帰りにて
どうもこうも、貴方は紳士ではなかったのだろうか?私の勘違いだったのか?
引きずられながらも思うことはただ一つ。
何故私は引きずられねばならんのだ!
文句を言いたいところだが、仮にも王宮。誰が見ているのか聞いているのかわからないからそんなことはできない。
長い長い廊下を歩き玄関口までたどり着いた。流石に公爵殿も手を離した。
「また呼び名が戻っていますよ。」
頭が追いつかなかった。何を言われているのかわからなかったが、どうやら私が公爵殿と言うのが気になるらしい。
冷汗をかいた。
「あーはいはい。すみませんねカール殿。」
不貞腐れてつい地が出てしまった。明らかに不敬であることは百も承知。
隣に立っている公爵殿を見るとクックッと手を口元にあてながら笑っていた。
「あー、貴女といると面白くてしょうがない。」
せいせいしたのか笑った後の公爵殿はいつも以上に輝くオーラを放っていた。
「私に群がる女は皆匂いの強い香水をつけておべっかかいていますから、嫌いなんですよ。」
とにこやかな笑みをたたえるが、とても黒い。
「紛いなりにも私は女ですが。」
女が嫌いならどうして私を引っ掻き回すのでしょうかね。謎でしかない。
「物事に例外は付き物ですよ。」
馬車の扉を開いて、彼は私に手を差しのべた。私が馬車に乗り込むと、続いて公爵殿も乗った。
例外なんかちっとも嬉しくない。
窓の外はもう夕方。黄昏時。
紅い夕日が町を照らす。馬車の窓は小さいが、十分きれいに見える。
建物の影と紅のコントラストは壮観だ。
私は暫く黙って外の景色を見ていた。
珍しく目の前に座っている男も静かにしていた。
行きと違って帰りは大人しい。
馬車の速度は徐々に落ちて、私の家に着いた。馬車だとあっという間に着く。
私は馬車を降りたら、彼も降りた。
別に乗ったままでよかったのに。恐らくは彼もそのまま帰るか、王宮に行くかの二択だろうにわざわざ一度降りるなんて私なら面倒だ。
「今日は洋服の件ありがとうございました。」
いろいろ想定外なことが起こったが、洋服に罪はない。
一応丁寧に別れの挨拶をして、公爵殿は馬車に戻るかと思いきや、奇人変人のとる行動は読みきれなかった。
「ええ、また。洋服ができしだい届けます。ああそうそう。次公爵殿って言ったらこれではすみませんから。」
夕日が照らす彼の横顔は何時もよりも妖艶で、少し見とれてしまったのが不覚だった。
顔が近づいたと思ったら私の唇に柔らかい感触が一瞬して、リップ音がなったのだ。
中身がおっさんな私でも何をされたのかくらいわかる。
「ではまた。」
と悪戯が成功したみたいににやりとして馬車に乗った彼は颯爽と離れていった。
はじめてのことにボウとしながら立ちすくんでいたが、頭が正常になると怒りが沸々とわき出てくる。
「何やってんだあの変態はー!!!!あのすけこまし!むっつりすけべ!!!」
私の叫びは虚しくも闇に消えた。
一方王宮の執務室では。
「え。これやるの。」
げっそりした顔で自分の父をみるとみたことのないくらいキラキラした笑顔を向けてきた。
「この法案はお前がやれ。カールと相談しながらでいい。あとはもうそろそろあれの時期だからな。ご婦人方の案内はエル、頼んだよ。」
「どうせドレスも作っておけって言うだろうに、さらに仕事とかふざけんじゃない、って思うけれど仕方ないか。」
彼女はガックリ項垂れた。
「そういや、ホルス嬢とカールはどうしたのだ?先程のあやつの行動が驚きなんだが。」
フムと顎に手をあてた。思い出すこと数分前。いきなりカールはホルス嬢の腕を掴み、急に部屋を出ていった。
基本カールは令嬢に乱暴なことはしない。するのはこの王子王女だけ。幼馴染みだからプライベートだとわりとこうなる。
まあ本人たちもプライベートまで幼馴染みに敬語を使われるのは嫌らしい。
そのカールが。まさかホルス嬢を引きずり出すなど衝撃としか言いようがない。いつものあやつは猫被って適当に女性をあしらうのに、彼女は気になるようだ。
これは面白い。
「恋愛話もあいつが先かよ。」
とライバル意識のある王子は不満そうにしている。やはりそういうことか。
「お前ももてると思うが。」
「パーティーで引っ付いてくる女はろくでもないやつばかり。」
はあとため息をつく。確かに金と権力にまみれた人が多いのは否定しない。
「まあ努力することだな。さあ仕事に戻れ。」
と二人を促すと、そそくさと出ていった。
二人の気配が遠ざかったところでパンパンと手を叩く。直ぐにノックの音と同時に部屋の扉が開いた。
「あいつは元気か。」
国王よりも少し若い男が入ってきた。
「師匠のことなら相変わらずですよ。まさかあの屋敷に侵入して情報を探れとでも言うのですか。」
その男は少し眉間に皺を寄せた。
「よろしく。」
「情報提供のためにあそこはよく行きますが、侵入は無理ですよ、陛下。」
と震えながら慌てて拒否する。
「まあ、そう言わんと。」
けれども国王が折れることはない。
「殺される絶対師匠に殺される。…失礼しました。」
半ば放心状態で男は部屋を出ていった。殺されるだの処刑されるだの不穏な言葉を呟きながら。
二人しか使用人はいないが、あの屋敷の警備はとても厳しい。なんといっても伝説のあやつがいるから最もなことではある。ただあいつも年取っているから多少は衰えると思いきや、まだまだ現役で活躍できそうなくらい動ける。
楽しいことだなと一人部屋の中で国王はニヤニヤした。
文が稚拙ですみません。訂正ちょくちょくしますがよろしくお願いします。




