120・野営 3
その夜シャロンはヒナタのテントに向かっていた。夜の警護も行おうと思っていたのだが、ウェンリル達に反対されてしまい、やむを得ず休むことにした。
シャロンのテントは、てっきり一人用かと思っていたが、どうやらヒナタと一緒のテントらしい。
「どうせなら、ヨハンと一緒に寝たかったな…」
そう呟きながらも、シャロンはマントを脱いで、腰の白風とイングラムを抜いて、テントへと入った。
テントへ入ると、既にヒナタは眠っていた。シャロンは白風等を地面に置くと、ルーンを折りたたんだマントの上に置くと、ヒナタの隣に敷かれている毛布に潜り込んだ。すると…
ムニュ
「ふぎゃ!?」
胸を掴まれる感触を感じて、シャロンは飛び起きた。
「フフフ…相変わらず、ええ乳しとるな…」
妖しげな笑みを浮かべながら、テントの中に響くその声は…
「ヒナタ! 起きていたのか!?」
シャロンは驚いた。
「シャロンが入ってきた音で起きたんや」
ヒナタも上半身を起こす。
「脅かすなよ…」
「別に脅かしてらんやろ。たまたま起きただけや」
「ホントか? 狸寝入りだったとかはないよな?」
シャロンは横になりながら言った。
「ホンマや! シャロンの気配で起きたんや」
ヒナタも横になりながら言った。
「まあ良いけどさ…」
「それよりシャロン…何か話でもしようや」
「話? 明日は早いから、あんまり多くは出来ないぞ」
「ええから、ええから」
「ったく…それじゃ…」
それからシャロンとヒナタは様々な話をした。お互いのパートナー…ヨハンとレオンの事とか、第七チームの話、エリスとの交際の話等、殆どがシャロンが話す内容だった。
「それでジャンの奴、こっそり風呂場覗こうとしてな…」
「シャロン」
と、シャロンが話している時、突然ヒナタがシャロンの名を呼んで遮った。
「? 何だよ?」
「ボクな…シャロンが好きやねん」
「!?」
突然の告白にシャロンは驚いた。
「おい勘弁してくれ、エリスの時はアイツが男だったからセーフだったけど、お前は女だろ? 同性愛になるじゃんか!」
「そういう意味やなくて…シャロンの心が好きなんや」
「心?」
シャロンはヒナタの言っている意味が分からなかった。
「シャロンには杉村 祐二として生きてきた心があるやろ? ボクは其処に惚れたんや」
「…それって簡単に言えば、俺が杉村 祐二として生きていたら、異性として好きになっていたって事か?」
「まあ。そうやな」
「三十過ぎたオッサンが十六歳の女の子に好かれるなんて…漫画の中の話だと思ってた」
「まあ、シャロンは女の子に転生したから、結果的に仮定の話になるんやけどな…じゃあそろそろ寝るわ。お休み」
それだけ言うと、ヒナタは反対側を向いて眠ってしまった。
「…マイペースな奴…俺も寝るかな…」
シャロンはヒナタの方を向きながら眠りに就いた。
※ ※
「んっ……暑い…」
テントに朝日が差し込み、胸の辺りに暑さを感じながら起きると、ヒナタがシャロンの胸に顔をうずめて眠っていた。
「…何をやってるんだか、このセクハラ団長は…」
シャロンはまだ眠っているヒナタから離れると、まだ眠っているルーンが乗ったマントだけを残して、白風とイングラムを持って、テントの外へと出た。
テントの外に出ると、眩しい朝日がシャロンの顔に当たった。
「良い朝だ…」
腰に白風とイングラムを差して、シャロンは呟いた。
その後見張りをしていた騎士に挨拶をすると、朝食の準備を始めた。その匂いに釣られてか、ヒナタやウェンリル達、更にはヨハン達も起きてきて朝食の時間となった。
次回は中央竜騎士団に到着します。
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