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07.幼馴染はインケンでヤンデレで深刻なので混沌中です-04

瑛視点


いつもよりも病みモード

流血注意。


短め。


「瑛、別れよう」


 そう言われて、一瞬で目の前が真っ暗になった。

「わかれる?」

 いつの間にか、あーちゃんは僕の膝の上からいなくなっていた。さっきまであった柔らかくて暖かいものの消失は余計に寒く感じさせる。寒くて、寒くて―空虚だ。タイミングを計ったように、孝太郎さんが帰ってきて、僕は家に帰らされた。後、数分でも孝太郎さんが遅かったら、僕はあーちゃんを……?


 家に帰って無言で部屋に入り、電気もつけずに過ごした。

(何が? 何がいけなかった?)

 今日はあーちゃんの愛妻弁当を食べて。加藤が邪魔をしてきて。あーちゃんの爆弾発言を聞いて。あーちゃんに不安を話していたら、家にいれてくれなくて。そしたら、そしたら――家には、すでに義弟(おとこ)がいて。

 何が『ボク、今日から織田レイになりました。改めて、初めましてお義姉さん』だって。気持ち悪い。それであーちゃんに近づけたつもり? 本気でっ、気持ち、悪いっ!

 空っぽの身体に黒いものが渦をまいて、僕はまた吐いていた。唾液が透明の糸をひいて……胃液の味がますます僕を突き落とす。不安なんて生ぬるい事じゃない。あるのは絶望だ。あーちゃんが、僕を拒否した。僕を峻拒(しゅんきょ)した。僕の存在を殺した。義弟の事を調べられなかった僕の落ち度だとしても、あいつの存在自体は“いらない”

 あーちゃんと同じ苗字になるのは、僕が最初の男のはずなのに……こんな形で奪うのか。いらない。いらない。あいつが生きているだけで、虫唾が走る。あーちゃんを害虫から護るために、僕がどれだけ頑張ったと思っているんだ。

「ハァッ……」

 スマホをいじるが、何も変化がない。

 あーちゃんのスマホに忍ばせた“特別なアプリ”は、随時僕にあーちゃんの事を教えてくれるはずなのに。

 ――そういえば途中から切れたな。充電切れかもしれない。電話やメールをしすぎたか。

(チッ)

 あーちゃんはスマホに無頓着だから好き勝手に出来るけど、充電を今日するかはわからない。今日のあーちゃんの様子がわからない事も僕を苛立たせる。

〈チチチチチチチチ〉

 持っていたカッターナイフで机を削る。

〈シャクッシャクッシャクッシャクッシャクッシャクッシャクッシャクッシャクッシャクッシャクッシャクッ〉

 机の上には、言葉にならない程の殺意の文字が並ぶ。

 身体の毛穴という毛穴が逆立つ程、怒りが湧いてくる。

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いっ!

 あーちゃんに、あんな言葉を吐かせた原因となる、あいつが憎い。

 ズリッ。ナイフが滑って、手に赤い筋を作った。

 ポタン、ポタン、ポタン。赤い水玉が机に落ちる。“赤”が殺意に満ちた言葉を強調する。へへへ……ふふふふふ。

 カーテンの隙間からはいる、月明かりが僕の狂気を照らした。なんだ。簡単なことだ。

『別れよう』なんて酷い言葉。もう、言わせないようにしてあげたらいいんだ。僕からの愛情が足らなくて、不安になったんだよね? あーちゃんが嫌がるから抑えていたけど、これからは不安なんて感じないように、もっともっともっともっともっともっとも―っと、愛してあげたらいいんだ。

 本当、簡単な事に気が付かなくてごめんね? あーちゃん。あーちゃん。あーちゃん。ちゃんと、迎えに行くよ。大丈夫、道具は揃っているし、僕たちの愛を邪魔する奴は僕がみんな排除してあげるから。

「ふふふふふふふふ」

 ああ、愉快だ。ありがとうって言いたい。

 だって、

「ねぇ? レイくん殺されに来てくれたんだ?」

 僕の部屋のドア前、首をかしげた黒い影に話しかけた。


 迎えに行く手間を省かせてくれて



 ありがとうね?


瑛の狂気の()が、開きかけました。

瑛の言っている『アプリ』は、もちろんフィクションです。


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