3.トルシィと危機と
「あ……」
「あっ……」
村でトルシィと遭遇した。まあ、小さい村なので会わない方がおかしいのだが。
「や、やあトルシィ」
「こ、こんにちは。テスカ……」
「……」
「……」
何かすげえ微妙な空気に。気まずい。
「あ、あの……」
「はっはい?何でしょう」
「この前は……その……いきなり変態とか言ってごめん……」
「へっ?」
「そ、その……えと……」
「ああ……まあ、気にしなくていいよ。僕も気にしてないからさ」
「……」
「というわけで……その……あれだ!とにかく大丈夫だ!」
「……うん」
「……よし!今日はシルトも連れて森にでも行くか!」
「……うん!」
……………
「それでテスカにい。もりでなにをするんです?」
「そういえば考えてなかったな……」
「テスカってたまに抜けてるよね……」
「そうかなあ」
シルトの「にいに」は全力で阻止したので、「テスカにい」に戻っている。
「じゃあ、俺の粒子で飛んで遊ぶか?」
「あっ!それいいね!さんせい!」
「私も飛んでみたい!」
「じゃあそうするか。場所は……向こうの開けた場所にしよう」
「じゃあはやくいこ!」
……こいつも、世界を滅ぼそうとしていたわりには、普通の子供っぽいところもあるんだな。
「待てって!そんな急ぐなよ!」
その時、ちらっと目に入った木に、大きい傷跡があるのが見えた。
嫌な予感はしたが、とりあえずそれは無視して行く。遅れるとうるさそうだし。
……あれ、これはもしかして……フラグ?
嫌な予感を無視するとたいてい悪いことが起きるよね。これは……まずい!
「シルト!トルシィ!」
しりとりか!
「待て!行くな!」
「もうがまんできないよー!」
「テスカも早く!」
もう俺があいつらのところに行くしかないか!
粒子を身体にまとわりつかせて……
「きゃああああああ!」
浮いてからおもいっきり加速!これで粒子は崩れるが俺は射出される。人間大砲だ。
「……見えた!あれは……熊!?」
この辺に生息している一番強い魔獣じゃないか!昼間は出てこない筈なのに!
気絶しているトルシィの前に粒子で減速して降り立つ。まずい、こいつは今の俺のレベルじゃ勝てない!
ここは前世で戦った時強かったシルトに任せよう。
「シルト!倒してくれ!」
「むりだ!わたしもいっかいしんでてんせいしてるからちからがない!」
「……マジかよ」
熊は突然現れた俺を警戒しているようだが、もう俺たち全員を粒子で逃がす時間はない。こうなったら……
「シルト!トルシィを連れて村に戻ってギルドの人達を呼んできてくれ!」
「でも!それじゃテスカにいが!」
「大丈夫だ!策はある!いいから早く行け!」
「……わかった!しなないでね!」
「おう!」
……行ったか。
策なんて無い。シルト達を逃がすための嘘だ。でも、負けるつもりも無い。
「かかってこいや!この熊のプ○さんが!」
読んでくださってありがとうございます。
うわあ!ピンチだ!
ヤバイなぁ!これじゃ主人公やられちゃうよ(棒読み)