表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/103

石焼き芋屋


「兄貴、今、外でUFOを見ちゃった」

「ほんとかよ~~、飛行機じゃねえのか?」

「止まってたから、飛行機じゃないよ」

「じゃあ、ヘリじゃねえのか?」

「ヘリだったら、音がするよ。音はしなかった」

「じゃあ、飛行船とか?」

「夜中に飛行船は飛ばないでしょう。飛行機がぶつかると危ないから」

「そうだなあ」

「突然、消えたんだよ」

「消えた・・」

「そう、幽霊のように」

「じゃあ、幽霊じゃねえのか?」

「幽霊?そんなUFOみたいな幽霊、いるのかなあ?」

「目の錯覚じゃねえのか?」

「隆二さん、きょん姉さん、ロボットの福之助も見ていた」

「よし、俺も出て、見てみよう」

「もういないよ」

ショーケンは出て行った。アキラも出た。

「どっち方向だい?」

「真上」

「距離は?」

「けっこう遠かった」

「星じゃねえのか?」

「星よりも、だいぶ大きかった」

人がやって来た。

「お二人さ~~ん、何を見てるんですか~~?」

小島よう子だった。

「いやね、アキラがUFOを見たって言うんで」

「今ですか?」

アキラ

「ちょっと前、隆二さんと、きょん姉さんと、ロボットの福之助と」

「きょん姉さんもですか?」

「夜のドームハウスを見に来たって言ってた」

「ふ~~ん・・」

「よこ子ちゃんこそ、何してるの、こんな時間に、もう九時だよ」

「寝る前の、シャドーボクシング。これやると、よく眠れるんです」

「いつも、お元気ですねえ」

「おかげさまで」

「ドームパワーですね」

「ドームパワー?」

「ドームハウスには、不思議な力があるそうです」

「へ~~え、知りませんでした」

「隆二さんが言ってました」

ドームハウスの敷地内に、リアカーを引いた人がやって来た。


 石焼き芋~~ ♪ 石焼き芋~~ ♪


「アニキ、石焼き芋屋だ!」

「そうだなあ」

石焼き芋屋は、三人の前で止まった。

「石焼き芋は、いかがですか?もう最後だから、お安くしておきますよ」

アキラ

「おじさん、初めて見るけど?」

「昨日、始めたばっかりなんです」

「こんなに遅くまで?」

「はい、夕方から、今頃までです」

「大変だねえ~~」

「この歳になると、仕事先が無くってねえ」

「失礼ですが、おいくつなんですか?」

「六十五です」

「年金とかは?」

「微々たるものですよ。とても食べてはいけません」

「そうなんだ」

「一本百円でいいです。いかがですか?」

「安いねえ~~、それじゃあ、儲からないでしょう。じゃあ、二百円で買うよ。三本ちょうだい」

「ありがとうございます!」

「いつも、この辺りで売ってるんですか?」

「主に、夕方から一般住宅を回ってます」

「観光客の多い大通りで売ったほうがいいんじゃないの?」

「どうも、外国人は苦手で、それに、昼間は、有名な踊る石焼き芋屋がいるもので」

「それはねえ、僕たち」

「ええ、そうなんですか!」

「はい。この三人でやってるの」

「それはいいですねえ~~」

「僕たちは、だいたい四時には終わるから、おじさん、その後、頑張ってよ」

「はい、頑張ります。でも、最近、腰が痛くって、長くは引っ張れないんですよ」

「それは大変だねえ~~」

ショーケンが、言い放った。

「同じ同業者のよしみ、おじさんにいい物あげるよ!」

「何ですか?」

「電動で動く、リアカー!」

「えっ?」

「アキラ、案内してやれ。俺も行く」

「あいよ」

二人は、小屋に置いてあった、リアカーの石焼き芋機を外して、おじさんに渡した。

「これ、使ってください」

「これを、わたしに?」

「はい、使ってください」

「おいくらなんでしょうか?」

「無料です。還暦の祝いにプレゼントします」

「還暦は過ぎましたけど?」

「細かいことはいいんですよ」

「ほんとうにいいんですか?」

「はい!じゃあ、今、その石焼き芋機を、こっちに移しますね」

「あなたたちのリアカーは?」

「また買うからいいんですよ。買うまで困るので、おじさんのリアカーください」

二人は、電動リアカーに、おじさんの石焼き芋機を載せた。

「おじさん、ちょっと引いてみて」

「おお~~、軽いねえ。何も無いみたいだよ!」

「そうでしょう」

「これなら頑張れます!」

「頑張ってください!」

「ご主人の御名前は?」

「萩原健一です。こっちがアキラ。こちらが小島よう子さん」

「この御恩は、一生忘れません!」

「おじさんの名前は?」

「三丁目の沼田秀夫です」

よう子が質問した。

「ひょっとして、合気道の沼田秀夫先生ですか?」

「はい、そうです」

「わあ、また偉大な武道家に会えたわ!なんてことでしょう」

「また、とは?」

「先日、紅流酔拳の高田今日子さんに、お会いしたんです」

「高野山で?」

「はい。現在、天軸山キャンプ場のログハウスにいます」

「わたしも、ぜひ会ってみたい」

「今、ここにいたので、行けば会えると思いますよ」

「そうですか。じゃあ、行ってみます」

男は「いろいろと、ありがとうございました。じゃあ、また!」と言って去って行った。

アキラ

「兄貴も、人がいいなあ~~」

「また買えばいいんだよ」

アキラは、焼き芋を配った。星々が、宝石のように、キラキラと暗い夜空に輝いていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