5、3ヵ月が経ちました。そして・・・お別れです。
今回から、『*』は過去の時間に遡る時に、
『+』は現在の時間を飛ばす時に使いたいと思います。
読みづらかったらすみません。
「朝でございます。エリーゼ様」
「ふぁ・・・おはようございますです。エルさん」
私の朝は侍女であるエルさんの声から始まります。
むむぅ・・・まだ眠いです。
でも、朝食の時間に遅れるとレイラ様に怒られてしまうので頑張って起きます。
私は目を擦り、エルさんに助けてもらいながら着替えました。
「朝食の時間です。ご案内しますね」
「はい、よろしくお願いします」
その後私はエルさんに案内されてメインテーブルまで来ました。
そこにいたのは3人の人影。
「おはようエリーゼ」
「おはよう」
「おはようエリー」
お母様であるレイラ様と、お兄様のアラン様、そしてお父様のファール様です。
「おはようございます。お母様・お兄様・お父様」
私は深々とお辞儀をして席に座りました。
するとレイラ様がニッコリと微笑みます。
「今日は『あの日』ね。大丈夫?エリーゼ」
「はい・・・レイラさ、じゃなくてお母様!」
レイラ様をレイラ様と呼ぶと、「お母様と呼んで!」と言われるのでお母様と呼ぶ事になっています。
それはともかく、とうとうこの日がやってきてしまいました。
『あの日』___陛下の側室になる日が。
・・・なんでこんな事になってしまったのでしょうか。
それは、3ヵ月程前に遡ります。
*
自分の話をし終えた私は、少しくたびれてしまいました。
エリーゼさんに話した時と違い、緊張したからでしょうか。
よくわかりませんが、とにかくくたびれてしまいました。
「そう・・・そんな事があったの。話してくれてありがとう、スズ様」
「あ・・・いえいえ、お気になさらないで下さい」
申し訳なさそうにしている女の人に向かって、私は笑顔で首を振りました。
それに、私も話してすっきりしましたからね!やっぱり嘘をつくのは難しい事です。
「・・・母上、少しよろしいですか?」
「はい?どうしたのアラン」
「ちょっと・・・」
男の人はチラリと部屋にある扉の方を向きます。
女の人はその動作でわかったようです。
はぁ、と1つため息をつくと勢いよく扉の方へ行き、開けました。
「聞き耳立てるなんてなにしてるのよ、あなたったら」
「うわっ!」
すると、男の人が外から飛び込んできます。
そして、勢いよく地面に転んでしまいました。
思わず、目が点になってしまいます。
どうしたのでしょう・・・。
目が点になっている私を見た為でしょう、女の人が苦笑いをしながら説明をして下さいました。
「この人はエリーゼとアランのお父様よ・・・あなた、この方はエリーゼそっくりのスズ様」
「スズです・・・初めまして」
「いてて・・・あぁ、初めまして。ファールと申します」
「で?どこまで聞いてたのかしら?」
自己紹介を終えた私たちに、女の人は腰に手を当てながら苦笑い中です。
そんな女の人に、男の人は、少し胸を張りました。
「最初からさ」
「胸を張って言う事じゃないわよっ!」
「ははっ・・・まぁ、そんな事は良しとしてだな。スズさん」
「はっはい」
男の人は、不意に真面目な表情になります。
「君は本当にエリーゼのかわりを務める事になる。それでも良いのかい?」
「えっ・・・はい、私にはエリーゼさんのかわりを務める事しか生きていく道が見えませんから・・・。それに、エリーゼさんにはとてもお世話になりました。恩返しがしたいのです。エリーゼさんの手助けをしたい・・・!そのために、エリーゼさんのかわりを務める必要があるならば頑張ります!」
「そうか・・・ありがとう。娘の為にそんな事を言ってくれるなんて」
私は自分の気持ちを言っただけです。ですから、そんな事を言われても困るのですが・・・。
そう思いましたが、エリーゼさんが家族の皆さんに愛されている気がしました。
ふふふ、嬉しいです!
