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04.幼馴染にハーフでシスコンの義弟ができたので動揺中です-01

サブタイトルで、既にネタバレの件。


しばらく、連続物になります。

この小説は、変態、下品、セクハラがデフォです。


*視点が迷子。読みにくくて申し訳ございません。

 織田翠は、その日、油断をしていた。

「葛城、なんだその真っ黒な弁当は……」

「……あーちゃんの愛妻弁当に、ケチをつけてるの? 表出ろよ」

 海苔の下におかかご飯がびっしり詰まったお弁当を嬉々として食べているのは、学校のアイドル葛城瑛である。

 通称のり弁の製作者、彼の幼馴染であり最愛の人でもある織田翠は、美味しそうな惣菜パンを食べていた。

「ほらほら、瑛、私の手料理が冷めちゃうから食べちゃいなさい」

 既に冷めているだろ! という周囲の(心の中の)ツッコミも知らず「うん!」と無邪気な返事をする瑛には、可哀想やら、可愛いやらと、微妙な視線が送られている。

 昼休み。

 瑛と翠はいつものように教室でお弁当を食べていた。そこに、クラスの中では怖いもの知らずと言われている後藤(ごとう)佑樹(ゆうき)が、これまたいつものように割り込んできた。

「今日は、織田さんの番なんだな」

「羨ましくて死ぬレベルでしょ。だから、そこの窓から飛び降りて死んできたら? 僕達のラブラブを邪魔する奴は悶え死んだらいいよ」

「――爽やかな笑顔で怖いことをいうなよ。ほんと、織田さん関係だとお前、心が狭すぎる」

 ちなみに、昨日は瑛の番だったらしく、チーズベーコンエッグのバゲットサンドやら付け合せのフルーツなど。え? どこのお店の品ですか? と訪ねたくなるような、手の込んだものだった。

「織田さんって、料理が苦手なの?」

「……後藤、お前にあーちゃんの情報を得る権限はないからね。それに、あーちゃんは料理上手だけど、君が味わう事なんて一生涯ないからね」

「苦手っていう程はないけど、私、おさんどんさんしているから、朝と夜もご飯を作ってお弁当まで作るのが、面倒なのよ。……だけど……ごめんね」

 翠は瑛と『お弁当を交互で作ってくる』という約束の言い訳をしながらも、やはり罪悪感があったのか、瑛の方へ身体を向き直し、申し訳なさそうに言っている。が、後藤は未来を予言する。次回、翠の弁当当番の日もメニューはのり弁当だろうと。

(葛城、尻にひかれすぎ)

 瑛は翠の「ごめんね」に完全にイッテしまっていた。「へへへへ」「うへへへへ」と気持ち悪い笑い方をしている。イケメン崩壊に後藤は若干引いていた。

「ううん! 僕、あーちゃんが作ってくれるという事だけで幸せだよ! デザートは、あーちゃん? 甘くて蕩けそうだね! そして、後藤は早く散れ」

 前半、甘い声と笑顔で翠に。後半、ドブにはまったかのような苦潰した笑顔で後藤に。

 なんだか虚しくなった後藤は、意地でもこの場所を離れるか! という使命感に燃えていた。

「あ! でも、もうちょっとしたら、ちゃんとしたのを持ってこれるかも」

「……?」

 何かを思い出し、急にテンションをあげた翠は、自慢するかのように、綺麗なブイサインを顔の横にチョコンとつけて発表する。

「ジャ―ン! お父さんが再婚するの!」

 あまりにも飛んだ話で後藤は目が点になった。

 反対に瑛は落ち着いている。

 いや「あーちゃんのブイサインって。レアすぎ。カメラにおさめたい。引き伸ばして部屋に貼りたい」と変態なだけだった。

「再婚?」

「あ、うちね、お父さんと二人だけなんだ」

「あ―後藤、さっきの可愛い仕草も見たよね? もう、なんでそこの窓から飛び降りていなかったの。手伝う?」

「だから、心狭すぎ! 織田さんに逃げられるぞ!」

 一矢報いたい後藤に対して「ハンッ!」絶対零度の冷たい視線を送る。「ちょっ、鼻で嗤うな!」と涙目の後藤。二人がじゃれている(?)のを無視して、ふと、昨日の父親の会話を思い出し、嬉しそうに翠は話を続けた。

