「成長期なのっ!」
真夜中に、こっそりと階段を下りる。家族はみんな、もう寝ている時間だ。
音を立てないように、一歩ずつ、ゆっくりと、電気もつけずに階段を下りる。
階段を下りると、壁に手をついて目的地を目指した。ブォーンとわずかに冷蔵庫のコンプレッサーの音がする。音を頼りに、廊下をゆっくりと進んだ。
わずかな月明かりの中、目的地であるキッチンの冷蔵庫の前に立ち、あたしは小さく息を吐いた。ここまでは、誰にも気づかれていない、はず。
冷蔵庫のドアをそっと開けると、中の明かりが闇をわずかに照らした。
目的のブツを手に入れたあたしは、まだ未開封のそれの口を開けた。そのとき、冷蔵庫のコンプレッサーの音が急に大きくなり、あたしはあわてて冷蔵庫の扉を閉めた。
急に光を失い、キッチンは闇に包まれる。大丈夫。この程度の音で誰か起きてくることはないと思う。開封したそれに直接口をつけ、ぐっと飲み干そうとする。
不意に、キッチンの明かりがついた。
牛乳パックを両手で抱えたまま、おそるおそる振り返ると、兄が入り口で腕を組んで立っていた。同じ血を引いた兄妹らしく、139㎝というあたしほどじゃないにしろ、兄もあまり背が高い方ではない。兄は、あたしの手の中の牛乳パックを見て全てを理解したようだった。
「あきらめろ、遺伝だ。俺もいろいろ努力はしたが、すべて無駄だった」
「あたし、まだ成長期だもん!」
「十八歳過ぎて成長期というのは多少無理があると思うぞ?」
【兄妹】【139cm】【成長期】のお題で書かれました。
背のちいさい女の子ってかわいいと思うのですが、本人はいろいろ複雑なんだろうなとか。