1・死亡
今年最初の投稿ですわ(新作)。楽しんで見て下さいな
杉村 祐二。三十五歳の独身貴族のオタクである。祐二は会社帰りに購入したラノベを読みながら、道を歩いていた。
祐二はオタクというよりは、実際はドララーであった。子供の頃に見たアニメでドラゴンの魅力に憑りつかれて、それ以来ドラゴンの虜であった。
祐二は特に結婚する気などは無く、実家と両親の事は弟にでも任せるつもりだった。
「自分で言うのも何だけど、無責任な性格だな」
自虐的に呟く祐二であった。
※ ※
信号待ちをしながら、ラノベを読んでいる祐二。その隣には、幼い子供とその子供の両親らしき男女が居た。買い物か食事の帰りか不明だが、その姿は微笑ましい光景であった。尤も祐二本人は興味なさげであったが…。
やがて信号が変わり、祐二は横断歩道を歩き出した。その時一台の車が猛スピードで祐二が渡っている横断歩道に近付いて来ていた。しかも車は横断歩道に近付いているにも関わらず、全くスピードを落とそうとしていなかった。
祐二は車に気付き、咄嗟に渡って避けようとした。しかしその時先程隣に居た家族がまだ渡っているのに気付いた。しかも家族の方も話に夢中になっているのか、車の存在に気付いていなかった。
「危ない!!!!」
咄嗟に祐二は家族に体当たりをして逃がした。その時車は祐二の目の前に差し掛かっていた。
「あ…俺死んだ…」
それが口から出た言葉であった。
ドンッッッッッッ!!!!!!
強い衝撃と共に祐二の私物が宙を舞った。跳ねられた祐二は十m程先まで吹き飛ばされた。それから数秒後、祐二の全身に激しい痛みが襲った。
「キャアアアアア!!!!」
「早く! 救急車と警察だ!」
通行人の声が、瀕死の祐二の耳に届いた。そんな声を聴きながら祐二は思った。
「…あ~…これで両親養うの…弟に確定だな…悪いな…そういえば来週…読んでるラノベの最新刊の発売日じゃん……一度で…良い‥から…本物のドラゴンに会ってみたかったな…そしたら俺…惚れちゃうかも……」
其れが…杉村 祐二が地球で最後に呟いた言葉であった。
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