赤髪の少女
真新しい制服に身を包み、俺は入居したばかりの寮から丘の上にある学校へと続く坂を登っていた。
入学案内のパンフレットを見た時には学校の建物の美しさ目を引かれ、学校のまわりの環境など気にもしていなかった。
編入を快く受け入れてくれた学校には感謝しているが、毎日この坂を登っていくのかと思うと気が遠くなる。
一キロはあるんじゃないのか、これ。
横断歩道に差し掛かった時、ちょうど信号が赤に変わった為立ち止まる。ブレザーのポケットに手を入れると、何かが手に当たった。
取り出すと、それが自分でポケットに入れた学生証であったことを思い出す。
『六堂 解』と書かれた学生証には、半目気味の俺の顔写真が写っている。特徴もなく、平凡な顔だと思う。ブサイクではないと信じたい。
信号待ちをしていて歩き出そうとした時、不意に左側から自転車が飛び出してきた。
「きゃあっ!」「わあっ!」
俺は慌てて身を引き自転車を回避する。自転車に乗った若い女性は小さな声で謝るとそのまま走り去ってしまった。
飛び出してきた女性に腹が立つが、俺にも非はある。俺には視界の左側がほとんど見えていないからだ。
視力が悪いとか、左眼が見えないとかではない。ただ、生まれつき何故か左眼が赤いだけだ。