161・エリスの贈り物
また今日も遅くなりまわ…。
「どうだった? 酒場での情報」
ヨハンが隣を歩くシャロンに尋ねた。
「やっぱり冒険者が集まっているのは、一攫千金を求めたり、俺みたいに必要な鉱石を探しに来たみたいだ」
「そっか…手に入るといいね、目的の品」
「そうだな…エリスの方は、宿を見つけたのかな?」
宿を探して別行動をしている、エリスの事が気になった。その時…
『シャロン』
『うん? レオンか?』
エリスに付いて護衛兼連絡役をしている、レオンから念話があった。
『どうした? エリスに何かあったのか?』
『いや、泊まれる宿が見つかったんだ。今はシャロンを探して街中を歩いている』
『そうか! じゃあ確かこの街に広場があっただろう? 其処で合流しよう』
『分かった。エリスにも伝えておく』
そう言ってレオンは念話を切った。
「泊まる先が見つかった様だね」
念話を聞いていたヨハンが言った。
「ああ、とりあえず広場に行って、エリス達と合流しよう」
「そうだね」
シャロンとヨハンは広場へと向かった。
※ ※
一方その頃、シャロンからの指示を受けたエリスは、ラティスとレオンを連れて、広場へと向かっていた。その時…
「あっ…」
通りがかった店で、何かを見つけて止まるエリス。
「どうした?」
急に止まったエリスに話しかけるラティス。
「…ちょっと待ってて下さい」
そう言うとエリスは、その店の中に入っていった。
少しするとエリスは、小さな紙袋を手に出て来た。
「お待たせしました。では、行きましょうか」
広場へと向かうのを再開するエリス。エリスが何を買ったのかと気になりつつも、ラティスとレオンはエリスの後を追う。
やがてエリス達は、広場へと出た。其処で広場の中心に、白いドラゴンと蒼銀の髪の美少女を見つけた。エリス達は其処に駆け寄る。
「シャロン様。お待たせしました」
「いや、俺も今来たところだ」
まるでデートにでも行く様な会話をする二人。
「うん? 何だその紙袋は?」
シャロンはエリスが手に持っている、紙袋に気付いた。
「あっ、此れはですね…シャロン様に」
そう言ってエリスは、シャロンに紙袋を手渡した。
「俺に?」
受け取った紙袋を開けてみるシャロン。その中には青色のリボンが入っていた。
「エリス、此れって…」
「シャロン様の髪に合うかなって思って買ったんですけど…駄目ですか?」
エリスにそう尋ねられ、シャロンは答えに悩む。
シャロンは今は女の子だが、元は男である。その為に女性物の服や装飾品を好まない感じであった。リリアやレイナに無理矢理女装させられる事もあり、余計に拒絶する様になっていた。
しかし今エリスから渡されたリボンは、エリスがシャロンの髪に似合うと、純粋な思いで買ってくれた物であった。それだけにシャロンは悩んだ。そして…
「…ありがとうな、エリス」
「えっ…」
「俺の為に買ってくれたんだろ? 結構可愛いリボンじゃないか」
「シャロン様…」
「俺の代わりに結んでくれないか?」
そう言うとシャロンはエリスにリボンを渡し、エリスに背中を向けて、髪を結んでいる紐を解いた。
「はい!」
エリスは笑顔で返事をし、束ねられているシャロンの髪にリボンを結んだ。
「どうだ? 俺から見えないけど、似合っているか?」
「はい! とても良くお似合いです」
「そうか!」
エリスに褒められ、まんざらでもない笑顔を浮かべるシャロン。
「ヨハンもどうだ? 似合っているか?」
「うん。凄く似合っているよ」
ヨハンからも褒められて、更に照れてしまうシャロン。
「ありがとうなエリス…ところで見つかった宿は?」
「はい。これから案内します」
エリスはそう言い、シャロン達を宿へと案内し始めた。
蒼銀の髪に青いリボン…結構似合うやろな。
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