02.幼馴染はキュートでクーデレで心配なので軟禁中です
瑛視点
全体的に、「変態」「下ネタ」です。
ヤンデレ・変態、視点は難しいです。ツッコミがいない。
僕達の運命の出逢いは、保育園だった。
保育園時代の僕は、努力をしなくても大抵の事は出来た。神童と言われてそれが当たり前だと思っている大バカだった。
他人よりも整った容姿は便利だ。少し微笑むと周りは僕の言う事を何でもきいてくれた。だから我儘も言いたい放題。先生からも贔屓され、女の子達も僕のそばを離れず取り合いの日々。退屈な毎日。
でも、好感度が高い奴ばかりじゃなかった。
知能が低い奴程、集団でしか行動が出来ない。一部の奴らは、そんな僕を異物として畏怖し、嫌がらせをしてきた。
無視や物を隠したりされても、僕は全然気にもとめなかった。そんな態度が気にくわなかったのか、ある日みんなで作っていた泥団子をぶつけてきた。
次々と泥団子を投げつけられて、流石の僕も顔と服を汚されるのが我慢ならなかった。泥の中に石を潜ませ、投げ返そうとした時、信じられない光景をみた。
僕に泥を投げつけた奴らが次々に倒されて行く。
アイアンクローやコブラツイストなど、その頃流行っていた、戦隊ものなんかよりもぜんぜんカッコいい。
チリチリと心が燃やされていくのを感じた。
時がスローモーションに変化したかと思った。
ゆっくりと。ゆっくりと瞬きが行われる。長いまつ毛が影を落とし、尻尾のようについてくる髪は生きているようだった。
確か……最近入園してきた女の子だ。
名前は、僕と同じ……
「あきらちゃん、ありがとう」
僕は、いつもよりも魅力的に見えるように、満面の笑みでお礼をいう。僕は自分の笑みの与える影響力を理解していたから。でも彼女はこちらに一瞥を向けた後、僕を無視して歩き出した。
その一瞬見えた瞳にとらわれてしまう。
だって、すごく綺麗だったから。生きていて一番綺麗な彼女の瞳に僕は捕まってしまった。
気付いたら彼女の後を追い掛け押し倒していた。
顔を両手で挟み込み顔中を夢中で舐めた。柔らかな頬も、可愛い唇も、前髪を掻き分けて出てきた賢そうな額も、小さな鼻も、意志の強そうな眉も、全部舐めて、舐めて、頭を首元にグリグリと擦り付ける。さっき付けられた泥も彼女に移っていく。こんなふうに、僕のモノが彼女に染み込み、色付けられたらいいのに。あの綺麗な瞳も取り出せたらいいのに。
(この子は僕のもので、僕はこの子のものだ)
周りの園児達は、その異様な光景に泣き叫び、悲鳴を上げ青ざめ、辺りは騒然となった。気付いた保育士たちに、二人がかりで止められるまでそれは続いた。
無理矢理引き離される時に、呆然としていた彼女と目があった。あの黒曜石のような瞳に僕が映っている。嬉しい。嬉しい。飴玉みたいだ。ねぇ、瞳も舐めたい。しゃぶりたい。僕しか映らないようにしよう?
