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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ジーガ

作者: TK

友達とTwitterで『スカーレット』と、言う小説をバトン形式で書いたいたのですが

この話はそちらに登場するジーガの外伝話になります


本編も追々書いていく予定なのでそちらもお願いします



高い山に囲まれた小さな村がある

そこには100人程の人間が住んでいる


世界から隔離された村には自分達が全てで世界だった


村長を中心とした部族は山の中と言う険しい環境ながら

卓越した身軽さと戦闘力で狩りに困ることはない


村長ジールは36歳という若さで村を纏め上げる手腕を持ち

狩りに対しても村一番の成績を納めている

しかし、そんな村長に負けず劣らずの強者が居た

それが、村長の息子ジーガだ

父親譲りの戦闘センスに

まるでスポンジの様に吸収する学習力

剛気でありながら知識も兼ね備えている

両親はジーガに厳しく接しているが、本当は可愛くて仕方ないのだ



ジーガ16歳の朝、いつものように狩りに向かう

その日は、山がざわついていた

[なーんか、首の裏がむず痒いな…]

ジーガは気のせいだと、あまり気にせず狩りへと向かう


山をある程度進んでから気が付く

…おかしい、いつも居るはずの動物達が居ない

何かあったのか?


その時、遠くの方から獣の鳴き声が聞こえた


村の方角とは別だが何だか嫌な感じがした

このまま見過ごして厄介事が流れ込んでも困る


[…くそっ!]


狩りを中止し

限りなく気配を殺してジーガは急いで鳴き声のした方向へと走った


10分程走っただろうか


気配を殺して走ったとは言え常人よりも絶対的に速いスピードで走っていたにも関わらず、まったく息が切れていないのは、成る程鍛えられているのは伊達じゃないのが窺える


[なんだ?]


ジーガは異変に気付いた


そこには、熊と思われる死体が転がっていた

【思われる】その言い回しには理由がある

死体は、足の先だけしか残っていなかったからだ

熊は三メートル程ある大型の獣だ

それを、こんな無惨に殺せる生き物をジーガは知らない


その時、山々を震わせるように野太くかつ獰猛な雄叫びが響き渡った

しかも、聞こえたのが村の方角からだ


[やばい!]


ジーガは全力で走った

嫌な予感が頭を過り背中を冷や汗が伝う


絶対に無事でいろ!

必ず俺が何とかする


その思いだけを胸に抱き

足が悲鳴を上げても全力で走り続けた


やっと山を越え頂上から村が見渡せる場所まで辿り着いた


お願いだ!

無事で居てくれ



…その想いは


無惨に破壊された


ジーガの瞳に映ったのは…

村から炎が上がり村人が逃げ回っている姿だった


村の中心に居たのは

見た事もない大きな猛獣


それは、獰猛な牙を持ち

巨体でも無理なく飛べる程の大きな羽を持ち

まるで血を浴びたかの様な深紅色をした強固な鱗に包まれていた


[…ドラゴン]


伝承でしか聞いたことがない

なぜそんな伝説上の生き物がこんな場所に居る!?


[俺の村を…]


怒りで握った拳から血が滴る


[てぇ、んめぇー!!]


ジーガは肢体に纏った特殊な装備に魔術を行使し足から爆破を起こす

ジーガは山の頂上から村に向かって真っ逆さまに飛び降りた


通常、高所から降りる場合

着地前には体勢を翻し下に向かって爆破で衝撃を相殺する


しかし、ジーガは一切衝撃を緩めなかった

山の頂上から爆破で加速したままの状態でドラゴンに向かって行った


[くたばれー!!!]


足を横に開き爆破で身体を横の回転へと切り替える

螺旋状を描きながらドラゴンを蹴る

蹴りのタイミングに合わせ足の甲でも爆破を起こし衝撃を上乗せする


十メートルはあろうドラゴンが真横へ吹っ飛び、近くに在った家をひとつ潰して壮大に倒れる


[どーだクソ野郎!]


嘶きをひとつ上げドラゴンは何事もなかったように立ち上がる


[なんだよクソ!]


