デジャブ、というより同じこと起きてるよね…
王宮での受け取りはお断りしますという旨の手紙を書いて送ったのはいいものの、無駄だった。
『王命ですので…』
手紙を送った翌日には返信が届いているという速達ぶり。しかも朝だ。もうこれ以上返信見たくない。どうせ王宮に来いの一点張りだろう。一庶民が王族に逆らえるはずもなかった。権力者が恨めしい。
この前いきなり拉致されたときですら恥ずかしかったのに、さらに私に醜態をさらせとでも言いたいのでしょうか。私は王宮に着て行ける服がない。だからこそ弁償に結果的には仕立ててもらうようことになったのに、これでは本末転倒ではなかろうか。
今の私の恰好はポニーテールに髪をまとめ上げ、白衣を着ている。白衣の下はTシャツにスキニ-パンツ、つっかけのサンダルを履いている。
洋服がこれしかない。どれもラフなものばかりで正装の服は一着ももっていない。これで行けというのか。どうしよう。本当にどうしよう。
だから行きたくない。おまけに国王にまた会えだとふざけるな!厄介ごと面倒なことはお断りだ!
私ではなく、専門家を呼びなさいよ。私では畑違いもいいとこでしょうに。
一人でずっと悶々としているのだと思っていたが、気が付くと隣にはクロウェルがいた。気配を消し過ぎていて分からなかった。いつも見張られているから見られていても恥ずかしくはないが、いつの間にいたのよ。
「悶えているのは構いませんが、そろそろ迎えが来ますので準備してください。」
「悶えてはいないわよ!誤解を招く言い方はやめて。」
クロウェルのニヤニヤは止まらなかった。この人に止めさせることができないのは長年の経験から諦めた。
「迎えが来るってどういうこと?本当に来るんかい。冗談ではなく?」
「手紙はきちんと読みましょうね。」
とうっすら寒気を催すような笑みで言われた。だっていくらなんでもこのようなみすぼらしいたかが庶民が直々に呼び出しくらうって普通ありえないだろう。犯罪犯したならともかく。
「ということで、来てください。」
とクロウェルに引きずられるように連れて行かれた。あーれーこの前もこんなことあったなあ。なんだかむかつくほどの美形を思い出してしまう。ドナドナドーナーが頭のなかでリピートされてしまうのもいたしかたないだろう。
からからという車輪と思わしき音と蹄の音が解放された窓の外から聞こえてくる。
玄関に出ると小型ながらも手入れがきちんとされている馬車が到着していた。流石王家。馬車にいたるまで惜しみなくお金が使われているのがわかる。国の威信でもあるから上質なのはわかるけれども、私ごときを迎えるのには立派すぎだろう。
御者は馬車の扉を開けると(開け方さえ上品すぎる)、中から人が降りてきた。まさか。まさかまさか。
眩しすぎるほどの金色の髪で蒼い瞳。簡素な服をきているが、上物なのは私でもわかる。
「お久しぶりです、ホルス嬢。」
「お久しぶりです。…カールネスト公爵様。」
デジャブすぎる。
「忙しいはずの公爵様がどうしてここにいるのでしょう。」
「まあまあ。大人の事情っていうことです。」
迎えにいくのに大人の事情も何もへったくりもないだろう!それに私を子供扱いするような発言は頭にくるが、言ってしまうとますます子供っぽく見えるので溜飲を下げた。
「とにかく早くこないと王女殿下が荒れてしまうので、急いで来てほしい。」
優雅に手を差し伸べてくる。本当にキザったい動作が似合うなと思いつつ、応じないわけにはいかなかった。こちらとしても痛く見えるけど気にしたら終わるだ。一般的乙女なら脳内爆発するだろう。変人変態だが誰もが認める美形で、お貴族様様で、将来有望株なこの人に御姫様扱いされたら皆喜ぶ。しかし私はそんなものに騙されない。この人の中身を知っているからなあ。
だんだんこの人に敬称で呼ぶのも最近はおっくうだ。
話が逸れたが、とにかく早くいかないと王女殿下が暴れるのは容易に想像できるから行かざるを得ない…
ってちょっと待って。本当にこんな恰好で行ってしまったらよくないだろう。
「ちょ、ちょっと待ってください。行けません。本当に無理です。」
慌てて手を引こうとしたが、大人の男の力には勝てずぐいっと引っ張られてしまった。引っ張られても乱暴ではなく、全然無理やりには見えないのは本当にむかつく。
「ああ、裏口から入るし誰にも見られないから安心して下さい。」
ここまできてしまったら仕方がないか。腹をくくろう。おとなしくなった私を先に馬車に乗せた。続いて公爵が乗ると、
「今日は返さないので。王宮で泊まらせるからよろしくお願いしますね。」
とクロウェルに言った。
「は?どういうこと?聞いていないわよ!」
私の憤りは虚しくも扉が閉められた。そして直ぐに動き出した。座り心地も良いし、振動も少ない。快適ではあるのだが降りられなくなってしまった。窓の外ではクロウェルがいってらっしゃいませと言わんばかりに深々と礼をしている。使用人なのに主が連れ去られても見送るってどうなのよ、と言いたい。
「泊まるってどういうことよ。」
釈然としないから目の前にいる公爵に八つ当たり気味で聞いた。
「文字通りそのまんまですよ。今日一日で終わりそうもないから、泊まっていけとのことらしい。」
ただいまの時間は朝。
なのに今日中に終わりそうもないというのは何するつもりだ。
「俺としてはもう少し長くいてもいいと思うけどな。」
これには唖然とするしかなかった。口調が俺様に変わっているし、身の危険を感じるような色気のあるフェロモンが漂い始めた。
確かに王子殿下と一緒にいる時はこんな感じで話していた(色気はともかく)けど、今それをここで発動させるの?!
少し怖気づいた私に気が付いたのか公爵は意地悪く妖艶にほほ笑んだ。
もうこの人嫌だ!と叫ばなかった私えらいとほめたい。
た、大変お待たせしました。亀更新で申し訳ないです。
ブックマーク、お気に入り登録有難うございます。文章能力低いですが精進しますので今後ともよろしくお願いします。
少し公爵殿がロックオンしてしまいました。次話以降もっとアタックしていく予定…
王道な展開になりますがあしからず。




