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嫌な予感

「先生!」

わらわらと子ども達が集まってくる。

「うわー美味しそう!」

パンとスコーンの入ったバスケットを見て歓声を上げる。

「もう。仕方ないわね。先生、パンとスコーンのセットとアロマ下さい。」

後ろにに並んでいた母親方が買いに集まる。

「毎度ありがとうございます。」

お金を受け取り、商品を手渡す。


「化粧品は売っていないんですか?」

「薬草が足りなくて。次くらいには販売できると良いんですけど。」

薬草が採集できないと化粧品はできない。化学薬品でも作れるけど人の肌に影響しやすいものはなるべく自然の物を使うようにしている。


「先生の化粧品は本当に効果があって肌にあうから、気に入っています。」

「ありがとうございます。」

私の化粧品は好評みたい。とても嬉しいことだ。



「おう。先生。いつものやつを頼むぜ。」

体格の良い男が数人集まって来た。

「湿布バージョンも開発したけどどうする?」

「そいつぁ、悩みどころだな。」


「最近は順調かい?」

「おうよ。仕事は順調に入っている。ただ、目玉商品がマンネリ化したから新商品も取り扱わないとまずくてね。」

「そうか。良かった。」

自分で考え、行動するのは大事な事だ。前までは死んだような目はもうしていない。


「こうしていられるのも先生のおかげだなぁ。」

男どもの中から聞こえてきた。


そう。この男達は私が土木の仕事を紹介したから今職につけている。その前は所謂不良でとても荒れていたからどうにかしてほしいと思い説得して今現在に至る。説得するにも荒っぽいし、苦労するからクロウェルにも手伝ってもらったけど。


まあ町の活性化に不良がいたらそもそもできないし。

はっきり言うと邪魔だった。けれども彼等に言って怒って暴力沙汰になるのは面倒だから就活してもらった。


お陰様で不良がいなくなり、治安が良くなった。良いことではないか。

で、この男たちが買う商品は冷却水。冷却水と言うより制汗剤と言う方が分かりやすいかな。


「両方買うわ。」

「毎度ありー。」


うん、口調がおばさんか化しているよね。彼奴らを見るとついそう言ってしまう。残念とか言わないでよね!悲しくなるから。これでも一応十代女子だし。


「お嬢様。口が…」

隣にいるクロウェルが言った。突っ込まないでと言いたい。

「老けた言い方ですね。だからそんなことすると婚期逃しますよ。」

リリまで。しかもクロウェルよりもはっきり言ったよはっきりと。

「結婚はどうでも良いけどリリ、少しはオブラートに言おうよ。」

「これでも柔らかい表現だと思いますが。」

この人黒いですね。Sですよ。


「リリも婚期きているから余り言いすぎはよくないと思うよ。」

「お嬢様に比べたらましです。」


これに周りがどっと笑う。私もついつい笑ってしまった。そしてふと思う。ホントにこの町も明るくなった。数年前の混沌とした町とは思はないくらいに活気がある。



「先生、あの魔法を見せてよ!」

子ども達からのリクエストがきた。この世界には魔法が使える人はいるが私は使えない。

「私は魔法は使えないよ。」

と少しおどけて言って見ると、

「嘘つき!あれはどう見ても魔法だもん!」

と子供たちが一斉にワイワイ言い始める。収拾がつかなくなりそうだ。ああ、はいはい。見せれば良いんでしょう。クロウェルに商品を頼み、家から薬品と水の入ったバケツを持ってくる。


「はい、下がって下がって…。それでは例のあれを始めますよ~。」


薬品を置いてマッチの火を点火させると、


パンパンパン


乾いた音と共に色のある火が空に広がる。

「すげえ!」

周りから歓声が上がる。


いくつか点火させた。するとお礼にお金をクロウェルに渡してくれる。無料で見せるにはコストが少しばかり高いのでね。

火薬は個人では基本扱うことが禁止されている。だから資格が必要なのだ。私はその資格を持っているから大丈夫。火薬を販売するにも規制が厳しく、そのため値段が高い。少しでも集金しないと買えなくなる。


まあそれでもこれはとある平凡な一日の始まりでしかない。

ごく普通の日常の一コマだ。


しかし



それはつかの間だった。


タイミングを見計らったとしか思えないタイミングに奴が来た。


「面白いことをしていますね。」

聞き覚えのある声に一瞬ぎょっとした。貴方はこんな所にいて良いのでしょうか。(いや、ダメだろう。)一瞬辺りはしらけた。だがその次には、


「きゃぁあああああ!」

女性客の歓声で鼓膜が破けそうなほどの音量に包まれた。


「カールネスト公様よ!」


穏やかな朝がぶち壊された。


何でまた来たのですか?穴に籠りたい。一気に私は冷めた。正直会いたくないです。


「昨日のお詫びをしに来たのですが、少々面白いことをされているようでしたから。」

にっこりと女性を瞬殺する笑顔で言った。その笑みに周りの奥様方含め女性達はノックアウト。


ただし私はそんな真似はしませんけど。というより出来ない。


「お引き取りください。朝市はまだ終わっていないので。」

私も笑顔を返す。


「お嬢様、やりますな。」

クロウェルがぼそぼそと呟いた。それは引きを取らないという意味ですか。それとも笑顔に騙されないところですかと聞きたい。


「では終わり頃はいつ頃ですか?」

帰ってほしいところ山々だけど、周りの目がある。皆興味津々で此方を見てくる。この状態では帰ってと言うと気まずいだろう。


「後一時間くらいだと思います。」

しぶしぶなのでぶっきらぼうに言ってしまった。露骨だと不敬罪だのなんやかんや言われるかと思ったが本人は気にしていない様子。少しだけ唸って、

「分かりました。また伺います。」

颯爽と去っていった。伺いに来なくていいから!

暫く周りは呆然としていたが我に戻ったのか、

「とうしてあんなイケメンでしかもお偉いさんと知り合いなの?!」


一斉に私を見てくる。


嗚呼、面倒だ。


「昨日、王宮のパーティーに呼ばれたから。」

ととりあえず答えておく。

「パーティー?すげー。」

「どうしてそんな所に?」


ガヤガヤ五月蝿くなる。


「他のお客さんの迷惑になるからその話は終わり。」

と言ったが、営業に戻るとまだ話が聞きたいとでも言うような目で見てくる。もう無視だ無視。いちいち付き合っていたら疲れるだけ。


「おいおい。買ったならここを退きな。邪魔になるから。」


男達のフォローもあってやっと静かになった。渋々という感じで。


正直客の流れが悪いから助かった。


こっそりお礼を言うと男達は顔が赤くなった。私は何かしただろうか?

人の心理はわからないものだな。今度図書館で心理学についての本を借りて読んでみようと思う。


心理学か。かなり人の心情がわからないから少し勉強してみても良いかもしれない。




一話あたりの長さがバラバラですみません。徐々に長くなる予定。



このあとは不定期更新になりそうです。


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