18・赤き宝玉のルーン
PV9000越えおおきに、これからもよろしく
翌朝、シャロンとヨハンは大勢の村人に見送られながら、村の出入り口に居た。
「盗賊達は、俺の仲間である竜騎士が来たら、引き渡して下さい」
シャロンは村長に言った。すると村長は不思議そうな表情をしながら、シャロンに尋ねた。
「それは構いませんが…貴方は他の竜騎士様とは合流なさらないのですか?」
「俺とヨハンは別の任務があるんでね…後始末は後から来る仲間に任せますよ」
別の任務というのは勿論嘘であり、後始末は本来来る予定の竜騎士に全て任せるつもりでであった。
『良いのシャロン。そんな勝手な事して…』
ヨハンが念話で話しかけてきた。
『しょうがないだろ。話の辻褄を合わせるには、こう言うしかないんだから…それに別の目的があるのは、本当だから』
『えっ?』
シャロンの考えがイマイチ分からないヨハンだった。
「じゃあ俺達はこれで行くので…」
「そうですか…竜騎士様、ありがとうございました」
村長が頭を下がると、他の村人達も頭を下げた。シャロンはむず痒い様な感覚を受けながら、それを受け入れた。
そしてシャロンはヨハンの背中に飛び乗った。
「では、俺達はこれで! お元気で!」
シャロンが村人達に言うと、ヨハンは翼を羽ばたいて飛んで行った。
※ ※
「ねえシャロン。別の目的って何なの?」
村から離れた空の上で停滞したヨハンが、背中のシャロンに尋ねた。
「あの盗賊達のアジトさ! そこに行けば何かあるかも知れないじゃないか」
「何かって…財宝とか?」
「まあね…とりあえず、ヨンに方角を聞いてみるか。ヨン、盗賊のアジトはどっちの方角?」
『此処から西の方角にある、山の麓にある洞窟です』
ヨンから説明を聞いたヨハンは、方角を西に向けた。
「とりあえず、西の山の方へ飛んでみるよ」
そう言ってヨハンは、西の方角へと飛んで行った。
暫く飛んでいくと、麓に森が広がった山が見えてきた。
「森林地帯か…ヨン、アジトはこの近くか?」
『はい。この森に隠れるように存在しています』
そうヨンは返した。
「だってさ…見た感じヨハンは着陸出来そうにないな…仕方ない。ヨハン、俺一人で行ってみるから、上空で待機しておいてくれ」
「分かった。気を付けてね」
ヨハンの言葉を受けると、シャロンは『竜の力』を発動させ、翼を出現させて森へと降りていった。
※ ※
「さて森に着いた訳だけど…ものの見事にデジャヴだな…」
シャロンはこの世界に来た時と、似たようなシチュエーションである事に気づいた。
「んでヨン。アジトの方角は、あの山の方?」
木々の間から見える山を示して言った。
『はい。このまま真っすぐ山の方角に進めば、アジトが見えてきます』
「アジトには敵は残っているのか?」
『いいえ。マスターが村で倒し捕縛した盗賊で全員です』
「なんだよ、見張りも残さずに全員で突撃したのかよ…って事はアジトへの警戒は必要なしって事だな…コイツの出番は無さそうだな」
ソーコムピストルが入ったホルスターを叩きながら言った。
「とりあえず行ってみるか。ヨン、細かいナビお願いね」
『了解しました』
シャロンは森の中を進んでいった。
十数分後、山の麓迄来ると、其処には一つの洞窟があった。
「あれがアジトか」
『そうです』
「じゃあ入ってみますか…」
シャロンは洞窟に入ってみる事にした。
「臭いな~」
鼻を抑えながらシャロンが呟いた。洞窟の中には汗や様々な匂いが充満していた。
「あの盗賊共、風呂にも入ってなかったのか…ありえないくらい臭い」
文句を言いながら洞窟を進むシャロン。やがて洞窟の中に広い空間が現れた。其処には、様々な武器等の他に、何処からか奪ってきた物か、幾つかの金品があった。
「すごいな、お宝の山じゃないか…ヨン、この宝って役人みたいな人に渡すのか? それとも発見者=俺の物になるのか?」
『他に所持者の居ない場合、発見者の物になるます。この場合、本来の持ち主から奪った盗賊は、マスターにより壊滅させられている為、マスターの物になります』
「マジか! これ全部俺の物かよ」
シャロンは驚き、そして嬉しくもあった。
「これだけあれば、当分の資金は大丈夫だな。そうと決まれば、このアイテムボックスに…」
シャロンはペンダントのアイテムボックスを使い、次々と宝を収納していった。
※ ※
ガタガタ…
「んっ!?」
宝を収納し終え、ついでに武器も頂いておこうとした時、洞窟の隅で音がした。
「……」
シャロンは無言で白風を抜き、音のした方を向いた。すると洞窟の広間の隅に、檻が付いた箱がおいてあった。
ガタガタ!!!
音の発生源はその箱の様であった。シャロンは警戒しながらも箱に近づいた。
「何だ? 何か入っているのか?」
シャロンは箱を覗き込んでみた。すると…
「キュイキュイ!」
箱の中から、甲高い鳴き声が聞こえた。
「動物の声? リスでも入っているのか?」
シャロンは更に箱に近づいてみた。すると箱の上の部分が蓋になっており、其処には小さな鍵が取り付けられていた。
「中に何か居るみたいだな。出してやるか」
シャロンは狙いを澄まして、鍵を白風で薙ぎ払った。
キィン!
金属音を立てながら、鍵は箱から切除された。シャロンは鍵が無くなった蓋を開けてみた。すると…
「キュイ!」
中から水色の体をした兎と同じくらいの大きさを持つ、リスの様な生物が飛び出してきた。その生物はシャロンの足元で止まった。その生物の額には赤い宝玉があった。
「何これ? リス…にしてはデカいよな…でも異世界だし、この大きさはありえるか…? ヨン、この動物は何?」
ヨンに尋ねてみる事にした。
『これはカーバンクルという幻の幻獣です』
「カーバンクル!? 俺の世界のRPGとかラノベとかに出てくるアレか…」
『マスターの認識どおりです』
そうヨンは答えた。
「キュイキュイ!」
カーバンクルは、シャロンに甘えるように足にすり寄っていた。
「何だコイツ。俺に懐いているのか?」
『盗賊達が何処かで捕獲したのを、マスターが解放した為に、マスターに懐いた様です。どうしますかマスター』
ヨンは尋ねてきた。
「どうするって言われてもな…此処に置いていく訳にもいかないし…お前、俺と一緒に来るか?」
シャロンはカーバンクルに尋ねた。
「キュイ!」
勿論! とでも言っているかの様に、カーバンクルは頷いた。
「よし。じゃあ俺が名前を付けてやろう…ルーンはどうだ? ルーン文字っていうのから付けたんだけど、どうだ?」
「キュイイ!!!」
名前を与えると、カーバンクルは嬉しそうに鳴いた。
「じゃあお前の名前は、ルーンだ」
「キュイ!」
カーバンクル‐ルーン‐は嬉しそうに返事をすると、シャロンの体をよじ登って、シャロンの左肩で止まった。
「其処が良いのか? 宜しくなルーン」
「キュイ!」
宜しくと返事をしたルーンであった。
その後洞窟の武器を回収したシャロンは、ルーンを連れて洞窟を後にした。
新たな仲間、カーバンクルのルーンと出会いましたわ。