彼女は、泣く事も、怒る事もせずに「ペロみたい」と呟いて笑った。
(ああ、もう、だいすき)
それ以来、あれ程チヤホヤしてきた先生達も僕を遠巻きで見るようになった。周りに居た取り巻きたちは居なくなり僕の取り合いも嫌がらせもなくなった。
そんな事より、僕の頭の中は彼女で一杯だった。
『かつらぎあきら』と『おだあきら』
僕と同じ“あきら”という名前は、もう運命だ。
結婚すれば名前の漢字こそ違うにせよ音は同じで、呼ばれるソレは彼女と同じものになる。
彼女は僕に、僕は彼女になれる。
(“あきらちゃん”いや、この呼び方は他の奴と一緒だ。僕だけの呼び方……“あーちゃん”)
「あーちゃん……あーちゃん。あーちゃんあーちゃんあーちゃんあーちゃんあーちゃんあーちゃんあーちゃんあーちゃんあーちゃんあーちゃんあーちゃんあーちゃん」
(なんて、愛おしいんだろう)
後日、僕の幸せな気持ちに泥を塗られる。あーちゃんに技をかけられていた連中が彼女を慕い周りに集りだしたからだ。害虫のくせにどれだけ泥が好きなんだ。僕のあーちゃんに群がりだした害虫は早めに駆除しなければいけない。
近くにあった棒を握りしめ殴りつけようとしたのに、あーちゃんに気付かれて押さえ込まれてしまった。
「仕返しに凶器は反則。退場になるぞ」と、勘違いしたみたい。これを機に抱き付いて身体中を擦り付けた。
「あははっ。ほんと、お前、ペロにそっくり」
「……ペロって何?」
「おばあちゃん家で飼っている仔犬。顔中を舐めてくるの」
「……ふーん」
気付けばまた、抑え付けてあーちゃんの顔中を舐めまわした。そのペロとかいう、クソ犬の舌を引っこ抜く事を考えながら。
先生に見つかり、あーちゃんとクラスを分けられたけど、無視をして隣に居続けた。
◇
いつもと同じ。高校から家への帰り道。
僕の隣で歩いているあーちゃんは、今日も可愛い。手をギュッと(出来れば恋人繋ぎで)繋ぎたいけど、恥ずかしがり屋のあーちゃんは、なかなか許してくれない。
「なに?」
あーちゃんが僕に話し掛ける。それだけで、背筋がゾクゾクと快感を呼び起こす―なんて言ったらまた『変態』と言って怒って帰ってしまうから言わないんだけどね。それにしても、あーちゃんはいつも可愛いな。あーちゃんは顔だけじゃなくて、スタイルも僕好みだ。蹴りを入れる脚はモチモチしているし―噛みつきたい。手も指も口の中で味わいたい。僕にちょうどいいサイズの胸……ん? あれ? いつもと何かが違う。胸ポケットに、何かがはいっている?
「あーちゃん? それ、なあに?」
よくよく見ると、ヒラヒラと可愛らしい紙はちょこんと胸ポケットから顔をだしていた。女の子同士の手紙のやり取りまで文句を言う程、僕は心が狭くないつもり。(それを言うとあーちゃんは引きつった顔をするけれど)でも、指摘した瞬間のあーちゃんの慌てっぷりに、僕は別の意味で背筋がゾクゾクとした。
あーちゃんは四つ折りに折り畳まれた便箋を、制服を捲って服の中に隠し入れて叫んだ。
「なんでもない!!」
顔を真っ赤にして瞳は潤み便箋を隠すように身体でかばう。明らかに動揺している様子は、庇護欲を駆り立てるものがあって、僕は萌えに萌えたけどそれどころじゃない。
いつも以上にとてつもなく可愛い姿のあーちゃんを通行人が、チラチラ見ているのに気が付いて血が沸騰しそうになった。見るな! すぐさま僕はあーちゃんを隠すように抱き上げていた。誰にもあーちゃんをみせたくない。僕のだ。僕だけの。だからお前らは見るな! 見るな!
「ちょっと、瑛! 変態! 馬鹿! 下ろせ!」
「……あーちゃん、黙らないと、口で口を塞ぐよ」
「!」
片手で抱き直し、二人分の鞄も持ち上げ、僕の家に急いだ。
◇
「猛獣の部屋で拘束とかって」とブツブツと文句を言っているあーちゃんは、只今、僕の部屋のベッドの上。
両手はネクタイで締めて、脚は僕が乗って固定済み。
あーちゃんが羞恥や混乱で目を白黒させていた隙に、一気にここまで連れてきたけど
「外の方が良かった?」
「え?」
「あーちゃんの事、剥くの外の方が良かった?」
「剥く?」
あーちゃんのお腹に手をのせると、ビクッと震え、身を捩り抵抗する。僕も初体験が青姦なんて趣味じゃないけどね。
「あーちゃん、わかっていると思うけど、俺は本気だから。大人しく剥かれてよ?」
「なっ!!」
目を見開くあーちゃん。あーちゃんてば、本当にわかっていないの? よりにもよって、あんな可愛い姿を他の奴に晒して。ああ……あの姿を見た奴ら、締めないとな。うん、まぁ、それは追々。
「なーにを、隠したのカナ?」
人差し指でス―と、お腹周りを撫でる。制服の上からでも、柔らかい弾力が伝わる。
ベッドの上で拘束されて、身を捩り、頬を染めながら睨んでいる。ジワリとかいた汗が媚薬のような匂いを放って、ゴクリッと喉がなった。
これはもう、全身で僕を誘っているよね? ああ、早く。俺のものって身体中に赤い痕を描きたい。俺の体液を身体中にすり込みたい。俺の雄を打ち付けてドロドロのグチャグチャに快感を植え付けて。俺がいないと息も出来なくなるくらいにしたい。俺の黒くて穢い欲望が渦巻いて、息が苦しくなって、途端にあーちゃんが憎らしくさえもなる。
「あーきーらー? エロいのは、なしだからね」
絶体絶命のピンチなのに、唇を尖らせて軽い口調で僕を嗜める。アヒル口だ。可愛いなあ。食べちゃおうかな。今、僕、死にそうだから、人工呼吸をしてくれる?