間違いなくジーガの中で最大の一撃だった

それでもビクともしない


[無事だったかジーガ!]


後ろからかかった声に少しの安堵を覚える


[親父!なんなんだよコイツは!?]

[俺にも分からん…]


普段の優しい表情からは想像も出来ない

初めて見る父親の険しい表情


[ジーガ…お前は村の皆と逃げろ]


始め、何を言ったのか理解できなかった


[お、おい!ふざけんなよクソ親父!?俺も戦う!当たり前だろ!]


ジールはゆっくりと左右に頭を振り


[いいや、お前は逃げる村人をしっかりと守るんだ

お前にしか任せられない、分かってくれ]


強敵を目の前に少しも躊躇ってる時間はない

ここでジーガが残ればジールは思い切り戦う事は出来ないだろう

なら、答えは出ている


[…くそっ、直ぐ戻ってくるから、くたばんじゃねぇぞ!]


ジールはドラゴンから目を離さずに、ニコリと笑う


[母さんを頼んだぞ]


ジーガとジールは反対側へ走り出した

ジーガは村人の逃げ道確保へ

ジールは村人が逃げ切るまでの囮へと


ジーガは父親の激戦を聞きながら前だけを見て走り出した


絶対に死ぬなよ、クソ親父!



村人をパニックにさせないように急ぎながら、逃げる村人の殿を務め緊急時の隠れ家までどうにか避難した

[よし、これで全員だな!俺は村に戻る、皆は大人しく此処に隠れていてくれ!]


急いで出て行こうとするジーガに後ろから声がかけられる


[ジーガ…]


それは、ジーガの母だった

剛気なジーガの母とは思えぬ緒しとやかさを醸し出す村一番の美人だ

いや、きっと村を出ても恥ずかしくない程だ

そんな母が、ジーガを鼓舞する


[必ず、生きて帰ってくるのよ]


たったそれだけの事で、勇気が湧いた

恐怖が掻き消えた

必ず勝つと言う気持ちになった


[おう!親父も無事連れてきてやる、安心して待ってろよ!]


ジーガは村へトンボ返りする

本日、何度目の全力の走りだろう

もはや足の感覚など無い

まるで宙にでも浮いてる気分だ


20分…隠れ家に村人全員を連れてくるまでにかかった時間だ

親父が生きてる事は分かる

激戦の余波がここまで届いているのだから


しかし、その余波は少しずつ少しずつ弱まっていく



もう少しだ辛抱してくれ



更に五分、ジーガは村へ戻って来た

近くに来た時には既に戦闘は終わっていた


ドラゴンの目の前に倒れる

ジールの姿があった

血に濡れた、その姿は守護者の名に相応しい勇敢な姿だった


[親父ぃぃぃ!!]


無理矢理な爆破に任せドラゴンの足元へと飛ぶ

ドラゴンが嘶き、踏みつけてくる


[邪魔だ!]


踏みつけてくる足にアッパーを被せ爆発させる

吹き飛ばす事は叶わず踏みつける位置を少しズラす程度となった


[やっぱりデケェってのはつえーな]

[…な、んで…戻って、きた…?]


生きているのが奇跡、それ程の傷を負っているのに

それでも、息子の心配をする父にジーガは涙する


[黙ってろ、親父は安心して生きる事に専念してろ]

[だ、めだ…逃げろ]

[うっせー!護るんだよ何もかも全部、俺が護るんだ

何だってブチ倒す、邪魔するならぶっ殺す]


護るんだ全部、今までの笑顔は消させない


[うぉぉぉぉ!]


ジーガの手足に纏っている装備が赤い炎から青い炎に変化する


[喰らえ!]


青い炎はジーガの背に周り

羽根の様に燃え上がった


背中で爆発し通常の何倍もの速度でドラゴンへと迫り

繰り出されたパンチは顎を的確に捉え


ドラゴンはグォォォォと悲鳴を上げる


よしっ、行ける!


怯んでる隙に連打で畳み掛ける


[伝説上の生き物だけあってタフだな…だが、まだだ!]


爆破で加速し爆破で上乗せしようとした途端

ガス欠になったのか不発に終わった


やばい!


