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執務室にて

あああと頭をかきむしりたい衝動を抑えつつ、耳を傾ける。

「この国の教育改革がしたくてな。そなたのが開いている私塾の話を小耳に挟んだから、是非とも聞いてみたくてな。」


「今まで歴代の王達はそのような改革をしようとは聞いたことがありませんが、いきなりどうしたのですか。」

そう。この国で少なくとも教育に関する法案はない。改革しようと提案した人もいなかった。


何故か。

一応この国にも教育機関が無いわけではなく、幾つか王立の学校が存在する。

それで十分と今まで考えられていたからだ。


しかしこれらの学校はかなりのお金がかかるため庶民は入学できない。おまけに入学するにあたり、入試を突破しなければならない。そのためには勿論対策をせねば突発できない。その為、大体家庭教師や親等が勉強をみる。そういう人たちはは貴族や裕福な商人の家しかできないのだ。

つまり金持ちしか入学できないのと同然である。

それに入試を突破したとしても入学金やら授業料等でお金がかかってしまう。


お陰で貴族や裕福な商人の子供しか学校にはおらず、庶民は殆どいない。


この状態を変えようとしてもかなり無理があるが、それをすると言う。


「身分問わず学べる環境を提供したい。庶民だから勉強できないというのはもう時代遅れもいいところ。それにそなたはルーエという実績がいるじゃないか。」

確かに他の国では既に教育制度を変えている。庶民だから勉強できないということは無くなりつつある。

それは知っていたから言うのは想像できていた。しかしルーエの話までだしてくるのかこの人は!貴族でもないし、役職もないのにも関わらずだ。


普通なら考えられるだろうか。私は否と思う。


そんなことはどうでもよくて。


「彼は本当によく勉強していましたから。」

笑って誤魔化したいところだが相手はいかせんあの国王。

「私は週に3日私塾を開いています。金額は庶民でも払える位の金額に設定しています。時間と日にちを決めていれば子供たちも家の仕事との両立ができますし。まあ本気で勉強したいなら時間は足りないので、予習復習は必ずやってもらいます。あと独学も。



私がしていることはそれだけですが…」

一度に全てを話し出した。本当にこれだけしかやっていない。

「こんなもので宰相補佐にまでなれるとはとうてい思えんが…」

ボソボソと話す国王の声は丸聞こえ。


すみませんねこんなもので。


でも本当にこれだけだ。


「子供たちが興味を持たせるように授業を面白くすれば、あとは彼らが自分で勉強します。図書館もありますから。

ただ王立と違って、魔法だの剣術だの、そういう教育はしていません。私自身使えないので。だから全てを座学に注ぎ込みます。実際座学が出来ればどうにか生きていけますから。」


「魔法教育をしていないのか!」

心底驚かれても…いいのではないでしょうか国王様。

「王立はあれやこれややりすぎです。まあいろいろやらせるのも良い経験になりますから否定はしません。ただ、庶民も勉強をと言うならまずは座学のみに絞るべきかと思います。いきなり王立と同レベルの教育をしようと思っていても、人手不足でしょうし。金銭的にも抑えられます。」


本当は私もいろいろしたいところだがこれが限界なのだ。


ふーと一息ついて紅茶を頂く。流石王宮。紅茶も一流のものだ。いかんいかん。話を反らした。


カップをソーサーに戻すと国王様は立ちかあがった。

いかがなされたかと思っていると、私の両手をがっちり握った。

「ありがとう!大変参考になった!」

とこの状態でブンブン激しく振った。

「しかしこのような改革をはじめとする行政改革をすれば反対派の方の反発も強くないですか。」

率直に言ってみた。とても無礼かもしれないが。国王は手を握ったままではあるが一旦腕をふるのを止めた。

「まあ踏ん張りどころではある。今日は有意義な時間を過ごせたよ。ありがとう。」

と国王はまた上下にブンブン腕をふった。


ここで、

「陛下、そのくらいにしてあげてください。」

一度も口を開かなかった公爵殿がやんわり仲裁してくれた。珍しく助けてくれた。少し腕がもげそうで痛かったのだ。国王様、腕をふりすぎです。

「早速書類を纏めておきます。来週あたり、この議題の会議をしましょう。」

と公爵殿は国王様に向かって言った。

「手配を頼む。なるべく穏便にな。反対派の連中が何するかわからんからな。」

「承知いたしました。」


駆け出しは良くなりそうだと思った矢先だった。


こっそり執務室を出ようとした二つの影。


「逃げるでないぞ。」

大声を出した国王様。ビクッとすくみあがった。

公爵殿がまた再捕獲し、椅子に座らせた。


「これでも大人か!いい年こいた子供みたいなことをしよって。全く。」

がみがみ説教を始める国王様。

「御免無用かと思ったから。」

少し引き気味の王子殿。国王様の勢いに押されている。

「これからしてもらうことがあるから二人は残れ。アリス殿、今日は大義であった。カール、すまんがアリス殿を家まで。」

とてきぱき指示を飛ばすが甘えられない。


「いいえ、私のことはどうぞお気になさらず。」

と断るが、がしりと公爵殿に腕を捕まれた。

捕獲するの得意ですね!と突っ込みをいれたい。いくらなんでも一応レディ(ただし中身はおっさん)なんですけど。こんな掴みかたはないでしょうが。


「送りますから。」

とにこにこしているが、有無を言わせぬ威圧感を感じる。腹黒策士野郎め。けれども抵抗するのは良くないと警鐘が鳴る。

それでは失礼しますと引きずられるようにあっという間に執務室を後にした。


って私、別れの挨拶していない。

まずいよ。

「っっって公爵殿!私挨拶していないのに引きずるように連れ出さないでください。」

と抵抗を試みるも彼には勝てない。

「平気ですから。」

と平然と言う。


うー、流石にこれは失礼にあたるだろ。いくらなんでも帰りの挨拶なしに出るほど私は非常識な人間ではない。これでも最低限の常識は持っている………つもりだ。


私の思いは虚しくも公爵殿に届かなかった。




お久しぶりです。皆様には大変お待たせしました。

これからもどうぞよろしくです。

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