表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幸福

作者: アーティ

甘いお菓子を食べると幸せな気分になれるそうです。

食べる際は食事量とのバランスに気をつけながら、食べ過ぎないように嗜みましょう。


甘いお菓子を幸福に見立てて。そりゃ食べ過ぎたら太りますよね。

溺れるくらいの幸福に身を委ねたら、周りから見ると醜く見えるのではないかと。

幸福であっても、周りは見えるようにありたいです。作者は周り見えてないけど。

甘いお菓子は幸福の味がする。

甘くて、幸せで。口と体を満たす幸福。


幸福は過ぎれば体を蝕む。

毒になる。

甘さに甘えて、幸福に心を委ねて。

夢のような幸せに微睡み。

心が侵される。


甘さに肥えて。

幸福に肥えて。

かつての体と心はゆがんでいく。


それを悪いとは言わない。言えない。

私もきっとゆがんでいるから。


それを良いとは言わない。言えない。

私は現状で満足をしていないから。


私は幸福者だ。

家族に恵まれ、自由を許され、多少の学歴を身につけることが出来ている。満たされない人たちからすれば、喉から手が出て、這いずってでも欲しい現状だろう。


私は不孝者だ。

甘さを疎んじた。幸福を拒絶した。現状を嘆いた。

心はありもしない夢へと逃げている。

かつて私を育んでくれたものへ。私はあなたの想いに応えられてはいなかった。


私は周りのおかげで、不幸なく、大過なく過ごせた。

私は周りに幸せになって欲しかった。

泣いている子供を見て、笑ってほしいと思う。

不機嫌そうな男を見て、スッキリした顔になってほしいと思う。

気だるげな女性を見て、快活に微笑んでほしいと思う。

無気力なご老人を見て、おおらかであってほしいと思う。


世間に願う。目に映る優しさだけが溢れてほしい、と。

自分に想う。心を強く、誰かのささやかな助けになってほしい、と。


人見知りで、他人が怖くて、すぐになんでも忘れていく私だけれど。ありもしない世界を夢想する。想像もできていない世界を夢に見る。


誰かの不幸に手を差し伸べない他人のいない世界。

打算と偽善に満たされて。

ひとしずくの善性が、優しさとして現れる世間。


誰もが不幸にならないディストピア。

心が幸福に呑み込まれない限りユートピア。


甘さに甘えて、幸福に委ねて。不幸を遠ざけて。

幸福に呑まれた私の心は、きっと醜く肥え太っている。だから、願う。


夢にもできない現実を。

優しさに溢れ、幸福に満たされ。幸福に呑み込まれることのない世界を。




どうせ、いつかは死ぬ。

だから、優しい記憶を抱いて永い眠りについてほしい。

辛く厳しい現実から追い立てられるようにいなくなるのではなく。

もっともっと、と。

周りの笑顔を見たかった。

周りを笑顔にしたかった。

一緒に笑顔で居たかった。

そう思いながら、でももう十分幸福だった、と。

名残惜しくも、区切りよく。


どうせ、世界が優しさに溢れても、不幸はなくならない。だから、せめて幸福を願う。

醜い私は、弱い私は。生きる余裕があっても、願いを打算と偽善に昇華できない。


あなたは、どうだろう?

助けた誰かと縁を繋ぐ打算はあるか。

優しく見られたいという偽善はあるか。

ほんのわずかでも、善性はあるか。


今日、見ず知らずの子供が母親に泣いて駄々をこねているのを見ました。

おもちゃみたいな子供用の買い物カートに乗るのを、2人で取り合ってる感じです。

時間があったので、もしよかったら私が後ろから押しましょうか?と不審者ながら声をかけて。

許可をもらって、もう1人の子供を乗せて。泣き止んでくれてよかった。

子供が泣いているのは嫌だ。社会を動かすのは大人だけれど、社会の良し悪しを示すのは子供の表情なんじゃないかな。


ちょっと前に嫌なことがあったので、泣き止んでくれてよかった。良い気分になれる。偽善だとしても。

ここから先は、願うばかり。今日の経験が、願わくばあの2人。加えて2人の母親にとって。良い経験として、これからの心を豊かにする、ひとしずくの優しさとして受け入れられますように。


あの2人、帰ってから怒られないと良いけど。

そこも含めて願うばかり。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