ドラゴンは回転し尻尾で攻撃する


殺される!


[シデロヴレヒ!]


空から、ドラゴンにのみ銀色の雨が降る

ジーガの元に跳ね返った雨を触る

…鉄?


[だれだ!?]


崖の上に立っていた人物は灰色のローブを羽織っていた


[君にはまだその魔術は使いこなせない無理をすれば身体を壊すぞ]

[俺が護らなきゃ、この村は無くなっちまうんだ!]

[今の魔術じゃドラゴンに対してダメージを与えられない

せいぜい少しの間動きを止めるくらいだ

今から魔術の詠唱にはいる、その間の時間稼ぎを頼む]


ローブの人物は詠唱の体勢にはいった

それは膝を着き王に謁見でもするような

そんな、気高さを纏っている


[神の終わりを知らせる槍…]


[いきなり現れて何言いやがる!]


ドラゴンが雄叫びを上げ動き出した


[くそ、わかったよ!]


ジーガから青い炎は消えていた


爆破で撹乱して

死角からのヒットアンドアウェイ

数秒の間の攻防

致命傷に成はずの攻撃を回避に徹する事で、どうにか切り傷程度に抑える

ジールに気が向かないように細心の注意を払いながら囮を全うした


[良くやった、下がっていろ]


ローブの人物は右手を上げ

そこには黄金に輝く螺旋状の三メートル程の槍が宙に浮いた状態で構えられていた


そして、男が右手を前に突きだし

[神葬ロンギヌス]

そう、ボソリと呟いた


[…うそだろ]


…槍が発射された瞬間がわからなかった

黄金の輝きが残光として残り

その直後に地面が爆発した

残ったのは頭部から尻尾にかけてドデカイ穴の空いたドラゴンの死骸

それも、直ぐ塵となって消えていった



[…終わったのか?]


ローブの人物が近づいてくる


[お前には魔術の素養が多分にある

私が推薦してやる、爵級魔術師としての人生を歩むが良い

お前はこんな村に収まる器じゃない

もっと世界を観て回って色んなものに触れ合って、最強の魔術師になれ]


[…何言ってんだ…?…大丈夫か親父!?]


[無事か…ジーガ?]


[…明日また迎えに来る、その時に返事を聞かせてくれ]


ローブの人物はそのまま去って行った


ジールはたぐいまれなる生命力で一命を取り纏め

村人は戻り、直ぐに復興へと勤しんだ


そして、日が明け…翌日


[ジーガ、お前は村を出ろ]


穏やかにジールは話しかけた


[はぁ?何言ってんだ親父]


ジーガは呆れた様子で全く取り合わない


[お前は直ぐに俺を越える

族長で収まる男じゃないんだお前は、だから世界を観て来い]


ジールは真っ直ぐジーガを見て言う


[まだ村がこんな状態で出ていくことなんて出来るかよ!]

[村の事は心配しなくて良い

お前は、お前の生きたいように生きれば良い

それが、俺と母さんが望んだことだ…だから、行ってこいジーガ]


ジーガは両親の顔を眺め、これは何を言っても折れない顔だと言うことを理解した


[わかったよ…んじゃ、この村じゃ食べられねぇうめーもんいっぱい持って来てやるからな!]


[あぁ、楽しみに待ってる

そして、必ず元気に帰って来いよ]


[…んじゃ、行ってくる!]


村の入り口で待っていたローブの人物ジーガの顔を見て言う


[答えは出たみたいだな?]


[あぁ、ジーガ・レオンダスだ、これからよろしくお願いする]


[こちらこそよろしく]


[名前は教えてくれねーのかよ?]


[追々な、まだ時間はあるんだ、話の種は多い方が良いだろ?]


そして、ジーガは旅だった


ジーガ16歳の朝

王国始めてのハイソーサリアの誕生であった









最後まで読んでいただき有難うございます


面白かったつまらなかったなど意見がありましたらコメントいただけると嬉しいです


自分が連載している方も更新は遅いですが頑張っていきます

そちらもよろしくお願いします


全部『す』終わり…

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