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目的地まで、あと1つ、2つ夜を越せばたどり着くところまで近づいていた。
李怜は夜の番のために起きていた。
ぱちぱちと爆ぜる焚火は静かな夜を少しだけ煩わしくさせる。
弟子は斜面を登るに連れて、口数が少なくなった。
常人なら登ることも躊躇われる道を、二人分の荷物を背負って登っているのだから。
それでも、弱音の一つも吐かなくなったのはこの弟子が成長した部分と言ってもいいのだろうか。
ほめてやろうか、とも思ったが、やめた。それだけは性に合わない。
野宿をする、と言った時、愁は無言で座り込んだ。
空気が薄くなり、うまく呼気を取り込むことも難しい中で、動いている。
疲労もずっと濃いはずだ。
愁と同じ年頃だった自身ですらそうなるだろう。
「今日は休め」
珍しい師父の申し出も、愁は首を上げることはない。
「明日には目的地へ着ける。今夜は私が夜通し起き続けよう。お前は明日に備えていろ」
「師父…」
無理矢理でも身体を奮い立たせそうな弟子に、師父は優しく微笑む。
「師の好意を無駄にするな。今、お前に倒れられたら私が困るのだ」
「師父がそういうのなら・・・」
珍しく愁は素直に李玲の申し出を受け入れた。
弟子はすぐに横になると、あっという間に寝息が聞こえてきた。
ちろちろと。くすぶるような炎をじっと見つめる李怜。
今までの、旅の道程を思い起こすのは、ちょうどいい頃だった。
愁と出会った時の、己のことなんてとくに。