14・盗賊団との戦闘 2
転生したドララー の初の接近戦シーンですわ。
盗賊に警戒しながら、家の陰を進んでいるシャロン。家が途切れて道に出ようとした時だった。
ヒュ! ドッ!
「!?」
突然何処からか弓矢が飛んできて、家の壁へと突き刺さった。シャロンは咄嗟に家の陰に隠れた。
「……」
少しだけ顔を出して確認すると、道を挟んだ斜め向かいの家の屋根の上に、弓矢を持った盗賊が居るのが見えた。
「あそこか…」
シャロンは銃の装弾数を確認すると、残りは二発だけ残っていた。
「予備のマガジンはあるけど、マガジンにリロードしている余裕は無さそうだから、残りは十四発と考えるのが良いか…勝負は一瞬…」
シャロンは銃を構えると、思い切って道に飛び出した。すると屋根の上の盗賊が気づき、シャロンを弓矢で狙った。
ヒュ! ダァン!
矢の放つ音と銃声が同時に響いた。
「……」
「…ぐわぁ!?」
屋根の上の盗賊は足を撃ち抜かれ、そのまま倒れこんだ。
一方シャロンも頬に傷を負っていた。しかし…
「痛くないな…」
裂けた頬からは血が流れていたが、痛みは一切感じなかった。
『ヨハンと契約をした際、『痛覚無効』のスキルを会得していますから、マスターは痛みを感じる事がないのです』
と、ヨンが説明した。
『更に『自動回復』のスキルで、その程度の傷なら、直ぐに治ります』
「本当だ…もう傷口が塞がっている」
シャロンが頬を触ると、既に傷口は塞がっており完治していた。
「全く。どいつもこいつも役に立たねぇな」
と其処に、不躾な野太い声が聞こえた。声がした方をシャロンが振り向くと、其処には髭面の大柄な男が立っており、手には青龍刀の様な形をした大振りの剣を携えていた。
「お前がボスか?」
シャロンが訪ねた。
「おおそうだ! こんな娘っ子にやられるなんて、情けねぇ子分達だ」
「別にお前の子分が弱い訳じゃない…俺が強いだけだ」
そう言うとシャロンは、拳銃をホルスターにしまい込んだ。
「何だ? 俺様にはその変な道具は使わないのか?」
盗賊の頭が訪ねた。
「お前にとっては良い事を教えてやる。この道具はあと一回しか使えない。そしてその一回は別の事に使うんだよ」
「ガハハハ!!! ならあいつ等も少しは役に立ったか! 見えない攻撃をする道具を使えなくしたんだからな」
「…お前部下に好かれないタイプだな…」
そう言うとシャロンは、白風の柄に手を触れた。
「丁度いい、お前には此奴の実戦練習になってもらおう」
そう言いながら、白風を鞘から抜くシャロン。抜かれた白風の刃は、冷たい輝きを放っていた。
「見たことがない剣だな…まあ良い。お前を殺してその剣もさっきの道具も奪ってやる!」
「それは俺を倒してから言えよな、豚野郎。おっと豚に失礼か」
「ッッこのガキ!?」
安い挑発に乗り、頭は剣を構えてシャロンに襲いかかってきた。
「!?」
ザンッ!!!
「…へへっ…大した事ねぇな」
頭は今の斬撃でシャロンを仕留めたと思った。しかし…
「何処狙ってるんだよ!」
「へっ!?」
頭の左側からシャロンの声が聞こえた。シャロンは今の斬撃を軽々と避けたのだった。それどころか…
『コイツ…遅くねぇ?』
シャロンには頭の攻撃がとても遅く感じて、それで軽々と避けたのであった。
「なっ!? お、オメェ、何時の間に避けやがった!?」
「お前の攻撃が遅いからだろ?」
呆れた様にシャロンは言う。
「こぉの野郎!」
再び頭はシャロンに斬撃を繰り出すが、またしてもシャロンはそれを軽々と避ける。そしてシャロンは考えた。
『…コイツが遅いんじゃない…俺のステータスが高いから、簡単に避けられるんじゃないか?』
そう考えると、ヨンが答えた。
『その通りです。マスターとステータスとこの盗賊のステータスは、天と地の差程あります』
『成程…やっぱりそうか』
シャロンは確信した。
「何だお前…何で俺の攻撃をこうも易々と避けれる?」
頭が訪ねてきた。
「それは俺の戦闘力が、お前の戦闘力より上回っているからだ」
と、何でもないかの様にシャロンは答えたが、それは更に頭を激昂させる結果になった。
「ふざけるなぁぁぁ!!! お前みたいな小娘に俺様が劣っているだとぉ!?」
頭はがむしゃらに剣を振り回してきた。シャロンは冷静にそれを、白風で受け止めようとした。すると…
ガキィィィンンン!!!
金属音を立てながら刃が折れた。それは白風…ではなく、頭の剣であった。
「えっ? 嘘!?」
シャロンは驚いた。受け止められるかと思ったら、まさか相手の剣をおってしまうという事態になったからだ。
「なぁ…」
剣を折られてしまい、頭は驚きのあまり腰を抜かしてしまう。それもそのはず、自分の剣の方が圧倒的に刃が大きいのに、細い白風にあっさり折られてしまったからだ。
「…まあとりあえず…お前は寝とけや!」
白風を鞘にしまいながらそう言うとシャロンは、頭のドテッ腹に拳を捻じ込んだ。頭はシャロンの拳をもろに受けて倒れこんだ。
「か、頭が…」
「!」
背後から声がしたので振り向くと、其処には負傷した盗賊達が居た。
「頭がやられたんじゃ駄目だぁ! 皆逃げろ!」
一人が叫ぶと、盗賊達は踵を返して村の外へと逃げ出そうとした。シャロンはそんな盗賊達を見ながら、ホルスターから拳銃を取り出した。但し盗賊達には向けずに、空へと向けた。
ダァン!
「ヒィ!? 見えない攻撃だ!」
盗賊の一人が叫び、全員動きを止めるが、誰も攻撃を受けていない事に気づき、再び走りだした。しかし…
ドンッ!!!
「!?」
目の前に突然、巨大な白い影が現れた。それはヨハンであった。
「ド、ドラゴンだぁ! あの女、竜騎士だったのか!?」
盗賊の一人が、シャロンを見て言った。シャロンは白風を抜いて、盗賊達に近づいた。
「お前らに二つの選択を与える。一つはこのまま俺達に殺されるか、もう一つは大人しく降伏するかだ…降伏する場合は、両手を上げて跪け!」
シャロンが白風を向けながら言うと、盗賊達は我先にと両手を上げて跪いた。
「ナイスタイミングだったよ。ヨハン」
「当然だよ」
ヨハンは笑顔で言った。
実は村に入る前に、予めシャロンとヨハンはある作戦を立てていた。それは、『十二発銃声がなったら、村に来てほしい』とシャロンがヨハンに言っていたのだった。
こうしてシャロンとヨハンの、盗賊退治は幕を閉じたのであった。
もしかしたら、矛盾点あるかもしれまへん。