幸福
甘いお菓子を食べると幸せな気分になれるそうです。
食べる際は食事量とのバランスに気をつけながら、食べ過ぎないように嗜みましょう。
甘いお菓子を幸福に見立てて。そりゃ食べ過ぎたら太りますよね。
溺れるくらいの幸福に身を委ねたら、周りから見ると醜く見えるのではないかと。
幸福であっても、周りは見えるようにありたいです。作者は周り見えてないけど。
甘いお菓子は幸福の味がする。
甘くて、幸せで。口と体を満たす幸福。
幸福は過ぎれば体を蝕む。
毒になる。
甘さに甘えて、幸福に心を委ねて。
夢のような幸せに微睡み。
心が侵される。
甘さに肥えて。
幸福に肥えて。
かつての体と心はゆがんでいく。
それを悪いとは言わない。言えない。
私もきっとゆがんでいるから。
それを良いとは言わない。言えない。
私は現状で満足をしていないから。
私は幸福者だ。
家族に恵まれ、自由を許され、多少の学歴を身につけることが出来ている。満たされない人たちからすれば、喉から手が出て、這いずってでも欲しい現状だろう。
私は不孝者だ。
甘さを疎んじた。幸福を拒絶した。現状を嘆いた。
心はありもしない夢へと逃げている。
かつて私を育んでくれたものへ。私はあなたの想いに応えられてはいなかった。
私は周りのおかげで、不幸なく、大過なく過ごせた。
私は周りに幸せになって欲しかった。
泣いている子供を見て、笑ってほしいと思う。
不機嫌そうな男を見て、スッキリした顔になってほしいと思う。
気だるげな女性を見て、快活に微笑んでほしいと思う。
無気力なご老人を見て、おおらかであってほしいと思う。
世間に願う。目に映る優しさだけが溢れてほしい、と。
自分に想う。心を強く、誰かのささやかな助けになってほしい、と。
人見知りで、他人が怖くて、すぐになんでも忘れていく私だけれど。ありもしない世界を夢想する。想像もできていない世界を夢に見る。
誰かの不幸に手を差し伸べない他人のいない世界。
打算と偽善に満たされて。
ひとしずくの善性が、優しさとして現れる世間。
誰もが不幸にならないディストピア。
心が幸福に呑み込まれない限りユートピア。
甘さに甘えて、幸福に委ねて。不幸を遠ざけて。
幸福に呑まれた私の心は、きっと醜く肥え太っている。だから、願う。
夢にもできない現実を。
優しさに溢れ、幸福に満たされ。幸福に呑み込まれることのない世界を。
どうせ、いつかは死ぬ。
だから、優しい記憶を抱いて永い眠りについてほしい。
辛く厳しい現実から追い立てられるようにいなくなるのではなく。
もっともっと、と。
周りの笑顔を見たかった。
周りを笑顔にしたかった。
一緒に笑顔で居たかった。
そう思いながら、でももう十分幸福だった、と。
名残惜しくも、区切りよく。
どうせ、世界が優しさに溢れても、不幸はなくならない。だから、せめて幸福を願う。
醜い私は、弱い私は。生きる余裕があっても、願いを打算と偽善に昇華できない。
あなたは、どうだろう?
助けた誰かと縁を繋ぐ打算はあるか。
優しく見られたいという偽善はあるか。
ほんのわずかでも、善性はあるか。
今日、見ず知らずの子供が母親に泣いて駄々をこねているのを見ました。
おもちゃみたいな子供用の買い物カートに乗るのを、2人で取り合ってる感じです。
時間があったので、もしよかったら私が後ろから押しましょうか?と不審者ながら声をかけて。
許可をもらって、もう1人の子供を乗せて。泣き止んでくれてよかった。
子供が泣いているのは嫌だ。社会を動かすのは大人だけれど、社会の良し悪しを示すのは子供の表情なんじゃないかな。
ちょっと前に嫌なことがあったので、泣き止んでくれてよかった。良い気分になれる。偽善だとしても。
ここから先は、願うばかり。今日の経験が、願わくばあの2人。加えて2人の母親にとって。良い経験として、これからの心を豊かにする、ひとしずくの優しさとして受け入れられますように。
あの2人、帰ってから怒られないと良いけど。
そこも含めて願うばかり。