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海と風の王国  作者: 梨香
第十三章 迫る影

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3  巫女姫の結婚式

 エスメラルダとの結婚式にイズマル島を訪れたショウだが、竜の交尾飛行や、メッシーナ村の竜騎士の素質を持つ若者の教育問題などの話し合いに時間を取られてしまった。


 しかし、婚約期間も遠距離恋愛だったので、手紙のやりとりしか出来なかったショウは、結婚式前に二人で色々と話し合っておきたいと思い、準備を手伝っているエスメラルダの手を取ってサンズと空に逃げ出した。


「帰ったら母に叱られるわ」


 そう言いながらも、婚約者との空のデートを楽しむエスメラルダを、ショウは愛しく感じる。


「ねぇ、結婚式を終えたら、二人で新婚旅行にいかないかい? 夏至祭までには送り届けるから」


 ショウも父上がレイテを留守にする気持ちがわかるようになっていた。一度、帰ったら、そうそう自由にはできないのだ。


「ええっ! 良いのかしら?」


 エスメラルダは前から東南諸島や北の大陸やゴルチェ大陸などが見たかったのだ。


「今は父上がレイテにおられるから、私が帰国するのが少し遅れても大丈夫だよ。サンズが卵を産む時までに、何処かの大使館に着いていれば良いんだから」


 エスメラルダに東南諸島も見せてあげたいが、レイテには妻達が待っているので、新婚旅行には不向きな場所だ。何処に連れて行ってくれるのと、目を耀かしているエスメラルダに、ショウは『ええい! なるようになる!』と腹を括った。


「サンズのこともあるから、メーリングへ行ってから考えよう!」


 イルバニア王国のユングフラウにはミミがいるし、カザリア王国にはメリッサ、ローラン王国にはミーシャがいる。ショウは何処を新婚旅行先にするべきか悩んだが、イズマル島から一番近いメーリングを拠点に考えようと決めた。


