回り道でも 道は道
英子が、また、公園で泣いていた。
「ひでちゃん、どうしたの?」
「ときどき、手が震えますって言ったら、そういう人は要らないって、断られたの」
「そうだったの」
「あいつら呪い殺してやりたいわ」
「そんなこと考えちゃあ駄目よ」
「そうだ、幻魔教団に行ってみよう」
「ひでちゃん、そんなところに行っちゃあ駄目よ」
よう子の背後で足音が止まった。
「やあ、君たち、こんなところで、何を話しているの?」
超能力者の犬丸勝だった。彼は英子の目を見ていた。
「ひでちゃん、心が泣いてるけど、どうしたの?」
「面接に行って、ひどいことを言われたらしいの。手が震えるような、そんな人は要らないって」
「身障者って、前もって言ったの?」
「言った」
「薬を飲んでたら大丈夫なんでしょう?」
「そうです。震えません」
「そう言ったの?」
「言った」
「それは、ひどい会社だなあ」
「ひでちゃん、幻魔教団に行くって言ってるの」
英子は泣き出した。
「だって、くやしいんだも~~ん!」
よう子「人を恨んだら、自分に返ってくるわ」
「じゃあ、死ねばいいのね、こんな私なんて」
犬丸勝が静かに語り始めた。
「ひでちゃん、そんなことを言ったら、君を命がけで産んで育てた親が悲しむよ」
英子は黙って聞いていた。
「ひでちゃん、心臓に手の平を当ててごらん」
英子は、彼の言葉に素直に従った。犬丸勝の言葉には、人の心を素直にさせる響きがあった。
「心臓の鼓動がするだろう」
「ええ」
「君の心臓は、君のために、今、一生懸命に動いているんだよ」
「はい」
「力強く動いているだろう」
「ええ」
「だったら、君も生きるために頑張らないと」
英子は、犬丸勝の目を見ていた。
「きっと分かってくれるる人もいるさ。回り道でも、道は道」
英子は立ち上がった。
「犬丸さん、ありがとう!」
英子は、彼に抱きつき、泣き出した。
「英子、頑張る!」
英子は泣き止むと、自分のドームハウスに帰って行った。
よう子は、感心して犬丸勝を見ていた。
「さすが、犬丸さんだわ~~!」
「そう?」
「さすが、心の超能力者だわ」
「元気になってくれて、良かった、良かった」
野菊の花が、初秋の心地よい風に揺れていた。
「犬丸さんって、風みたいな人だわ」
「そげんね?」
「木枯し紋次郎みたいな」
「あっしには関わり合いの無いことで、っか」
「そう、でも、人がいいから、結局は人を助けるの」
「じゃあ、紋次郎みたいに、黙って帰るかな」
言葉通り、彼は黙って去って行った。
「男らしくて、かっこいいわ~~!さすが、九州男児だわ~~」
よう子は、あしたのジョーや木枯し紋次郎のような、風のような男が好きだった。
・・
アキラ
「兄貴の、回り道でも道は道、テレビでやってるよ」
「回り道でも道は道?」
「違ったっけ?」
「それは、ぐでんぐでん。だよ」
「ああ、そうか。この歌、兄貴っぽくて、いいね」
「そうかなあ?ただの酔っ払いの歌だよ」
・・
「SNSみても、いじけた書き込みばっかり・・」
「そうか」
「最近、幻魔教団みたいな、いじけた男が多くなったねえ」
ショーケン
「SNSのせいだな」
「えっ、なんで?」
「情報が多すぎて、自分を見失ってしまうんだよ」
「なるほどね」
「整理できないんだよ、頭の悪いやつは」
「なるほどね」
「ただ、他人と比較して、いじけてしまうんだよ」
「なるほどね」
「特に、若いやつほど、見栄を張りたがるしな」
「そうだねえ」
「あんまりやらないほうがいいぞ」
「でも、いじけた年寄りも多いよ」
「そういうのは、ボケてんだよ。頭が回らなくなってるの」
「なるほどねえ」
「アル中も多いしな」
「な~るほどねえ」
「アルコールの飲み過ぎは、ボケるんだよ」
「止めればいいのにね」
「止められないから、アル中なんだよ」
「これからは、ネット将棋だけにしよう!っと」
「あれだって、相手が人間だか分からないよ」
「えっ?」
「ただ勝ちたいために、ソフトにやらせてるやつだっているんだから」
「そんなやつがいるんだ」
「掲示板に書いてあったよ、ソフトで三段まで行ったって」
「そういうのがいるんだ」




