し訳なさそうな表情で言った。
「…ヒナタ団長も…シャロン様の事を愛してらっしゃったのですね…」
ポツリと呟いたエリスだったが、其処にシャロンを責める様子はなかった。
「でもどうして、ヨハンさんとレオンさんには言って、私には言わなかったんですか?」
「ヨハンは俺の最愛の恋人で親友でパートナーだから、黙っている訳にはいかなかったし、レオンに至っては、当時はヒナタのパートナーだったから、自然に知る事になったんだ。でもエリスに話したら、俺やヒナタに気を使って、身を引いてしまう可能性もあったからな…」
「……」
そう言われてしまえば、エリスは文句は言えなかった。シャロンなりに気を使ってくれて、教えなかっただけなのだから。ヨハンは知っていた事には少々不満はあったが、シャロンにとってヨハンは最も大切な存在なのだから、隠し事は嫌だったのだと推測できた。
「今考えたら驚きだ。俺は体は女でも、心…魂は男のまんまなのに、女の子が好きなヒナタが、俺に惚れるんだからな…」
シャロンは当時の事を思い出しながら、その事を話し始めた。
次はシャロンがヒナタに、告白された時の話ですわ。今回少々もヤバいか…?
因みに前回アベルが、『十歳の頃から、拳銃を使っていた』という設定は、昔ニュースでみたアメリカの銃社会の様子の事から来ていますわ。
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