「もしかしたら、ウォンビン島でサンズが卵を産むかも知れないけど、その時はそこで新婚旅行をしよう」


 エスメラルダは昔の同胞が住んでいる南の島でも良いと微笑む。




 ショウはエスメラルダをメッシーナ村に送り届けると、モリソンでラジックと話し合いをした。


「少し風紀を取り締まって頂きたいのですが……」


 のっけから、娼館が増えた事への苦情を言われて、ラジックは汗をかいた。


「王の花嫁はちゃんと堅気の農家に嫁がせているぞ! モリソンは港町だから娼館は仕方ないのだ。言っておくが、私は娼館の経営などに手を染めてはいないからな」


 慌てて弁解をしだすラジックに、ショウは疑っているのでは無く、取り締まって頂きたいだけだとピシッと言い渡す。


「取り締まると言われても、イズマル島は男で溢れているからなぁ……そんなに睨むなよ! まるで父上に叱られている気分になるじゃないか」


 父上は娼館について苦言はされなかったのかと、ショウは溜め息をつく。


「衛生面や、娼婦達の健康、そして年期明けを不当に延ばして無いか、ちゃんと管理して下さいね」


 ラジックなら非道な事はしないだろうと、この件は任せることにする。


「なぁ、ナッシュ兄上は何時になったらイズマル島に来られるのだ?」


 ラジックはハッサンの子分みたいに引っ付いていたが、本当はナッシュと仲が良かったのを思い出す。


「そろそろ、サンズ島の留守番からイズマル島に来て貰おうかと考えているのですが……この件はパトリックが着いてから、一緒に説明します」


 察しの良いラジックは、何か重大な問題が起こっているのだと気づいて、長旅の疲れをお風呂でも入って癒すように忠告する。


「あっ! しまった! エスメと会った時に……まぁ、良いかあ」


 失敗したなぁと頭を掻きながら、お風呂に浸かるショウだった。


 久しぶりの帰郷の挨拶を済ませたパトリックがラジックの屋敷に到着したので、ショウはウォンビン島とジェープレス基地の防衛を要請した。


「それは引き受けました。ウォンビン島の長老は魔力に優れておられますから、海賊船を撃退してくれるでしょう」


 ショウは帆を焼いて留めないようにと忠告しておく。ウォンビン島に海賊がいつかれたら困るからだ。






 夜更けまで、ラジックやパトリックとの宴会に付き合ったショウは、召使いに起こされて目覚めた。


「今日は結婚式でしょう、早くお風呂に入って下さい」


 召使いにお風呂を急がされたが、結婚式は夕方の筈だと首を捻る。


「おいおい、まだ着替えて無いのか?」


 礼服に着替えたラジックに、何事ですか? とお風呂に浸かったまま呑気に質問をすると、雷が落ちた。


「お前! 今回の結婚式はメッシーナ村風にするのを忘れたのか? 結婚式は昼にして、私はお前の付き添い人だ!」


 しまった! いつもは夕方に花嫁が輿で後宮に来て、海の女神と風の神に捧げ物をするだけだったが、今回は結婚式の後は村をあげての披露宴があるのだと、ショウは慌てて風呂から出る。





「どうにか間に合ったみたいですね」


 礼服を着付けるのに召使いが手間取ったので、ショウはヒヤヒヤしたのだ。


「王太子の礼服は私のとは違うからな……そんなことより新婚旅行へ行くと言うのは本気か?」


 ラジックは何処に連れて行っても、妻や婚約者が待ち受けているのに勇気があるなぁと、昨夜のショウの計画を聞いて呆れる。


「色々と考えていたら、何も出来ないですから。エスメにも広い世界を見せてあげたいのです」


 ラジックは東南諸島らしい男なので、妻や子どもには安全なレイテに居て欲しいと考えていたから、ショウは相変わらず変わってると肩を竦める。


「それより、兄上は……」


 ショウがチェンナイで娶ったローラン王国の難民の娘ペリーヌと、ウバマド族長の娘はどうしているのかと聞いているうちに、サンズはメッシーナ村に着陸した。





 メッシーナ村は祭りみたいに、家々に花綱が飾られていた。ショウはラジックの幸せそうな妻の話は頭からスッポリと抜けてしまった。


 村の集会所にも、花綱が見事に飾られていて、村中の人々が晴れ着を着て集まっていた。


「結婚式を公にするのは初めてなので、少し緊張しますね」


 祭壇の前に立って、花嫁を待つ時間が長く感じる。こういう時の為に花婿の付き添い人がいるのだなぁと、今まで参列したチャールズ皇太子、フィリップ皇太子、キャサリン王女の結婚式を思い出すショウだった。


「おい、ぼんやりするな! 花嫁の登場だぞ!」小声で注意された時から、ショウは綺麗なウェディングドレスを着た花嫁しか目に入らなかった。


 白いウェディングドレスに、レースのベールを被ったエスメラルダは、どことなく野性味と神秘性があり、ショウは緊張して父親のヘインズから手を受け取った。


「エスメラルダ、綺麗だよ」


 レースのベールを上げながら、ショウは思わず気持ちを口に出す。列席していた人々は、若い綺麗な顔立ちの王太子が、自分の村の巫女姫にめろめろだと笑った。


「これ、結婚の誓いのキスは後ですよ!」


 巫女姫が花嫁なので、前の巫女姫だったエスメラルダの母親が結婚の誓いをシェハラザードの前で宣言させるのだが、熱くみつめあう二人を引き離して式を執り行う。




 どうにか、夢うつつに巫女が告げる誓いの言葉を繰返し、熱烈なキスもすませて、結婚式は滞りなく終わったが、その後の披露宴は延々と続いた。


「ねぇ、エスメ……何時になったら二人っきりになれるのかなぁ」


 酔いつぶれないように、気をつけて飲んでいたが、花婿のグラスには村の人々が酒を継ぎにくる。


「もう少ししたら、私のブライズメイト達が踊りを披露するわ。とても、素敵な踊りだから人々の注意が逸れるはずよ」


 エスメラルダも長い披露宴にじりじりしていたが、前からの段取りで、若い女の子達が花輪を持って踊りだした瞬間を待って、披露宴会場から逃げ出した。


「朝まで披露宴が続くかと思ったよ」


 サンズにウェディングドレス姿のエスメラルダを乗せながら、軽いキスをする。


「私も……」熱いエスメラルダの視線に刺激されたショウは、サンズを甘い夜を過ごす屋敷に飛ばした。



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