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第七話『王都エルサム』

文字数が段々少なくなっている……!?

アリス達が詰所の扉を開け放った途端、眼前には中世ヨーロッパ風の街が広がっていた。

山を中心に築き上げたこの都は一番外側に当たる東門近辺にいるのだが、中心部の城下街が意外とよく見える。

こんな光景が現代にでも残っていたら即世界遺産にでも登録されるのではないかと思えるほどの整った町並みだ。



「わぁー、綺麗だね」


「カメラがあれば一枚以上は撮りたいくらいだね」



クロネとアリスはそれぞれ感想を述べる。



「クロネは他に何か言うようなことはないの?」


「そういうアリスちゃんこそだよ」



お互いに語彙力の足りない感想にツッコミを入れる。



「さぁて、まずはこの巨大な街の散策から始めよう」



伸びをしてからこの広大な未開の地に向かって言った。



「あてはあるの?」


「あー、無いかな」



すかさずクロネから心配そうな声が上がるがアリスは即答でそれを切り捨てる。

心配で聞いた質問に更に不安になるような回答をされて先が思いやられるな、とクロネは感じたのであった。









「げ、ゲームの時より広いよ……」



クロネは人混みに押され、疲れ切ってしまったらしい。

無理をして中心に近づいたのはまずかったかと少しだけ反省をする。



「まあ、ずっと閉じ込められてた身分からすると散策するのも嫌いじゃ無いんだけどね」



「アリスちゃんはゲーマーにしては活発過ぎるよぉ……」とクロネは反論し項垂れる。

少しのことでへばってしまっていては折角の異世界も廃ってしまう、流石にそれはもったい無いなというアリスは感じていた。

そのような感覚を持つのはアリスだけらしく、クロネは息を荒げ疲れたことを全面的に出している。

残念だ、とは思いつつもクロネのわがままをスルーして王都の散策を続ける。

とはいえ日も傾いてきているため、これからすることは宿探しになるだろうが。



「あ、アリスちゃん。あの建物ってなんだろう」



クロネに呼び止められて指をさしている方に目線をやる。



(王都の中心部と外縁部の中間にある巨大な建物、か……)



どうやら街の細かいことに目を配りすぎてここまで巨大な建物に今まで気がつかなかったらしい。



「他の建物と比べても段違いに凄く大きいけど……?」



クロネはそういうがこの建物より城の方が何十倍も大きい。

実際のところアリスは城の方が気になりすぎており、気が散って街の散策どころでは無い。

ファンタジーな世界で初めて見た超巨大な城に興奮してしまってそれが覚めていないのだ。



「なら、街の人に聞いてみようか」


「えっと……、やめて欲しいなー……」



とはいえこの建物も気になるので適当に提案するが却下されてしまった。

クロネ曰く人目がありすぎて流石に恥ずかしいとのこと。

よくよく考えてみると、ここは王都の中心部に近い場所なのである。クロネが言っていることにも頷けないことはない。



「あれが看板かな?」


「そうみたい。えっと、冒険者ギルド王都中心区画本部か」



適当に歩いていただけに目的地を見つけられたのは嬉しいものである。

冒険者ギルドは各地域の冒険者が過ごしやすくするために作られた組織であり、ギルドカードを持つだけで様々な依頼を斡旋してもらえるのである。


だが様々な依頼を斡旋するとはいえ、それにも難度によってランクがつけられてある。

依頼はそれの持つランクと冒険者ランクの誤差が±1でなければ受けることができないらしい。つまりCランクであれば一個上のBランクか一個下のDランクまでしか受けられないということである。但し各支部や本部長の特別な指示があった場合は除くとか。