「お父さん、最近“モテ期”だったみたいで、色々な女の人に声をかけられていたんだって。ハンカチを拾ってもらったり、タイヤのパンクを直したりとか……女運がアップしたのかな?」

「モテ期かぁ。いいなぁ」

「へー。おめでとう。よかったね! あーちゃん!」

 瑛のまるで知っていたかのような、棒読みの言葉に二人が止まる。

「……」

「……瑛?」

「ん?」

「あんた、まさか何かした?」

「まさか」

 白々しいほど、澄んだ笑顔である。

 翠は腑に落ちなかったが話を進めることにした。

「まあ、いいか。お父さんが幸せそうだし」

「よかったじゃん。で、再婚って、どんな人なの? いつするの? やっぱり、織田さんのお父さんも強いの?」

 ガツガツと食いついてきた後藤に、瑛がとうとうキレた。

「……後藤、ほんと邪魔。なんなの? 僕達に恨みがあるの? もしかして、あーちゃんじゃなくて僕に興味があるの? ちゃんと言うよ? 僕、ソッチ系じゃないからね。君の気持ちには応えられないから。あーちゃんでしか勃たないから、ごめん」

 瑛は精神的に後藤を攻める事にした。

「……オレ、いくら顔が良くても変態なイケメンは嫌だし、今そんな話じゃないし」

 後藤はスルースキルを発動。

「え? 後藤くんってソッチ系だったの?」

 しかし翠に話を戻される。

(もう、このバカップル嫌だ……)

 哀れ後藤は精神的ダメージを与えられたのだった。「流石、僕のあーちゃん」と感心する瑛の後ろでは「オレは女が好きなんだ!」と後藤が叫んでいる。なぜかクラスメートの視線が痛い。後藤は立ち直れなくなり机に顔を伏せ、涙をぬぐった。

 邪魔者が大人しくなり清々した瑛は「いつ、再婚するの?」と再度質問しなおす。

「今日」

「え!?」

 これには流石の瑛も予想をしていなかったのか、虚を衝かれて間抜けな声を出した。

 思いがけず素になっている瑛の様子に翠は嬉しくなった。そして追い打ちをかけるかのように、再度爆弾を落としてしまったのだ。


「それに、ハーフの義弟ができたの!」



 青天の霹靂。足元から煙が出る。寝耳に水。窓から槍と、なんでもいい。昼休みの驚愕の爆弾以降、瑛は頭がおかしくなりそうだった。

『出逢って一週間で結婚なんて、どんなスピード婚なのよ! って思ったけど、お父さんが幸せなら私は大賛成だよ』

 ここまではいい。翠の無邪気な笑顔を後藤にも見られたが(ちゃんと後で絞めた)ここまでは許容範囲だ。

『二学期からこっちの学校に移るんだって。ほら、この高校には付属の中学校があるでしょ? そこに編入するみたい。試験も受かったんだって。頭いいよねー。二つ年下で、十四歳!』

(十四歳!? あり得ない。己の制御も出来ない、脳と下半身が直結した真っ盛りの野獣じゃないか。そんな奴が、あーちゃんと一つ屋根の下に住む?)

 考えただけで、頭の中が真っ白になる。


 放課後。いつものように一緒に帰るが、セクハラの一つもしてこない瑛は、心ここにあらずという風で翠は違和感を覚えていた。

 翠の家の玄関前で瑛が静かに話を切り出した。

「……あーちゃんのお父さん……その新しいお母さんになる人とは、どうやって知り合ったの?」

「ええーと、友達の運転で買い物に行く途中、タイヤがパンクしたのをお父さんが助けたみたい。手際よくタイヤ交換する姿が素敵ってそのままお茶に誘われたって」

「……そう。友達の方。へぇ。そう」

「……瑛?」

 瑛の計画では翠の父には、とっとと再婚をしてもらって「新婚さんの家に居るのは不粋だよ? 大学生になったんだから自立しないとね」と最もらしいことを言い、高校卒業と同時に同棲にもつれ込むつもりだった。だから問題のない女性を見繕い、偶然の出会いを誘導させてきたのに。

 まさか、こんなに早く再婚して、相手が友達(・・)の方で、しかも息子(おとこ)が付いてくるなんて、まったくの想定外。

(ああ、どうしよう。あーちゃんと、ソイツが逢わないようにしたい。ほんと、邪魔。それに、ハーフってオプションなんて何? ――殺す?)

