「魔法使いの資格」
精霊というものは通常、純粋な力に過ぎず、それ自体が何らかの意思を持つものではない。
魔法とは、精霊を束ね、その力を魔法使い自身の意思により行使することによって生じる現象のことである。そのはずである。
『むにょーん?』
しかし、僕が初めて行った魔術の儀式において、魔方陣から飛び出してきたのは、僕自身の意思による力の行使とはとても思えなかった。
『おーい?』
師に学んだ知識を実践するために選んだのは、ただ精霊の力を一定時間明かりとして輝かせるだけのひどく単純な術式で、決してこのようなものを出現させようと考えていたわけではない。確かに、術式の通りに周囲の闇を照らしている、照らしてはいるのだが……。
『こら、聞いてんの? こっち見ろ~!』
魔方陣から飛び出してきたモノが、僕の頬に両手をあて、自分の方を向かせた。
「……君は何者だ? 精霊、なのか?」
それは、全裸の少女に見えた。長い髪を服のように身体にまとわせているが、それは美しい肢体を隠すものではなく、半分透けてわずかに宙に浮く彼女は、この世のものとは思えないほど美しかった。いや、実際この世のものではないのだろうけれど。
『あんたがあたしを呼び出した魔法使い……? ってことはあんたドーテイね?』
「ど、ど、ど、童貞ちゃうわー!」
ドゥ・ティが精霊使いを意味する古語だと知ったのはそれから三時間後のことだった。
これを書いた当時、某所のスレで「ど、童貞ちゃうわー!」が流行っていて、ついつい書いてしまった黒歴史。