「余裕だね? あーちゃんに今そんな発言権があるの?」
「あーりーまーすー」
「ねえ、このまま抱いちゃおうか? 孕むまで抱きつくそうか? ねえ?」
「―瑛。怒るよ?」
「僕の方が、怒っているし」
「瑛? そういうのはちゃんと、時期が来てからって、わかるよね?」
「……」
時々、暴走する僕をあーちゃんは、しつけをするように、優しく嗜める。手を縛っていなかったら、頭を撫でてくれたのかな。
でもね? 僕はいつも堪らなく不安なんだよ。
僕の周りの奴は、僕の事を完璧な人間と勘違いし、自分の理想の僕を作って偶像視して崇め、勝手に失望し離れていく奴らばかりなんだ。
でも、あーちゃんだけは違う。僕の歪んだ醜いドロドロな部分をみせても笑っていた。だからこそ僕は不安で堪らない。あーちゃんが僕を否定したら? 拒絶したら? あーちゃんは、全てが美しい人だから、すぐに誰かに盗られてしまう。油断してはいけないぞ。っていつも警報が鳴っている。
「だったら安心させて? あーちゃんが離れないっていう確信が欲しい。自信が欲しい。あーちゃんを全部頂戴よ。僕の全てをあーちゃんにあげるから。お願い。お願い……僕はあーちゃんの全てが欲しいのに、いつも足らないんだ。ちょっとした事でも飢餓状態になって気が狂いそうになる。早く頂戴。全部頂戴。僕を安心させてよ」
あーちゃんの、頬を撫でながら懇願する。ああ、柔らかいな。吸い付くような肌。すべてを撫で回して暴いてしまおうか。
「甘えた。贅沢もの」
「あーちゃん限定だよ」
「猫、犬、小動物!!」
「え?」
「よしっ!」
と、言ったあーちゃんの両手の拘束はいつの間にか解けていて勢いよく上半身を起こし、呆気にとられている隙に抱き締められたと思ったら、逆に押し倒されていた。
―この体位って。
「騎乗位?」
「ハァ?」
苛立った顔をして、ギュウっと、鼻をつままれる。
「ふんがが、どうやってネクタイを解いたの!」
涙目の僕の疑問に
「ふふふ、拘束される時に、いかに隙間をつくるかが鍵よ。お父さんに縄抜けを教わっていて良かったわ」
でた! あーちゃんの反則技!!
昔、あーちゃんから「最初はお遊びでお父さんと格闘技ごっこをしていたのに、瑛が遊びにくるようになってからは、殺傷能力がある技中心に本格的に教えてもらえるようになったよ!」と嬉しそうに語っていたのは、ものすごく可愛かったけど、厄介すぎるよ!
「……安心…………ねぇ」
スッと目を細めたと思った瞬間。鼻を勢いよく、噛み付かれた。
「い、痛い! 痛い! ギブギブ!」
「ツバつけた」
「?」
「あんたが、他人にツバをつけられない限り、あんたは私のものって事。精々、己の貞操を守るのね。―後は今迄通り私の傍にいればいいのよ」
「!? 僕、あーちゃんだけでしか勃たないから大丈夫! あーちゃんの傍にいたい!」
「うん、いい子。なら、安心ね?」
ニヤリと笑って、僕を組み敷いて見下ろす姿はあまりにも格好良い。僕は涙目になりながらも、あーちゃんへの愛おしさが溢れ出していた。
「あーちゃんが男前過ぎるよ。かっこいい」
「あんたが、乙女なだけでしょ?」
「……かも。あーちゃん、大好き。愛しているよ」
「はいはい、私帰るね」
僕の上から降りて、さっさと鞄を持って帰ろうとするけど、そうはいかない。「待って!」と手を掴むと「チッ」って、し、舌打ちした!