 玄関ドアにもたれ掛かり、瑛はしばらく思考の海に潜り込む。昼休み後、翠に隠れて吐いたのに胃の中の物をすべて出したい衝動に駆られる。空っぽの身体にぐるぐるぐるぐる渦巻く不安。恐怖。悪意。独占欲。どんどん沈んで、瑛の心は真っ黒に染め上がろうとしていた。

「瑛!」

「あ、何?」

「ちゃんと言って。なにかを思ったんでしょ? また不安になった? なったら、ちゃんと言わなきゃだめ。言ってくれないと私はわからないよ。悟ることなんて出来ないんだから。不安になった事は声に出して言って?」

 翠の真剣な瞳。

 ここで、ちゃんとこの幼馴染に釘をささないと後からとんでもない事をする。長年の勘が翠にそうさせるのか。

「はぁ。……本当にあーちゃんには敵わないよ」

「うん」

「あーちゃんに新しいお母さんが出来るのはとてもいい事だと思う。でも義弟は嫌だ。弟と言っても血のつながりもない、ただの男だよね? それがあーちゃんと一つ屋根の下で暮らすって想像しただけでも、吐く。このまま、あーちゃんを僕の家に閉じ込めてしまいたいって思っている」

「なるほど」

「なるほどって何? あーちゃん、あーちゃんはわかっていないよ! 男が一緒に住むんだよ? お風呂や着替え中もラッキーすけべや、偶然を装って扉を開けてくるに決まっている。脱いだ下着や落ちていた毛なんかも持ち帰って夜のオカズを増やしていくんだ。自分の部屋の中でも安心したらだめだよ。盗聴、盗撮に絶対に気をつけて。コンセント内部や電気のシリンダーはもちろんだけど、覚えのないぬいぐるみや置物も特に要注意だよ。声や映像のコレクションを増やすアイテムを忍ばせられる格好のスポットだからね。そうそう。この前の事なんだけど、あーちゃんさぁ~、家の中だからって無防備にノーブラだったでしょ? 透けてみえた乳首とか思わず拡大してプリントアウトしちゃったよ。僕だからよかったものの、気をつけてくれないと。それと、無防備にリビングでお昼寝も禁止。寝る時も部屋には絶対に、鍵をかけて。今から、ホームセンターで買いに行こう」

 両肩をガシッと掴まれてのこの内容。でも、瑛の瞳はどこまでも真剣。その反対に、翠の心は違うことが渦巻いていた。

(ええ、もう、途中から瑛が何を言っているかわからない。わかりたくもない!!)

「再び玄関先でっ! 白昼堂々と変態演説をするなっ!」

 ぐほっ。

 見事なハイキックを決めて家に入り、素早く鍵を閉める。

 ガチャガチャ、ドンドンドンドン

『あーちゃん、まだ話が終わっていないよ』

 ガチャガチャ、ドンドンドンドンドンドン

『あーちゃん。あーちゃん』

 ガチャガチャ、ドンドンドンドンドンドンドンドン

 鳴り続ける、音。

(本当に変態だ。セクハラがすぎる。家族になるのに!そんな事が起こるわけないじゃない!!)

 玄関ドアを背もたれにして俯くと、目に入ってきたのは知らない男物の靴。

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

 顔をあげると目にはいってきたのは、昨日父に見せてもらった写真の男の子。

「初めまして、おかえりなさい?」

 この、最悪の状態の中

 ガチャガチャ、ドンドンドンドンドンドンドンドン

 翠は義弟と対面をする。

 ガチャガチャ、ドンドンドンドンドンドンドンドン

『あーちゃん。あーちゃん。あーちゃん』

 ガチャガチャ、ドンドンドンドンドンドンドンドン

 冷や汗が首筋に垂れ落ちる。

「た、ただいま?」

(あ―、もう、油断していた)


*クラスメート


後藤 佑樹(ごとう ゆうき)


瑛と出席番号が近く、席が近かったので

後ろからよく観察し面白いと思っていた。

めげない、諦めない、若干ドMな毒舌キャラ。


瑛とも対等に話すし、

翠とも瑛とじゃれながらも(?)話しかけてくれるので

翠は密かにありがたいと思っている。(瑛は嫌がっているが)


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