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海と風の王国  作者: 梨香
第十三章 迫る影

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9  どちらも子竜が欲しいだなんて!

 首を絡めてるルカとボリスが発情期になっているのは明らかだし、エスメラルダとキャサリン王女も既婚者なので問題は無いのだが、どちらの騎竜も子竜を欲しがっているので困ってしまう。


『まぁ、ボリス! 私に黙って出かけるだなんて!』


 キャサリン王女は夫の騎竜パパスで、東南諸島の大使館に舞い降りた。


『まさか!』見知らぬ竜と首を絡めてるのを見て驚き棒立ちになる。


「キャサリン様、何故かエスメラルダの騎竜ルカと貴女の騎竜ボリスがこんな事になってしまって、私達も困惑しているのです」


 キャサリンは自分の騎竜のボリスが、夫の騎竜パパスと交尾飛行した時に自分が妊娠しなくて落ち込んだのを心配して、こんな非常識な行動をしたのだと理解した。


『もう、ボリスったら……』自分がしっかりしてないからだと、涙ぐんだ目をハンカチで拭い、迷惑をかけたショウ王太子やエスメラルダ妃に謝る。


『申し訳ありません! さぁ、ボリス、帰りましょう』


 絆の竜騎士の命令で、ボリスは渋々ルカに絡めていた首をほどく。


 これで事態は収拾できると、ショウはホッとしたが、ルカは子竜を持てると舞い上がっていたので、ボリスが嫌々ながらも絆の竜騎士の言いつけに従おうとしているのに反抗する。


『ボリス! 子竜が欲しいんだ!』


 ルカの心の底からの叫び声に、ボリスも叫び返す。


『私も子竜が欲しい!』


 一旦発情期になった竜を引き裂く事はできないと、首を絡めてる二頭を一同は困惑して眺める。


「エリカとミミは大使館に行きなさい。テレーズ王女も王宮へお帰り下さい」


 ショウはこれからの竜の交尾飛行の話し合いには、未婚の女の子達を立ち会わせたくないと、三人を追い払う。





「困りましたねぇ、二頭とも子竜を欲しがっているのですが……」


 キャサリンも自分の騎竜ボリスに子竜を与えてやりたいと考えているし、エスメラルダも騎竜のルカから子竜が欲しいとの圧力を受けていた。


 ショウとしては、東南諸島とイズマル島の竜に新しい血を取り込みたいと兼ねてから考えていたので、できたらルカに卵を産ませたいと、上手い話の持って行き方が無いものかと悩む。


 しかし、キャサリン王女に先手を打たれてしまった。


「エスメラルダ様、私は前の交尾飛行で懐妊できませんでしたの。今回はボリスに卵を産ませて下さいませんか?」


 キャサリンの切羽詰まった発言に、エスメラルダは少し引きかけたが、ルカはこれ以上は待ちたく無いと叫ぶ。


『交尾飛行で絆の竜騎士が赤ちゃんを得るとは限らないよ! 

 キャサリンが赤ちゃんが欲しいのなら、エスメラルダにキャベツ畑を作って貰った方が確実だよ!』


 ショウはキャベツ畑の呪いの元祖のイルバニア王国にはバレているかもしれないが、そう公にエスメラルダの緑の魔力の強さを宣言しなくてもと、ルカの失言にギョとした。


『ルカ!』エスメラルダが失言を咎め、ショウに謝るのを手で制した。


「エスメ、君が謝る必要は無いよ。私のミスなのだから」


 モリー、ペリー、サンズと交尾飛行を先取りされて後回しにしていたのに、ルカに対して配慮が足りなかったと反省する。


 それに、エリカとテレーズ王女の行動が怪しいと思っていたのに、サンズとエスメラルダに気を取られてほったらかしていたのだ。


「あのう、エスメラルダ様は緑の魔力をお持ちなのですか?」


 期待に満ちたキャサリン王女には悪いが、メッシーナ村にもキャベツ畑を待っている人々がいるのだ。


「いやぁ」とごまかそうとしたショウだったが、キャサリン王女は自国を優先するのだと察して、畳み込むように話し出す。


「ショウ王太子のお考えは理解できますわ! 自国民を優先するのは当然ですもの。

 でも、私は母上の娘なのですよ! キャベツ畑の呪いには詳しいのです。

 この呪いは国が違えば、二年開けなくても良いのです」


 本当かなぁ? と疑問を顔に出したショウ王太子に、カザリア王国でキャベツ畑を作ってヘンリエッタ王女が産まれた年に、イルバニア王国でもキャベツ畑の呪いでテレーズ王女とアルフォンス王子が産まれたのだと、此方も極秘の情報を提供する。

 

「まぁ、国が違えば二年も開けなくても良いのですか?」


 エスメラルダは赤ちゃんが欲しいと、噂を聞き付けてレイテからわざわざメッシーナ村にまで来る夫婦に困っていたので、同じ東南諸島連合王国でも、あれだけ距離が離れていたら大丈夫かもと考える。


「交尾飛行はキャベツ畑ほど確実ではないみたいなの。

 リリアナ妃は上手くマキシウス王子を授かったし、アリエナ姉上やロザリモンド姉上も一人は授かったけど、二人目は駄目だったのよ」


 絆の竜騎士同士のカップルなので、卵を産む騎竜を代えて試したのだろうと、ショウは想像して頬を赤くする。


 未だ若いショウには刺激が強い話で、切羽詰まったキャサリン王女に、ぐぃぐぃと押し込まれそうになる。

 

『キャサリンが赤ちゃんを産めるのなら、今回はルカに協力しても良い。

 私の子竜はパパスが子育てを終えてから、協力して貰うから』


 ボリスも子竜が欲しいのだが、エスメラルダに協力してもらう為に我慢すると言い出した。


『ボリス! ありがとう!』


 騎竜の幸福感に満たされているエスメラルダと、すがる目をしたキャサリン王女に、ショウは負けた。


「先ずは交尾飛行で試してみましょう。

 それで駄目だった場合は、エスメラルダにキャベツ畑を作って貰います」


 父上に知られたら、ぼんやり! と叱られるかなぁとショウは、各々の騎竜に抱きついている二人の美女を見て、仕方ないなと溜め息をついた。




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