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海と風の王国  作者: 梨香
第十五章 次代の王
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7  リリィのケイロン訪問

「ほら、ゾルダス港が見えて来たよ! 彼方に小さく見えるのが造船所だ」


 ショウは、リリィにゾルダス港の北側にある造船所を教えてやる。


「まぁ! 是非、造船所を見学しなくては」


 妊婦がいる後宮を留守にして外国へ行くのを渋っていたリリィだが、ミミの様子を見がてら寄ったユングフラウでは、ユーリ王妃と意気投合して女性の職業訓練所を見学したり、改善策を話し合ったりと有意義に過ごした。


「後で見学させてあげるよ。私も暫く視察していないから、一緒に行こう」


 ゾルダス港とケイロンは離れているので、機動性が高いピップスも側近として連れて来ていた。シリンのピピンと、サンズのフルールは、メリルが子守りしてくれている。


「さぁ、ケイロンの大使館へ向かおう!」


 サンズにリリィを乗せる。ワンダー艦長とシーガルもピップスのシリンで大使館へ向かう。




「ショウ王太子、リリィ様、ようこそお越し下さいました」


 出迎えてくれたリリック大使に、シーガルを紹介する。


「彼は、私の付添人をしてくれるシーガルだ。ミーシャとの結婚式の手伝いをさせてくれ」


 フラナガン元宰相の孫であるシーガルをわざわざ花婿の付添人として連れて来たのでは無いだろうと察したリリック大使は、外交官として鍛えようと頷く。


 リリィが王宮へ挨拶に向かう為に着替えている間に、ショウはピップスやワンダー艦長やシーガルと共に、ローラン王国での結婚式の段取りの説明を受ける。


「ミーシャ姫は、正式には王女とは認められていませんから、さほど公式な行事はありません。しかし、東南諸島とは違い、こちらでは結婚式は大層派手に行われます」


 ショウは何度か旧帝国三国の王家の結婚式に参列していたので、公式な行事があまりないと聞いてホッとする。


「ショウ王太子、公式な行事はないと言ってもルドルフ国王は、ミーシャ姫を自分の娘として東南諸島に嫁に出したいと考えておられます。アレクセイ皇太子やアリエナ妃、ナルシス王子と婚約者のタチアナ嬢などの身内を招待して、晩餐会を開かれます。こちらも大使館に招待しなければいけません」


 なかなか大変そうだと、ショウは溜め息をつく。しかし、この件はローラン王国の駐在大使であるリリックに任せることにする。


「あっ、マウリッツ大使と面会をしたいのですが、できたら非公式に会えますかね? ピップスとシーガルを紹介したいし、気楽な雰囲気で、三国同盟の可能性を探りたいのです。リリック大使は、締結できると考えていますか?」


 リリック大使は、フランツ卿の行動をもちろんチェックしていた。


「ゲオルク前王の遺臣はかなり引退しましたが、まだ旧帝国復興主義者が多いですからね。フランツ卿は頑張って、三国同盟の地盤固めをしていますが、時間がかかるでしょう。しかし、アレクセイ皇太子やナルシス王子も少しずつ国内の若い貴族達と馴染んできました。アリエナ妃の側近や、ニコライ王子の学友の親達、ナルシス王子の婚約者タチアナ嬢のお友だちとかは、三国同盟に賛成していますね」


 若い世代はイルバニア王国との戦争を実体験していないから、三国同盟にも抵抗が少ないのだろうと頷く。ただ、年配の重臣達は自身が敗戦を経験しているので、感情的なしこりが残っている。


「シーガル、ピップス、フランツ卿はユーリ王妃の従兄になるし、あのマウリッツ外務大臣の弟だ。穏やかで優しい方だけど、優秀な外交官だから会って損はないよ。それに、サンズの親のルースの絆の竜騎士なんだ」


 リリック大使は、そう言えば若い頃にレイテの大使館に派遣されていたと頷く。


「お待たせしました。帝国風のドレスは着なれていないので、可笑しく無いでしょうか?」


 寒いローラン王国なので、膚の露出は少ないデザインをユングフラウで購入したのだが、東南諸島の服よりは身体のラインが露になるのをリリィは気にしている。黒貂の毛皮をショウは着せてやる。


「とても似合っているよ! さぁ、王宮へ行こう」


 リリィをエスコートして、王宮へ挨拶に向かう。ピップスやワンダーは前にローラン王国は滞在していたので、寒さを覚悟していたが、シーガルは厚い外套を着ても寒いのに驚く。


「まだ秋なのに寒いですね。ニューパロマも寒かったけど、ケイロンがこんなに寒いとは知りませんでした。港も凍りつく筈ですね」


 知識としては、ローラン王国が不凍港を求めて南下政策をとった歴史を学んでいたが、実際の寒さを体験して身にしみたとシーガルは震えながら言う。


「ほら、リリィ。実際に現地に来ないとわからない事もあるだろう」


 産まれたばかりの王子と、妊娠中の妃達を置いて出かけるのを渋ったリリィに、ショウは得意気に言う。リリィは思い切って外国に出掛けて良かったと頷く。これから王子や王女の教育が本格的に始まれば、当分は後宮を留守になどできないからだ。今は未だ母親の手元で養育されているので、ミーシャ姫に後宮での暮らしを説明しがてら訪問できたのは幸運だった。


「ミーシャ姫は大人しいお方だと聞きました。少し、後宮での暮らしは辛いかもしれません。私も、早くお会いしたいと考えていたのです」


 一夫一妻制の国から嫁ぐミーシャ姫には、色々と心配事もあるだろうと、結婚前によく話し合っておきたかったのだ。ショウは、ローラン王国の人々の説明をしながら、王宮へ向かう。


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