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手紙

「へい、毎度あり!」

「有り難うございます。お陰様で食費が浮きます。」

「贔屓にしてもらっているからよお。安くしたる。まあ最近は作物も育ちが良いらしいしから、豊作だし、味も保証する。本当にアリス様様だ。品種改良のお陰だからなあ。」


がっはっはと八百屋の店主は豪快に笑った。


朝の商店街。リリは食材を買いにやって来た。リリの持つかごの中は生鮮食品で一杯だ。

それを見かねて、

「そんなに沢山持って大丈夫か?」

八百屋の店主は少し心配そうに見てくるが、

「これくらいのことできなければ働けませんよ。お気遣い有り難うございます。」

とリリは軽く頭を下げた。


「大変なことで。あ、そうそう。」

と言葉を切って店主はキョロキョロと周囲を見た。そして身を屈めてリリに近づく。


「こんな噂があるんだが、最近はモードレー領が物騒らしいぞ。王都にもその波紋が来ている。豊かな土地だったにも関わらず土地がまた荒れてきているらしい。いやーまた厄災がくるのかってな。ホルス家も他人事ではないだろう?彼処は。嬢ちゃんが心配でよ。」

モードレー領。この町の住民はホルス家とモードレー家の間にあった事件を知らない者はいない。


まさか、またあの地が不穏な動きをしているというのか。

一瞬青くなる。

「女をかっさらっているとか、血生臭いとかいう噂もある。商人から聞いたがな。」

「それは本当ですか?」

「噂だから確証ないがな。もう嬢ちゃんの悲しい顔見たくもねーし、この町は皆嬢ちゃんの味方だからな。何かあれば言ってくれ。できることはする。」


直ちにクロウェルさんに確認とらないと。それにしてもお嬢様は皆に好かれていますね。流石です。これだけの人を味方につけれるのはなかなかできませんよ。

「ありがとうございます。」

言うと直ぐにリリは坂を駆け下りた。

「荷物気を付けろよー。」

後ろから店主の声が聞こえてくる。しかし急がねばならない。


モードレー。嘗てアリス様のお母様が働いていた領地。ホルス家当主はモードレーの不正を暴こうとしたが、お亡くなりになってしまった。その頃からモードレー領は脱税、麻薬流通、マフィア、売春等と犯罪が蔓延していた。

しかしホルス家当主様があと一歩というところで逃げられてしまった。


暫く大人しくしていたのだが、また活動を始めたらしい。


バタバタ家に戻るなり、

「クロウェルさん!」

つい大声をだしてしまった。勿論裏口から帰ってきているし、お嬢様は実験室に籠っている時間なので気づかないのだが。


「侍女が大声を上げるとは。」

はーやれやれと言いそうな溜め息をつきながら手すりを磨く。彼によって磨かれた手摺は光沢を放っているが、使うクリームの量がが少ないのですぐに無くなることはない。執事だが一番家事もできる。


そして注意をしていても磨く手は止めない。

「あらかたモードレーに関することでしょう。まだ全て把握しきれていませんが、怪しい行動起こしているのは知っています。」


何故モードレーについて聞きたがっていたのを知っていたのかは不明だが、そこを突っ込んではいけないと警鐘ランプが点灯する。だいたい王家の諜報員を脅すなりして手に入れたのだろう。


「お嬢様はご存じで?」

お嬢様は酷くモードレー領を嫌っている。正義の塊みたいなあの方が知れば、無謀に走ってしまうだろう。

「まだ知らせてはいません。もう少し情報がないと不安にさせてしまうだけですから。特にあの地については慎重にせねばなりませんから。」

流石に長く勤めているだけあって、その辺りの気配りが出来ている。


それにしても百戦錬磨で戦闘力も高く情報通でもあるクロウェル師ですら、とても警戒しているとは本当に厄介な相手だとつくづく思う。


「先ずは掃除してください。後は玄関のフロアだけですのでよろしくお願いしますよ。」

「わかりました。」

もう殆どを終わらせてしまったようだ。とてもスピーディーだが雑に掃除をしているわけではないから凄い。私も早く取りかからないと。食材は調理室において、急いで掃除道具をとりに行った。


だがそれは未遂で終わる。

チリリリリと裏口のチャイムが鳴ったのだ。

誰も来る予定はない。

訝しげに裏口の扉をあけると、配達員が来た。

「お届け物です。」

渡されたものは高級な封筒だと一目でわかる。王家の紋章て蝋をされた手紙だった。



その頃アリスというと。

「むー。これは失敗かな。まただよこんちきしょー。」

頭をガリガリかきながらデータとにらめっこしている。婦女子が使う詞ではないものが混ざっているが、気にしない気にしない。一言付け加えさせて頂くと断じて腐女子ではない。


「もう一度データを取り直そう。」

席を立って顕微鏡に向かい合う。机は綺麗に整頓されて…というわけではないがそこまで散らかってもいない。ただ、ビーカーや溶液が整列され、手元には顕微鏡と実験ノートが広げられている。

実験室でずっとこもって作物の品種改良をしているのだ。

「もっと効率的に出来ないかな。」

とぶつぶつ呟きながら操作を続ける。

「いっそのこと機械化を図った方がやり易いのかな。その方が精密に実験できそうだしなあ。」

機械化機械化機械化機械化機械化機械化機械化…

「ああー、もう!」

とどなり散らしても何も変わらない。

なんだかもう集中力が途切れた。一度顕微鏡から目を離した。


けれどもやらないといけない。


よし。

気を取り直して向き合おう。


と顕微鏡を覗こうとするとノックの音がした。

「お嬢様。すみません。手紙が来ました。」

「後にしてくれない?」

人がやる気になった瞬間邪魔されるのはイラッとする。リリに八つ当たりみたいに言ってしまった。ごめん。

「王室からの手紙ですので。」

何故に来るのかは不明だが、見なければならない。訝しげに白い封筒を見つめるがどちらにしても封を切らなければならない。また面倒なことに巻き込まれるだろうか。


王家からの手紙は厄介者だ。宛名がなくとも国内の場合、蝋封の印のみで通達される。だから王家の誰から来たのか不明なのだ。


仕方がないからリリから手紙を受けとる。ペーパーナイフで蝋を切り落とし、中を開いた。


短いし、中途半端で申し訳ないです。

今後とも没落よろしくお願いします。

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