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196・『僕』なレイナと『私』なエリス

 前話の宣言どおり、今回の話は前話とは続いていないですわ。諄い様ですが、今回の『ぼのぼの編』は、話の脈絡が無いですわ。

「んっ…」

 甘い香りが鼻孔を突き、柔らかなベッドの感触を感じながら、エリスの意識は覚醒していく。

『何だろう…良い香り…』

 そう思いながらエリスは、香りの元を知るべく目を開けた…其処には自身の目の前で眠るシャロンの姿があった。

「……キャアアア!!!」

 あまりの事にエリスは、大声で悲鳴を上げて飛び起きてしまう。

「な、何だ!? 敵の襲撃か!?」

 エリスの悲鳴に、シャロンは飛び起きた。それと同時に同じベッドで寝ていたルーン迄、毛を逆立てさせて起きる。

「何だエリス…起きたのか」

 やや寝ぼけ眼でシャロンが尋ねた。何時も髪を結んでいるリボンは、寝ていた為か外されており、蒼銀の髪は肩まで降ろされていた。

「な、何でシャロン様が…私のベッドに寝ているんですか…」

 戸惑いながらも尋ねるエリス。

「何って…此処俺の部屋だぞ? お前忘れたのか? 昨日ここで下級騎士の報告書の話し合いをしてたの…お前途中で寝ちゃったんだろ?」

「えっ…あっ!」

 シャロンに言われて、エリスは思い出した。

 シャロンの言うとおり、エリスは前日の夜にその日の下級騎士の街での任務の報告をしていたのだ。

 様々な事を報告して、シャロンがその事を纏めている内に、エリスは疲れからうたた寝をしてしまったのであった。

「気づいたらお前は寝ていたけど、時間はもう深夜だったから、お前の部屋に連れて言ったらレイナに迷惑が掛かると思って、俺のベッドに寝かせたんだ」

「そ、そうだったんですか…」

 副団長でありながら、団長であり恋人であるシャロンの前で寝てしまった事に、エリスは恥ずかしさを感じた。

「俺は其処のソファーで寝ようかと思ったんだけど、ベッドに寝かせたお前を見ている内に、眠たくなってな…それでそのまま隣で寝てしまったんだけど…悪かったな…」

「えっ?」

「エリスだって年頃の男の娘…もとい、男の子ってやつだろ? 目の前で女の子が寝てたらビックリもするし、気まずいよな…」

 申し訳なさそうに言うシャロン。それに対してエリスは困ってしまう。

「い、いえそんな…寝てしまった私が悪いんですし…」

 気まずくなったエリスは、慌てて部屋を見渡す。すると壁に立てかけてある、先代の団長・ヒナタの槍であるロンギヌスが有り、その隣には自身の大鎌・ツインサイズが立て掛けられていた。更に自身の副団長としての証である青いマントと青いベルトのゴーグルは、前日の夜の報告時に使っていた机に畳まれて置かれていた。

「わ、私、これで失礼しますね!!!」

 エリスは慌ててベッドから飛び降りると、ツインサイズとマントとゴーグルを持って、部屋を飛び出していった。

「……」

 急に飛び出して行ってしまったエリスに、茫然とするシャロンであった。


※         ※


「はぁ…私って最低ですね…」

 ツインサイズを背中に背負い、マントを羽織ってゴーグルを首から下げたエリスが、溜め息を吐きながら、竜騎士団の城の廊下を歩いていた。時間はまだ早いのか、他の竜騎士団員の姿は無かった。

「シャロン様の前でうたた寝しただけはなく、お手数をおかけしたのに礼を言わずに飛び出すなんて…これでは恋人失格ですね…」

 すっかり落ち込んでしまったエリス。その時…

「あっ、エリス!」

「!?」

 ふと前から声を掛けられたので、エリスが顔を上げると其処には、自分とは逆向きに大鎌を背負い、黒いマントを羽織って、ピンクのベルトのゴーグルを首から下げた、自分と瓜二つの人物が居た。

「姉上!」

 エリスの双子の姉のレイナであった。

「どうしたんだよ? 昨日は帰ってこなかったじゃないか? だから探しにきたんだよ」

 レイナがエリスの前まで来て尋ねた。レイナとエリスの双子の姉弟は、上級騎士になった際、其々個室が与えられたが、エリスがレイナとの同室を望んだ為、同じ部屋で過ごしているのであった。因みにレイナの方も問題は無かった。

「実は…」

 エリスは前日の夜にうたた寝してしまい、そのままシャロンの部屋で過ごした事を話した。

「何をやっているんだか…」

「面目ありません…」

「僕がエリスだったら、そのまま押し倒して、濃厚な交わりでもするけどな」

「何でそうなるんですか!?」

 てっきりうたた寝した事を言われたかと思ったが、姉が言った意味は全然見当違いの話であった。

「だって折角シャロンと恋仲になったんだろ? それなのにまだフレンチキスくらいしか、していないじゃないか!」

「私は姉上みたいに積極的ではないんです」

「まあエリスがリードするってイメージは、姉である僕にも浮かばないしな…まっ、気長に頑張れば良いさ。僕だって早く恋人が欲しいよ。さてと、僕はシャロンに頼んで、特訓でも付けてもらうよ」

 そう言ってレイナは、エリスの脇を抜けて、シャロンの部屋の方へと向かっていった。

 エリスはそんな姉の姿を見送った。

「…姉上も変わってしまいました…前は自分の事を『私』で女の子口調でしたのに、今では『僕』と呼んで男の子口調ですし…」

 何処となく寂し気に呟くエリス。

 ロクザルから帰ってきたあの後、副団長に任命されたエリスであったが、それによりレイナが自分の実力とエリスの実力に差が出たと感じ、シャロンに特訓を頼み込んだのであった。

 流石に副団長になったエリスと双子の姉だけあって、レイナはみるみると強くなっていったが、俺口調のシャロンに影響されたのか、レイナの口調は僕口調になってしまい、喋り方も男の子の様になった。

 当然レイナ自身もシャロンも気づいており、シャロンからは、『ヒナタと被るぞ』と言われたが、僕口調が気に入ったのか戻そうとはしなかった。

 結果的であるが、女の子である姉が僕口調、男の子である弟が私口調という、全くの正反対になってしまったのであった。

「まあ私も昔とは口調が変わりましたか、姉上の口調が変わってしまった事に、何も言えませんけどね…」

 そう呟いてエリスは、朝食の時間まで自室に居ようと思い、足を進めたのであった。


 ヒナタが居なくなってしまったので、新・ボクっ娘キャラとして、レイナがなりましたわ。今回の話は大分前から考えておりましたわ。因みにシャロンの名前のモデルの女の子も、ボクっ娘でしたわ。

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