「告白」
「はじめてあなたを見たときから気になってしょうがなかった。付き合ってください」
「わたしはヒトメボレなんて信じてないわ。だいたいわたしのことをまったく知らない人間が、ただ見た目だけで好きとか嫌いとかいうなんて冗談じゃない。あなたはわたしのことをこそこそ調べたりしてまったく見ず知らずでもないのかもしれないけれど、わたしにとってはあなたは今日始めて目の前に現れた相手なんだし、そんな人間といきなり付き合おうだなんて、そんなことわたしが言うわけがないでしょう? 赤の他人に付き合う気は毛頭ないわ。でも、その気があるならわたしにキスしてごらんなさい。キスをしたことのある間柄というのは、例えそれが偶然や勘違いの果てに起こったのだとしても、それは赤の他人よりは多少はマシな関係だと認めるわ。さあ、目をつぶってあげたからキスしてごらんなさい」
「……まぁ、よしとしましょう。あんなこといわれて女の子にいきなりキスするようなナンパな男はお断りだし、かといって結局手を出そうともしないというのも、しょせんそれだけの興味しかなかったのだとわたしは受け取る。あと5秒遅かったらあなたとの縁は無かったし、10秒速かったらあなたの人生終わってたわね」
書こうと思っている長編の一場面を切り取って、登場人物の口調とか性格とかちょっとわかるものを試しに書いてみたものです。
本文だけ読むと、時間をオーバーしたら「社会的に」殺されるように見えますが、設定上この女の子は吸血姫なので、文字通りに「人生終わっていた」可能性があります。