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8、夜中のお客様

「はぁー、とっても楽しかったです!」

「ふふふ、エリーゼ様がたくさん質問をして下さいますから、ついつい話し過ぎてしまいましたわ」

「でも、エリーゼ様とたくさんお話ができるなんて・・・嬉しいです!」


もう少しで、寝なければならない時間になってしまうので、私達は話すのをやめました。

とっても楽しいお話でした!この世界に来て、初めてこんなに笑ったかもです。

でも…もう終わりですか…。


「エルさん、セレナさん。またお話をして下さいますか?」

「はい、エリーゼ様がそうおっしゃってくださるのならば」

「わっ私もです!エリーゼ様とたくさんお話をさせていただきますっ!」

「まぁ・・・本当にありがとうございます」


私がお願いをすると、2人はニッコリ笑って頷いて下さいました。

嬉しいです!仲良くなれたかもしれませんね!


「では、私たちは失礼いたします」

「おっおやすみなさいませ、エリーゼ様」

「はい、おやすみなさいです」


バタン、とドアが閉まり2人は出て行きました。

急に静かになった部屋で、1人寂しい私。

うぅ…悲しいです。


「でも、しょうがないですね…」


本当は違うとしても、今の私は貴族。エルさんとセレナさんは私の侍女なのですから。

いつか…もといた世界のように、全てが平等にならないのでしょうか…。

私はため息をつくと、静かにベットに入り込みました。

いつもならゆっくりと眠りに入るはずが、自分では気づいていませんでしたが‥疲れていたようです。

私はあっという間に眠りの世界へと旅立ちました。


…旅立ちましたが?


「おい、起きろ」

「んんー‥まだ眠たいですよぉ…」


突然、私を眠りの世界から呼び戻すような声が聞こえました。

まだ‥あともうちょっと寝かせてください…。

ゆっくりと私は寝返りを打ちます。


「まさか…こいつは今日が何の日か知らないのか?」


‥今日ですか?何かありましたっけ…?

まだ眠りたかったですが、今日が何の日か気になったので、私は目を開きました。

そこに見えたのは赤い瞳。

何でしょう…?まるで、燃えるような赤い…瞳?

私の知ってる限りで赤い瞳の方は1人しかいません。

私はその1人の方を思い出すと、すっかり目も覚めてしまってガバッと起き上がりました。

すると、突然頭に痛みを感じます。


「ひゃあっ!いたた…!!」


慌てて頭を押さえた私は、周りを見渡しました。

月で照らされた部屋には、私と…あともう1人の人影を映し出します。

その方は…私をじっと睨んでいます。

いやぁぁっ!!申し訳ありません!


「もっ申し訳ありません!陛下!」

「…かまわん」


そう、私はあろうことか----陛下と、頭をぶつけてしまったのです。

私の顔が真っ青になるのを感じます。

私は思わず、ベットの上で正座をしました。

そしてその後、頭を思い切り下げます。


「きょっ今日のご無礼と、今の…事故をお許しください!」

「あっあぁ」


陛下は驚きながらも頷く気配がしました。

本当ですかっ?じゃっじゃあ…


「お母様達には何も起こりませんか?ナタルシア家の皆さんには?」

「別にそんな事で怒りはしない。ところで、今日の無礼とはなんだ?」

「えっ知らないのですか?」


あんなに失敗したのに…。

驚いて失礼な言葉使いになってしまいましたが、陛下はスルーして下さいました。

それよりも、という風に私の言葉を待っています。

えぇっとですね…。


「今日、陛下と初めて会いました。そこで…私は陛下と私の知り合いを見間違えてしまったのです。

そのことで陛下に対して無礼をしてしまいまして…誠に申し訳ありませんでした…!」


自分で説明している内に、陛下に無礼をしてしまったことが改めて感じられます。

もう、ハルには会えないかも知れませんし、陛下はハルでもありません。

なのに、間違えてしまったなんて…。


「そんなことがあったのか」

「…え?」

「覚えていなかった。別に、お前が気にすることでもないだろう」


え…‥は、はい??

覚えてなかったんですか?

確かに、それならば気にすることもありませんよね…。

じゃ、じゃあ、本当に気にしなくて良いのでしょうか?

恐る恐る陛下の顔を覗きこみましたが、陛下の目は私の後ろにある掛け軸を見ているだけでした。

本当に大丈夫みたいです。…なら、大丈夫ですね!


「ありがとうございます!陛下。あの、それで今日は何かありましたか?」


しかも、こんな夜中に…そういうニュアンスをこめて陛下に問います。

陛下は少しだけ驚いたように目を開きました。


「あ…いや、別に何にもないだろう。なんとなくここに来ただけだ」

「は、はぁ…?」


何となく納得がいきませんが、陛下が言っているのですからそうなのでしょう。

私は安心すると、陛下に向かって言いました。


「では、わざわざこのような所に来ていただき、ありがとうございました。それでは、陛下もお休みの時間でございましょう?おやすみなさいませ」

「…そうだな。それでは失礼する」


陛下は驚いたような顔になりながら、出て行きました。

…陛下、驚き過ぎてはありませんか?


「ふぁぁ…緊張しました。でも、意外と良い方なのかもしれませんね…」


緊張がとけて安心したのか、眠りの誘いが私にかかります。

おやすみなさいです…。


今度こそ私は、眠りの世界へと旅立ちます。

その眠りは、エルさんとセレナさんが来るまで、続いていました。






というか…陛下は、何のために来たのでしょうか?









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