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海と風の王国  作者: 梨香
第八章 ショウ王太子
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13  成人式の準備

 ショウは、綺麗に片付いた部屋を眺めて感傷に耽る。


「5歳から10年過ごしたんだよなぁ。船を手に入れようと、備品を売り飛ばしたこともあった。あっ、でもパロマ大学に留学したり、ゴルチェ大陸の西海岸を測量したり、留守もしていたから実質は、何年になるのかな?」


「ショウ王子、此処にいらしたのですか? 各国から次々と招待客がレイテにお着きですのに……」


 子供時代を懐かしむ余裕も無く、フラナガン宰相に腕をつかまれて、引きずられるように王宮へ向かう。



 ショウは15歳になり、成人式をあげる。


 王太子として責任のある立場になるし、大人として結婚も認められる。王太子になれば、フラナガン宰相よりも決定権は上になるのだが、引きずられているショウは一生頭があがりそうにない。


「父上は何処なのです?」


 ショウの質問に、フラナガン宰相は笑顔になった。


「逃げたのですね!」


「成人式には、帰って来られますよ」


 フラナガン宰相は自分に言い聞かせるように、キッパリと強めの口調で言い切った。


「そりゃ、成人式に欠席はしないでしょうが、これだけ外国から王族を招待して無責任ですよ」


 満面の笑顔のフラナガン宰相が心底怒っているのに気づいて、ショウはこれ以上父上の悪口を言うのを止めた。


「そうだ、許嫁達にも接待を手伝って貰いましょう。妃を伴っておられる人も多いですからね」


 フラナガン宰相は接待よりも、外交交渉に集中したいので、ショウの提案に喜んだ。


「そうして頂けると、助かります。メリッサ姫はロザリモンド妃と親しいし、ララ姫はリリアナ妃と親しいですな。後は、アレクセイ皇太子はミーシャ嬢をお連れですが、ロジーナ姫は……」


 ロジーナはアリエナとは親しいが、ショウ目当てのミーシャとは如何なものかと、フラナガン宰相は口ごもる。


「ミーシャ嬢とロジーナは少し危険ですね。それにゼリア王女はどうしましょう?」


 本来ならゼリア王女はショウが接待するべきだが、忙しくて手が回りそうにない。各国の招待客に挨拶するだけでも大変なのだ。


「ロジーナには僕が説得してミーシャ嬢を接待して貰います。ゼリア王女は幼い感じですので、妹のパメラとミヤの監督の元で遊んで貰いましょう。ミミとレティシアには、他の王族の妃の接待を任せます」


 重要な帝国三国とスーラ王国には専任の接待係を付け、他の国は頭の回転の早いレティシアとミミに臨機応変に接待して貰うことにした。


「兄上達にも、王族の方々の接待を頼んでいます。年齢の順に兄上を振り分けようかと思いましたが、性格もありますからね」


 フラナガン宰相は、カリンとハッサンに接待係は無理だろうと苦笑する。


「アレクセイ皇太子はサリーム兄上に、フィリップ皇太子はナッシュ兄上に、スチュワート皇太子はラジック兄上に任せるつもりです。サリーム兄上には、造船所の投資の説明会にアレクセイ皇太子に付き添って貰う予定です」


 サリームはレイテの埋め立て埠頭の経験があるから大丈夫だろうと、フラナガン宰相は頷く。


「カリン兄上には警備を取り仕切って頂きますし、ハッサン兄上には各国と貿易の拡大を計って貰います」


 フラナガン宰相は成人式後はゆっくりしたいと、ショウが兄上達を総動員しているのに苦笑した。


 フラナガン宰相は、ショウがララと逃げ出す計画だと見抜く。新婚旅行ぐらい許してあげようと、フラナガン宰相は微笑む。成人式後は、アスラン王に頑張ってもらうつもりだ。


 その分、成人式前は頑張って貰おうと、フラナガン宰相はビシバシとショウのスケジュールを組んでいった。ショウは次々とレイテに到着する招待客を出迎えたり、許嫁達と接待に付いて計画を立てたりと忙しく過ごす。


「ララ、結婚前なのに、リリアナ妃の接待を頼んで御免ね。カジム伯父上にも謝ってくれ。折角ミミも帰国して、ゆっくり娘達と過ごせると楽しみにしていらしたのに」


 ララはリリアナを屋敷に招待して、長旅の疲れを癒やしてあげる計画だった。


「ゆっくりと過ごす予定だから、気にしないで。リリアナ妃とエステ三昧するつもりなの。後はのんびり海を眺めてお茶でも飲むわ」


 あまり活動的なプランでは無いが、お淑やかなリリアナはバザールの見学など望まないだろうと、ショウも納得する。


 メリッサは、好奇心旺盛なロザリモンド妃をバザールの見学に連れて行ったり、海で泳いだりと活動的な計画を立てていた。この二人は、接待する妃の性格をよく理解しているので、任せても安心だ。


 ショウはカジムの屋敷を後にして、問題のロジーナの元に行く。勘の良いロジーナは、ミーシャがショウに気があるのに気づいていた。


「ショウ様、この貸しは大きいわよ。でも、ショウ様の許嫁として、ローラン王国のミーシャ姫をちゃんと接待しますから、安心して下さいね。とても内気で大人しい方だから、あまり外には出たことが無いでしょう。長旅で疲れてるでしょうから、基本は屋敷で過ごしますわ」


 座持ちの良いロジーナなら、ミーシャとも話を合わせてくれるだろうとショウは感謝する。


「ありがとう」


 ロジーナは言葉だけでは駄目だと、ショウを引き寄せてキスをする。ララとの結婚間際なので、ショウは何だか浮気をした気分になりながら新しい離宮に帰った。


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