えっと、そんなこんなで私はエリーゼさんのかわりを務める事になったのです。
*
「・・リーゼ、エリーゼ!」
「はっはいっ!なんでしょうか!」
ぼんやりと3ヵ月前の事を思い出していたせいか、レイラ様に呼ばれた事に気付きませんでした。
「大丈夫?これからあなたは王宮に行くのよ?ぼんやりしてたら危ないわ」
「・・・すみません。気をつけます・・・」
「まぁ、王宮には従姉がいるから大丈夫だと思うけど・・・」
レイラ様はため息を吐きます。
うぅ・・・すみません。私がしっかりしていないばかりに・・・!!
もっとしっかりしなければいけませんね!頑張ります!
私は握り拳を作り、レイラ様に宣言しました。
「大丈夫です!エリーゼさんにもナタルシア家の皆さんにもご迷惑がかからないようにしますから!」
「そう・・・頑張ってね」
「はい!」
レイラ様から応援の言葉をもらい、私は笑顔になりながら朝食を食べ終えたのでした。
++++
そして、いろんな事をしている内に時間が経ち、とうとう出発の時間となってしまいました。
「では行ってきます!」
「気を付けるのよ、エリーゼ。嫌になったら帰って来て良いからね」
「いえ、大丈夫です!私、本当に頑張りますから!」
笑顔でレイラ様に挨拶をする私に、レイラ様は心配そうな顔です。
でも・・・帰るなんて、そんな事は出来ません。
何も知らなかった私(当たり前ですが)に、1つ1つ丁寧に教えて下さったのはレイラ様なんですから!
私はレイラ様に教えてもらったように、丁寧に深々とお辞儀をします。
そして顔をあげた瞬間、固まってしまいました。
何故かと言うと・・・・・レイラ様の目に涙が浮かんでいたからです。
えっちょっど、どうしたんですか!?なっ泣かないで下さい!
慌てている私を見たレイラ様は涙を拭うと、笑顔で言いました。
「あら・・・ごめんなさい。あなたは本当のエリーゼじゃないのに・・・ごめんなさい」
「いいえ!本当に大丈夫ですから!泣かないで下さい!」
「ありがとう・・・。あなたは私の本当の娘ではないわ。でも、私の大切なもう1人の娘よ。それを・・・・忘れないで」
「はい・・・!」
私にはもったいない言葉です。けど・・・やっぱり嬉しいですね。
私の心が熱くなります。そして、涙も出そうになりました。
「さよなら・・・!!」
泣いてる顔なんて駄目・・・!と思った私は、急いで挨拶をすませ馬車に乗り込みます。
そこには、ファール様が待っていました。
「別れの挨拶はすんだかい?しばらく会えなくなるよ・・・レイラには」
「はい・・・すみました」
そうです、レイラ様にはしばらく会えなくなってしまうのです。
ファール様とアラン様は、王宮で仕事をしているので会える可能性がありますが、
レイラ様は屋敷にいるため、本当に会えないのです。
「出発してくれ」
ファール様の静かな声が馬車に響き、馬車が動き始めます。
私の事を1番気にかけてくださったレイラ様。
マナーや作法についてはとても厳しかったけど、上手に出来ると、一緒に喜んでくれたレイラ様。
勉強についても教えてくださいました・・・。
屋敷で1番近くにいてくださったレイラ様。
本当にありがとうございました・・・!!!
思わず込み上げた涙。もう、止める事は出来ませんでした。
うっ、うっとしゃくり声が出ると同時に涙も溢れてきました。
ファール様も気付いているとは思いますが、気付かないフリをして下さいます。
そのフリに甘え、私は王宮に着くまでずっと、泣いてしまいました・・・。
お別れの回です。
展開速くないっ!?と思った方、すみません・・・。
私にはこれしか浮かばなくて・・・。
ちなみに、若干アランさんとファールさんは空気です。
アランさんに関しては、最初の挨拶しか出番がありません。
ごめんね・・・アランさん!!
そしてお別れの挨拶の時、アランさんは先に王宮へ出勤してました。
次話は出番あるかもです。