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仕立て

「それにしても俺の名前をしらない人がいたんだ。」

やや驚きぎみに彼の瞼が上がった。知らないのは仕方ないでしょう。なんせ社交界にはさらっさら興味がなかったのだから。


「俺はハーベルト・ナタリウス・フォッカーシャだ。一応この国の第一王子。」

この自己紹介には仰天した。公爵殿についても同様だが、本音は雲の上の人だ。名前は知っているが顔と一致しない。いや、顔すら知らないから一致しないというのはいくらか語弊がある。厳密にいうと名前は聞いたことはあるが顔は知らない。


今までの態度は無礼だったのではと今更考えていると、

「公式の場ではないから気にしなくていいですよ。むしろ今よりもっと酷くても大丈夫です。」

公爵殿は満面の笑みをたたえた。もはや魔王降臨したかという勢いの黒さが全身から滾っている。


「ええ。いつも私に仕事を押し付けるようなアホはなにされても文句は言えませんね。」

「ちょっと待て。仕事を押し付けているのは俺ではない!断じて違う!」

と抗議しても公爵殿は聞く耳もたず。今までのストレスを発散するかのようだった。それにしても今日の公爵殿は今までで一番ブラックだ。私の身の危険を感じるほどに黒い。おまけに気のせいか冷気を感じる。何故身の危険を感じたのかは謎だが。


「男は所詮馬鹿でお、こ、さ、ま、よ。ほっときましょう。」

そい言ったのはこの女性。

「私は仕立て人のエルファンフォード・ナタリウス・フォッカーシャ。今日は貴女の服を仕立てに来たわ。よろしくね。」

「王女様ではないですか!仕立て人ってどういう…」

「趣味でやっているの。『ナイトメア』っていう洋服を仕立てるお店も経営しているわ。」


この話は聞いたことがある。変わり者の王女様が洋服の店を経営している話は割と有名。少し高いけど丈夫で着やすく、デザインがよくて庶民から貴族まで年齢も上から下まで客の層は広い。ここまで広いと大変だと思う。そして王室御用達でもある。だから人気がある。