「さっきのを見せて!」
「なに?」
「誤魔化さないの! び・ん・せ・ん!」
「……あ、あれね! ただのレシートよ。そう、レシート」
歯切れが悪くて怪しすぎる。
いつもは、キッパリ、サッパリなのに。
「レシートなら見せられるでしょ?」
「わ、私にもプライバシーってもんがあるの! お、乙女の秘密的なもの!」
「スマホや鞄の中身を見ても怒らないのに? 生理用品まで見られても気にしない人が?」
「……チッ」
ま、また舌打ち!?
「あーちゃん、僕不安になった。だから見せて?」
「……」
「あーちゃん?」
「あ―もうっ!!」
僕の手を、バシっと払い落とし頭をガシガシとした後、ざっくりと制服の上着の中に手をやって、例の便箋を取り出した。
「もう、くちゃくちゃになっているし」とブツブツ文句を言いながら「はい」と渡してくれる。
「いいの?」
ちょっとモヤモヤ。あーちゃんは、僕から目をそらし、後ろを向いた。恐る恐る折りたたまれた便箋を開く。そこには拙い平仮名でただ一言。
“だいすき”
なんだよこれ。
なんでこんなものを大事にしているの? 心臓が破れそうなくらい、痛くて死にそう。
「……ラブレターだ」
「はぁ?」
あーちゃんの大声。僕の苛立ちよりも更に苛立った様子で、便箋の文字を指差す。
「ちゃんと見て! ほら、字が幼いでしょ?」
「……そんなの、関係ない」
「はぁ―? ちゃんと、見て」
「“だいすき”……ああ、もう! 破くね」
「ダメ!」
奪い取られた瞬間、便箋のイラストに見覚えがあったのに気が付いた。アメリカの有名なイヌのキャラクターで……僕が保育園に通っている時に好きだった……あれ?
「僕?」
あーちゃんは僕に背を向けていた。顔は見えないけどかろうじて見えた耳が真っ赤になっていて。
ああ、あーちゃん。
「ずっと、持っていてくれたの?」
あーちゃん、あーちゃん。
保育園の時、ペロ(犬)扱いが嫌で、僕を見て欲しくて覚えたての文字で一生懸命伝えた。
『僕は、ペロじゃないよ。だから手紙を書いてきたんだ』
『……手紙? 私、初めて貰うかも』
『うん! あーちゃんの初めては全部僕のものだからね! ペロは文字も書けないし、あーちゃんに言葉で愛を語れない、僕だけがあーちゃんに伝えられる』
『うん。ありがとう』
「学校に行く前に時間割を合わせていたら、机の引き出しに引っかかっているのを見つけちゃってね……瑛が初めてくれた手紙だし。失くしたと思っていたのに見つかったから、その、嬉しくて……そのまま持ってきちゃってた……」
あーちゃん、あーちゃん、あーちゃん。
本当に、あーちゃんには適わない。
僕を簡単に不安にも不幸にもするけど、同じように簡単に幸せにもする。
「あーちゃん!」
飛び付いて抱き締めた。油断していたあーちゃんは、スッポリ僕の腕の中。
「今度、もっと素敵なラブレターを送るからね! 僕の愛を受け止めてね!」
「いらない」
「……あーちゃん?」
「いらない。いつも充分、言葉と態度でもらっているから。それに、これは初めて瑛がくれたのだし……これがいい」
「っ!」
気が付いたら、夢中であーちゃんの唇を塞いでいた。舌で舐めて絡めて吸って唾液を交換して、全てを喰らうように。
チュパッ、リップ音の後、お互いの頬を赤く染めて、オデコとオデコをくっつける。
「へへへ、僕も、ツバつーけた」
「出会ってすぐにツバをつけてきたくせに」
「うん。これからも、毎日、ね?」
再び重なる唇。
あーちゃんは、ブツブツ「やっぱり、猛獣に喰われた」って、言っていたけど
でも本当の本当は、僕があーちゃんに喰べられていると思うよ?
「瑛……だいすき」
「僕も、その何倍も愛している」
あーちゃんは、素敵な僕の恋人。
僕の欲望を全部ぶつけたいけど、そうしたら僕もあーちゃんも壊れてしまうから蓋をしめるんだ。
あーちゃんも一緒にしめてくれるから
僕達は大丈夫。