192・オマケ チャンチャン
今回のオマケと次回の登場人物で、この章は最後ですわ。
野宿を経てエルセラに帰ってきたシャロン達。これは帰還したその日の夜の話である。
「此処には、日本の『銭湯』みたいのがあるのか」
シャロンと共に浴場へとやってきたアベルが言った。アベルの服装は旧型の制服に、白いマントを着けていた。つまり下級騎士として入団したのであった。
「アメリカ人のアベルが、銭湯を知っているなんてな」
アベルの隣に並んで、浴場の入り口に立っているシャロンが言った。因みにこんな会話をしているのは、当然ながら周りに自分達の素性を知っている者が居ないからである。
「俺はアメリカに居た頃から、日本に憧れていてな。何時か日本に行ってみたいと思って、色々と日本の文化を勉強をしていたんだよ」
「じゃあ日本語も話せたのか?」
「少しだけだけどな…そういえば、今俺達って普通に会話出来てるな…」
「こっちの世界に転生された際に、色々と調整がされたみたいだ…地球の会話は此処までだ!」
ふと背後から声が聞こえたので見てみると、何人かの竜騎士達が、入浴の為にやって来ていた。
「じゃあそっちが男の方だからな」
そう言ってシャロンは、女湯の方に足を進める。
「…お前、女の方に入るのか…?」
シャロンの元の性別を知っている為に、アベルは戸惑った様子を見せた。
「今の俺は女だからな」
そう言ってシャロンは女湯に入り、アベルは肩をすくめながら男湯に入った。
その直ぐ後に、レイナとエリスの双子姉弟がやって来た。
「じゃあエリス。お風呂出たら、此処に集合ね」
「はい、姉上」
そう言って二人はそれぞれ、女湯と男湯に入って行った。
※ ※
脱衣所では他の女性竜騎士達が、服を脱いだりしている。そんな中シャロンは棚にある脱衣籠の前に行き、自身の寝間着とタオルを籠に入れ、頭に乗っているルーンも籠に入れた。
「ルーン、ちょっと待ってろよ」
「キュイ!」
「あっ、シャロンも来てたんだ」
声を掛けられて振り返ると、其処にはレイナが居た。外見がエリスと全く同じの為、一瞬エリスだと思ってしまった。
「レイナか。レイナが此処に居るって事は、エリスも風呂に入りに来ているのか?」
「そうだよ。シャロンはあの新入りの案内をしていたの?」
「まあな。思ったより時間が掛かってしまったけど…因みにソイツは今、男湯に居るぞ。さてと、俺も入るかな」
そう言ってシャロンは、制服を脱ぐ為に手を掛けた。その時…
「うわぁぁぁぁ!!!」
「!?」
男湯の方から、悲鳴が上がった。
「…今の声…アベルか?」
シャロンは脱ぐのを止めて、女湯を出てみた。すると風呂に来ていた大勢の竜騎士達が、中から悲鳴が聞こえた為に、風呂の入り口で立ち往生していた。
「…俺が見てくる」
そう言ってシャロンは、堂々と男湯に入って行く。
「どうしたんだ? 一体」
「!?!?!?」
そう言いながら入ってきたシャロンに、脱衣所に居た男性竜騎士達は驚いた。その中には全裸の男性も居たが、元男性であるシャロンは興味は無い…ドラゴンの体には、興味があるが…。
「ってシャロン!? お前何で入って来ているんだよ!?」
先程悲鳴を上げたアベルが、シャロンを指差しながら叫んだ。その前には目を白黒させたエリスも居た。
「何って、お前が大声出すから、何かと思って来たんだよ」
「だからって、女のお前が堂々と男湯に入るか普通!?」
アベルはシャロンが元男性である事を知っているが、その事を知っている竜騎士は一部の竜騎士しか居ないと聞いている為、その事は言わなかった。
「別に良いだろ。エリス、何があったんだ?」
シャロンはエリスに尋ねてみた。
「それが…アベルさんが私が入ってきたら、突然騒ぎ出して…」
「そうそう! 何でエリスが男湯に入ってきているんだよ!?」
アベルがエリスを指差しながら叫んだ。
「? 別にエリスが男湯に入って、何が問題なんだ?」
「問題だろ! 此処は男湯だぞ!? 何で女のエリスが入ってくるんだ!?」
「エリスは男だ!」
「…はぁ?」
シャロンの言葉に、アベルは勢いを無くす。
「だからエリスは男! 男なら男湯に入っても問題無いだろ?」
「いや待て! どう見たってエリスは女だろ!? そうだよな、エリス?」
アベルは何故か必死の様子で、エリスに尋ねるが…。
「いえあの…私は姉上と違って、男なんです…」
「まあ俺だって、最初はエリスの事、女だと思ってたからな」
戸惑いながら答えるエリスに、シャロンが賛同する様に述べる。
「…マジかよ…俺はスカートのスリットから見える、男の足に見惚れたのか…」
その言葉と共に、アベルは脱衣所で倒れた。そしてどうやら気絶してしまったらしい。
「あ~あ…予想通り、絶望してぶっ倒れたか…ってかコイツ、エリスのスカートのスリットから見える足見てたのかよ…」
呆れる様に呟くシャロン。そして此れは俗に言う…
「チャンチャン♪」
というやつであった。
哀れアベル! 男の娘に見惚れた♪
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