私は店に一度も足を運んだことはないが、近所の町娘が主に一張羅の服を買うときに行くところらしい。もちろん男性陣も右に同じ。


「そこでギャーギャー鳴いてる殿方は早く部屋から出て行って。」

丁度王子の背中がいい具合の距離にあったものだからエルファンフォード様は足蹴りをそこへくらわせた。


「おっとっと。 兄に対して足蹴りで追い出さなくてもいいんじゃないか。」

つんのめりそうになりながらも転ぶことはないように堪えながら言った。ピンヒールの靴ではないらしく背中のダメージは小さいようだ。


これがピンヒールだと考えただけでも恐ろしい。


ピンヒールだろうがそうではなかろうが、足蹴りするなんて普通のお嬢様はしない。というよりする必要は無かったのでは?ややお転婆なのかと思う。

「空気の読めない馬鹿と周りに気を配れないアホはクズですから。カールも同じでしてよ。」


ここまで言い切る王女様はなかなか凄いと思う。


二人とも顔を若干引き攣らせながら部屋から出て行った。出て行ったのを満足そうに見てから私の体へ視線を移動させた。


「うん。いける。あまりしないけどこの子なら…」

とぶつぶつ呟いている。なにをするのか怖い。そもそもブランド会社のオーナー兼王女様を連れてこなくてもよかったのに。王女様はメジャーをとりだして


「なるべくフィットしたスーツのほうが女の子らしさがでるからヌード計測したほうがいいわね。ということで全裸になって。」

にっこりほほ笑んだ。言い方が率直過ぎる。どう返事すればいいのか、一瞬固まってしまった。


「女子らしさとかはいらないので、このままでお願いします。王女様。」

速攻で反論する。女子らしさなどとっくの昔に捨てた。私には無縁の代物だ。

「王女様は禁句。今は『ナイトメア』の仕事をしているし、個人的なところだから。私は二十歳だからアーシェともあまりはなれてないよ。」


けれども身分はとてもとても上なわけで怖れ多い。

「しかし、貴女は身分が上ですから…エルファンフォード様。」

「長ったるいからエルて呼んで。」


ポクポクポク   チーン


もし漫画であればこの効果音が描かれていると思う。

それにしても自分の名前を長ったるいって卑下しますかね。確かに長いけれども吐き捨てるように言わなくてもよろしいのではありませんか。


「私には無謀な行為です。エルファン…」

言い終わらないうちに「天誅!」という言葉とともに身ぐるみ剥がされた。一瞬の出来事だったから抵抗すらできなかった。なにが天誅なのかは今一不明。


上の服だけでなく下着も剥がされた。いくら女性といえども初対面の人に裸は恥ずかしい。

「エルって呼んで。」

メジャーで測りながらもう一度言った。

「エ、エル様」


「様はいらない。同じこと次言わせたら、スーツのデザインどうしようかなあ。」

つい先程も同じことを公爵殿にも言われた。似た者同士のオーラを感じる。

「エル。」

「やっと言えた。友達になってほしかったのよね!可愛いし可愛いしだって可愛いし。」

嬉しそうに笑った。私何かしましたかと言いたい。思いあたる節はない。小首を傾げるとエルは顔をそむけた。どうかしました?よく見ると鼻の辺りを手でおさえている。






彼女の手は背丈からスリーサイズまでありとあらゆる所を測っている。一般の令嬢に比べたら貧相な体をしているから隅々まで見られるのは恥ずかしい。

いや、貧相ではなくても恥ずかしいと思う。客観的にでも言わないと恥ずかしくて…。


一応これでも女は捨ててないよ!いつもは中身おっさんだけど。


「測り終わったから服きていいよ。」

シュとメジャーをしまった。エルは手際良く手を動かしていたから早く終わった。流石仕立て人。私はソファにかかっている服を手に取り急いで服を着た。

「とても細いわ。少しくらい太ったほうが良いわよ。」

麗しい顔を顰めた。


「そこまで細くはないと思いますが。」

「いいえ。胸とか悲しいくらいよ。」

言ってほしくなかった。貧相なのは自覚していますよ。ついこの前も生徒にも言われたから。


「とりあえず仮縫いまで少し待ってね。」

「はい。」


返事をすると、彼女は男性陣を呼びに部屋から出て行った。エルがいなくなると何もしていないのにどっと疲れがでてくる。この後もまだここにいないといけないのかと思うと更に溜息がでる。早く終われ終われ。


帰りたいな。


「早かったな。若干顔が赤いが大丈夫ですか?」

部屋に戻ってきた公爵殿が言った。


あれだけ恥ずかしい思いをしたら赤くなってしまうのだろうがいい加減冷めてほしかった。エルはクスクス笑っている。


「どうせこいつがなんかしたんだろう。」

呆れたように王子殿が白い目をエルに向けた。

「だって可愛いですから。カールは良き理解者だと思いますが。」


何故公爵殿の名前がここで出てくるのかと不思議にしていたら、


「お気持ちは分かります。」

またしても爆弾発言投下した。貴殿方の目は節穴ですか?私が可愛い?



そんなことは天地がひっくり返っても絶対にあり得ない。


「お似合いのスーツを仕立てるから楽しみにしてね。」

とエルに両腕を捕まれて鼻息荒く迫られたら頷くしかなかった。彼女の勢いに圧されそうとしたら公爵殿が彼女の襟を掴んだ。


「引いているから止めなさい。」

「私の対応が酷くありません?」


大丈夫か心配している私に公爵殿は

「この二人は幼馴染みだから平気ですよ。」

と言った。


「他の淑女ならゼッッッッタイしないことをとうして私にするのかなあ?」

エルはまた足蹴りを繰り出そうとするが止まった。


「灼熱の焔 この世の全て 応じよ我友よ 」

詠唱すると魔方陣から長身の男性が出たきた。これは召還魔法か。初めて見た。


「な、な、な、何よ!自分はオールマイティーな召還魔法を使えることを彼女に見せたいわけ?自慢?それとも何?そもそも何で召還魔法なんか使うの?」

エルは憤慨する。顔を赤くして目の前にいる精霊と対峙していた。


魔法は一人につき大体一つか二つくらいの属性の魔法しかできない。つまり風の属性の魔法が使えるなら水関連や、火関連等他の魔法は使用できない。しかし、召還魔法はどんな属性の精霊や、魔族等召還できるためオールマイティーな魔法と言われている。

けれどもオールマイティーな魔法だから召還魔法が使える人はごくわずかしかいない。


「少々うるさいですからね。そりゃ、黙らせるためにきまっているでしょう。」

しれっとカールが言った。わざわざその為だけに召還魔法を展開したらしい。魔力が高くいらっしゃって羨ましい限りだ。


何故わざわざ召喚魔法を発動させたのか不思議に思っていると、

「イルミナティにコンプレックスあるからこいつを出すとまあエルの暴走は止まるわな。」

と王子が私に教えてくれた。

「イルミナティって誰ですか。王子殿。」

「カールが今召還した太陽の精霊。昔、エルと喧嘩してそれ以来あいつのこと苦手になったらしい。」

何で喧嘩したのかは当人同士しか知らないことだがと続ける。



「それにしてもカールは召還魔法に氷の属性の魔法まで使えるから本当に癪だ。」

少しイライラしながら言った。

「王子殿はどのような魔法を使うのですか。」

気になって尋ねてみると、

「風と火。相性は良いが、カールには勝てない。剣も使えるし魔法も強い。頭も良いから完璧な奴だよ。」

王子殿は悔しそうにエルと口喧嘩するカールを見た。


「魔法が使えない私は使えるだけで羨ましいですよ。」

呟くように言うと王子殿は私を見下ろした。


「魔法が使えないのか。」

「ええ。でも使えないのは別に珍しくもないでしょう。」

魔法が使える人と使えない人が存在している。魔法が使えた方がいろいろ有利な点は多いが、差別が酷いというわけでもない。私は使えないが魔法工学の分野ではまあそこそこ修めているから、町の皆の役にはたっている。


魔法工学ってその名のとおり魔法と科学を組み合わせたもので、魔力の少ない人でも使えるように魔法具を作る学問のことね。使えなくても理論は学べるから。


私は一人回想にふけていた。

「ふーん。そうか。 ところでさ王子殿は止めてくれないか。皆はヴィルって呼ぶからそう呼んで。」

今日で三度目のお願い。いい加減鬱陶しい。たとえ私が嫌だと言っても前者と似たり寄ったりなことを言われるだけだろう。


「分かりました。」

直ぐに頷いた。





愚痴になってしまいました。


文章下手です。も、も、申し訳ございません!


でもやっと書きたかった魔法が書けて少し満足感があります。

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