但しこれらはアリスの調べた知識だ。ゲームではAランクでも一番下のFランクの依頼が受けられたのでそこのところはよくわからない。



「開いてないね」



日が傾いてきたためか既に入り口の扉には鍵がかかっており開かなくなっていた。



「さて、宿でも探しに行こうか」


「さ、賛成っ。散々歩き回って揉みくちゃにされてくたくただよ……」



と、クロネは器用に尖ったエルフ耳をピクピクとさせて肩を落とす。

アリスはクロネの腕を引っ張り、ギルドの近くの建物に連れて行った。



「ちょうどいいことにギルドへのアクセスも良い宿を見つけたんだ」


「よ、よく見てたねぇ……」



アリスがドヤ顔をしているので流しつつもクロネはようやく休めるよ、と大きく安堵の息を吐いた。








「子供……、じゃなくて。こんにちはっ、ご利用は初めてですか?」



翌日、アリス達がギルドの中へ入るとカウンターの奥から受付嬢が出迎えてくれた。

最初の独り言はアリスとクロネの両方にもよく聞こえなかったが挨拶は元気が良かった。

アリスの背が小さいとはいえ、それに反応することなく対応している。

中にいる冒険者の数はそう多くはなく、まちまちである。



「はい、これ」



アリスはギルドカードを提示する。

確かに利用するのは初めてなのは否定しないがそんなことをしていると余計に怪訝な顔をされそうなので止めてておくことにした。



「えっと、Aランク……? この子が?」



アリスは受付嬢の対応にデジャヴを覚える。

そういった反応は見ていて飽きることはないがAランクというのがそこまで凄いのだろうか。

アリスはそう思うが、それは自身の姿のせいだということを完全に忘れている。

まだまだランクには上が存在している。

ただ単に実装されていなかった、というだけだが。



「そ、そんなにすごいんですか?」



クロネが受付嬢に声をかける。

アリスも気になっていたことではあるが、聞いてしまうと自身の幻想が砕け散ってしまいそうたったので黙っていた。



「そこまですごい、わけじゃないんです。Aランクは中堅程度の実力と素晴らしい人柄、豊富な経験を持った冒険者に発行されるんですよ」


「……あー、なるほどぉ」



クロネが理解したらしく間をおいて返事をする。そして、アリスも自分の姿のことを思い出して察することができた。

ちなみにアリス達は聞かなかったが、素晴らしい人柄を判断するのははギルドの独断と偏見である。



「年齢に見合わない、と……」


「そ、そうなりますね。でもAランク以上の冒険者はギルドと提携している国家の都を自由に行き来できますよ」



別に強すぎたというわけではないらしい。しかし気を使ってくれたらしくAランクの良い部分を挙げてくれる。

しかしどうしてかアリスは心をえぐられるような気分になってしまう。



「そ、それよりギルドの方に一旦出向いてくれって門の方で言われたんですが」


「えぇと、わかりました。掛け合ってみます」



少し落ち込む気分を変えてアリスは今回の用件を伝えると受付嬢はすぐに動いてくれた。



「……はい、わかりました」



どうやら中にいる人物との会話を終えたらしく、受話器のような魔道具を机上へと下ろした。



「ギルド長がお呼びです。秘書の方が大変興奮されていた様子でしたが……。何かやらかしたり、なされました?」



受付嬢はおずおずといった様子で聞いてくる。

アリスはその受付嬢の様子から相当のものだろうと思いつつも首を横に振る。この世界に来て怒られるようなことをした覚えなど無かった。

強いて挙げるとするならばアリス教の設立だろうが、これはアルフレッド達によって勝手に行われたものである。



「案内は私とは別の者がされます。アリスさんはこちらにどうぞ」



そう言って受付嬢は微妙そうな表情をしつつアリスだけを奥へと通してくれた。

クロネは通ることが許されなかったらしく、しばらくは待機しておけということらしい。


散り際に名前でも聞いておけばよかったかなどと変に冗談を考えつつも上階の一室に案内される。



「こちらの奥にギルド長がいらっしゃられます。くれぐれもあの方のお機嫌を損ねぬようにしてください。それでは私はこれで」



そんなことを今言われても遅いような気がするアリスではあるが、その声は案内の人に届く様子はない。



「し、失礼します」



アリスは案内が去っていくのを確認し、ビクビクしつつもその扉を開け放った。



「……よくぞこちらにいらっしゃられましたね」



厳格な雰囲気の中、広い部屋の中央に立っている女性がそう呟いた。



「会いたかったでございます! アリス様!」


「……はい?」



そして、アリスは困惑した、




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