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夢の転生異世界へ  作者: オヨズマフタ
夢の続き
6/54

5.家族と決意と

「ん……?」


 ……あれ? ……ここは……どこだ……?

 ベッドに寝かされている。何で俺はベッドに寝てるんだ?

 たしか、シルトやトルシィと一緒に森に遊びに行って……! そうだ熊! ……をあの持ち手みたいなやつが倒したんだよな。

 何だったんだあの持ち手は……


 などと考えていたら、


「うおっ!?」


 ベッドからバッ!と何かが飛び出てきた。

 何なんだ!?と思ってみてみると、今考えていた持ち手がベッドから出てきたらしい。……添い寝してたのかよ。


「何なんだお前は……」


 そして俺の足の上に乗る。ペットかよ。

 そんなことをやっていると、扉が開いた。


「あっ!」

「ん?」


 扉の方を見るとシルトがこちらを見ている。


「おはよう。シルト」

「……」


 無言でこちらに近づいてくる。何だ?シルトが喋らないなんて珍しいな。

 俯いていて表情は見えない。そのまま右手を上げ、拳をグーの形にする。そのまま俺の方に手を……

 ぽか、ぽかぽかぽかぽかぽか。


「あの……シルトさん? 何で無言で殴ってくるんです?」

「……」


 どうしよう。痛くはないが意味がわからない。


「あの……シルト……?」


 そのまま無言で部屋を出ていってしまった。入れ違いでトルシィが入ってくる。


「あっテスカ!」

「おはよう。トルシィ」

「身体は大丈夫?変なところは無い?」

「うん。大丈夫みたいだ。……ところであの後、どうなったんだ?」

「……私は気絶してたから、他の人から聞いた話なんだけど……」


 あの後、シルトの案内で助けに来た冒険者達は皆とても驚いたらしい。

 この村で一番強い冒険者がギリギリ一人で狩れるレベルの熊を、ダメージを受けたとはいえ子供が一人で武器も無しで倒したのだからそりゃあ驚くだろう。

 そして、


「シルトちゃんが、とっても動揺してたって」

「え……?」

「倒れてるテスカを見た途端駆け寄って泣きながら「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」って言ってたって、冒険者さんが」

「シルトが……?」


 あの、シルトが?前世では俺と殺し合いまでしたあいつが、俺の名前を呼びながら、泣いた?

 ……行かなくちゃ。何故かはわからないけど、俺はシルトのところに行かなくちゃいけない気がする。


「俺……シルトのところに行ってくる」

「……うん。行ってあげて」


 俺は寝ていた場所をとびだす。途中、両親の声が聞こえたが今はシルトが先だ。

【ユニス診療所】と書いてある看板が見えたのであそこは診療所のベッドだったのだろう。

 シルトはいったいどこに……。

 その時後ろから飛んできた持ち手が俺の前に出てきて、刀身を「←」の形にした。


「シルトはそっちに?」


「そうだ」と言うように「←」が震える。


「ありがとう!」


 持ち手にそう言って走る。持ち手が示した方向にあるものといえば俺とシルトの家だ。そこにシルトがいる。そう確信した俺は全力で走った。家と診療所はそんなに遠くないのですぐに着いた。


「シルト!」


 リビングにはいない。ということは俺の部屋か。


「シルト!」


 いた。部屋のすみっこでこちらに背を向けて座っている。


「シルト……?」

「おにいちゃんの、バカ」

「えっ」

「しなない、ってゆったのに」

「……生きてるぞ」

「でも、しんじゃったかと、おもった」

「……ごめん」

「ゆるさない」

「…………ごめん」

「もうにどと、しにそうにならないで」

「……わかった」

「……ばか」

「……うん」

「ばか、ばかばかばかばかぁぁぁぁ……」


 泣き出した妹を慰めながら、俺は二度と死にそうにならないように、強くなろうと決意した。


 ……………


「……なあ、シルト」

「なに?」


 ひとしきり泣いて、落ち着いたシルトに気になってることを聞く。


「どうして、そんなに俺のことを……その、心配してくれるんだ?」

「…………はじめての、かぞくだったから」

「初めての、家族?」

「まえは、いつもひとりぼっちだった。ふういんされるまえも、ふういんされてるときも、ふういんがかいじょされたときも、みんなわたしをこわがった」

「……うん」

「でも、おにいちゃんがきてくれて、ひとりじゃなくなった」

「……うん」

「おにいちゃんとここにきて、かぞくになれた。おとうさんと、おかあさんもできた。ともだちもできた。ひとりぼっちじゃ、なくなった」

「…………うん」

「……あったかかった」

「……そうか」


 まさか、シルトがここまで俺を大事におもってくれているとは、予想外だった。


「ありがとうシルト。……俺、強くなる。もうシルトを泣かせないくらい強く、誰よりも強くなる」

「おにいちゃん……」

「だから、安心してくれ」

「……うん」


 返事をすると、シルトは眠ってしまった。

 後から聞いた話だと、シルトは、俺が起きるまでの数時間、休まず看病していたらしい。無理をさせてしまった。


「……さて」


 約束したからには、強くならなくてはいけない。

 前世のようなチートは無い。あるのは、《粒子召喚》と《粒子操作》というスキルだけ。それでも俺はやる。


 大切な妹を、二度と悲しませないために。

読んでくださってありがとうございます。


ようやく、守るものと強くなる理由を得た主人公。

初めて目に見えない「強さ」をてにいれた気がします。

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