12.無人島で二人が突然飛ばされましたがやっぱり夢オチです
完全に趣味回です。
そして、この物語は下ネタ・下品・変態はデフォです。
葛城瑛と織田翠は気がついたら、無人島に居た。
海岸沿いをぐるりと一周したが二人以外誰もいなかった……ここは孤島らしい。
瑛は常日頃から翠を出来る事なら閉じ込めたいと願っていた。でも、扶養される側である高校生の瑛には、現実問題難しい。
――が、ここは、無人島である。
二人だけの世界。ある意味自然による“監禁”
瑛の願いが叶ったも同然であった。
「あーちゃん、僕達……二人っきりだね! へへへ。これから、二人で力を合わせて生きて行こうね!」
瑛は期待に胸を膨らませて翠を見つめる。
余談だが、二人の格好は学校の制服。潮風が翠の短すぎないスカートを揺らし、高く結ばれた髪も棚引いた。
「……瑛」
「あーちゃん! 何?」
両手を拡げる瑛。
「ここって、無人島なの?」
「そうだよ! ここは僕達の夢の楽園だよ! もう、誰にも邪魔をされない! あーちゃんは僕だけのものだ。愛しているよ! あーちゃん! ここで二人だけの結婚式をあげよう!」
そのままガバッと、勢い良く翠に抱きつこうとしたが、サラリとかわされた。
「瑛……ここにアレ(・・)はないかしら」
「アレって? ……コンドー……グホッ!」
言い終わるまでもなく、瑛は砂浜に投げ技(不知火)を決められていた。
砂浜に沈む瑛(変態)は、いつも通り「あーちゃんの胸が、僕の肩を挟んだ!!」と、鼻息が荒い。変態。そう、彼は変態だった
―そして、彼女は
「ちが―う!! ハイビスカス! ハ・イ・ビ・ス・カ・スよ!」
「え?」
彼女――翠は「無人島」マニアだったのだ。
◇
無人島の映画はもちろんの事、小説やアニメや海外ドラマ。その中で翠の一番のお気に入りは、昔放映されていた名作劇場の再放送。一家で漂流してしまうアニメで、そこに登場する主人公の少女がとても羨ましかったのだ。
その少女の耳の横をいつも髪飾りのように彩っていたのがハイビスカスで、翠にとって無人島の少女と言えばなくてはならない刷り込みのようなアイテムである。
(私も……初めての火起こしや、水の確保。モリで魚を突いて、海水で塩も作りたい)
「あーちゃん! 違うでしょ? ここでは僕達がアダムとイブになるんだよ? こんな邪魔な服を脱ぎ捨ててさ! 生まれたまんまの姿になって、一つになるところじゃないの?」
「しないから」
「え?」
「しないから」
「えええええ!!」
アニメの少女のように都合よく、お父さんがお医者さんではない。もし、気軽にセックスなんかして、出来てしまったら、誰が赤子を取り上げる?
「瑛って、お医者さんでも助産師さんでもないよね?」
「……」
「気軽にヤッて赤ちゃんを授かったら……最悪、私と赤ちゃんが死ぬよ?」
「!!」
真っ青になってうなだれる瑛。「中には出さないし、外に出すから! 素股かフェラ……69だけでも……」と言っては、身体を翠に踏みつけられていた。
「そんな事よりも、まずは火を起こそうか? あ、浜辺にHELPなんて丸太で作る?」
そして、晴れやかな顔で、翠は瑛に向って微笑んだのだ。
◇
「――という夢をみました」
「はぁ?」
朝、瑛と翠がいつものように、一緒に通学している最中での会話である。
「だから僕、決めたんだ」
「(嫌な……予感がする)……瑛? ちょっと」
そっと、後ずさりする翠。
もちろん、瑛はそんな翠を逃さない。
「いつ、あーちゃんと僕が、無人島に漂流するか分からないよね? だから僕、産婦人科の先生になる。よくよく考えたら、あーちゃんが僕の子供を産んでくれる時に、どこぞの知らない奴にあーちゃんの秘所を見られるのが嫌って気付いたんだ。勿論、女医さんでも嫌だからね。それに妊娠初期なんて、あいつら……あーちゃんの膣に器具をいれるでしょ? 無理だよ。無理無理無理。想像しただけで、そいつの事、滅多刺しにしたいよ。あーちゃんの膣にモノを入れるのは僕だけ。ぜーんぶ、僕がやる。だから、僕、取り敢えず資格をとるよ。あーちゃんの膣は僕が絶対に死守するから!」
ガヤガヤ、ざわざわざわと、いつも誰かしらのおしゃべりで賑やかなバス停の前が、一瞬にして静かになる。
「ねぇ? あーちゃん」
翠の両肩を掴み、熱心に力説する瑛。綺麗な瞳は真剣で、さらりとした無造作ヘアーは爽やか。イケメンだ。イケメン。だが、言っている事が――変態すぎる。しかも、声のボリュームが通常サイズ。いや“高らかに宣言”っぽく、通常よりは大きめかもしれない。
あまりにもの羞恥心に、翠は真っ赤な顔をして涙目で瑛を睨みつけた。
その時に(あーちゃん! 可愛すぎ!)と、その顔を間近で見たいと自身の顔を近づけたのが悪かったのか。それとも、ワザとなのか。
「不順な動機で、人様の命を扱う資格を取るな!!」
バチ―ン!!
瑛の頬にフルスイングの平手打ちが炸裂した。
顔を真っ赤にして、ずんずんと先へ歩いていく翠を「あーちゃん! でもね! あーちゃんの膣が! 一大事なんだよ!」と頬に真っ赤なもみじを付けて、慌てて追いかける瑛。哀れな翠は耳を塞ぎながら「あ―あ―あ―」とかけ足になる。
(信じられない! もう、この道も通れない! また違うルートで学校に行かなきゃ)
翠は知らなかった。
華やかな容姿のイケメン男子高生と人を惹き付ける女子高生。彼と彼女がどこを歩いても人々の印象に残り、二人の掛け合いは名物になっていた事を。
「瑛の変態―!!」
「あーちゃん、それ褒め言葉!」
知らなかった。