『やってません。このバカです。』
「え!?あんた、なんで?来週じゃなかったの?」
母さんは、僕の顔を見てすごく驚いていた。だろうなぁあ!!!!連絡するほどの気力も、余裕すら僕にはない。
「まぁね。ちょっと早めに大学が終わったから、行っちゃおうかなぁとか、なんとか、あははは・・」
「ふーん。まぁ、失恋して嫌になって帰ってきたってところね。」
「は!?なんで!?え、母さん、僕に彼女ができたってなんで?あ、まさか」
「ふふ、いやねぇ、春奈が喋らないわけないじゃないのよぉ」
「あんのクソババア・・・」
「なんか言った?」
「げっ・・・」
階段から顔を出したのは、僕の姉の春奈。僕の二つ上の姉で、美容の短大に通ってる。自慢じゃないけど、なかなか美人な姉を持ったなと思っている。ただ、口が悪い。それで、男も近寄らないらしい。
「お前。なんで帰ってきたの?」
「いや・・・その・・・」
母さんは、振り返りすかさず言った。
「あの可愛い彼女と別れたんですって。」
春奈は、どでかいため息をついて、階段を降りてきた。
「はぁ、何があったんだよほんと」
口は、とてつもなく悪いけど、昔っから優しい。僕は、そういうところが、春奈の一番好きなとこ
「実はさ・・・」
僕は、そんな春奈に泣きながら話した。泣いてるから、ドン引きされると思っていたけれど、案外真剣に聞いてくれた。姉としての優しい気遣いにまた、僕は泣いた。
「なるほどねぇ。ほんとよく頑張ったな」
グリグリと春奈が僕の頭を撫でて、その場を後にした。
親父は、起き上がれないらしいので、僕は寝室へ向かった。
「親父?」
「おお!大樹!きたか!」
「腰やっても元気そうだね」
「まぁな!」
親父は、ニッカニカの笑顔を見せてきた。
「僕、手伝うよ?畑」
「悪いなほんと。明日よぉ、ホームセンター行ってきてくれないか?」
「うん、いいよ?」
「ほんと悪いな。ありがとう」
「うん」
翌日、僕は、ホームセンターに向かうために靴を履いた。
「あ、ちょっと大樹」
「ん?」
振り返ると、小さい紙をもった母さんがいた。
「ちょっとこれをスーパーで買ってきてくれない?」
「うん、大根と・・玉ねぎ、しらたきね。わかったよ。行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
僕は先にホームセンターに寄って、親父からのおつかいを成功させて、スーパーに寄った。
「えっと・・・しらたき・・あった」
何を作るのか知らないが、もうそろった。ちょっと余分にお金もらったし、自分へのご褒美にお菓子でも買おうと思い、お菓子コーナーへ足を運んだ。
「おっ・・・この駄菓子懐かしい・・」
そんな余韻に浸っていた時だった。お菓子コーナー、僕が見ているお菓子の棚のはじの方。一人の女の子がいた。というか、僕と同い年だろうか。歳が近い気がする。でも、彼女を見てしまう理由は、一つ。何かおかしい。そわそわしているのか、落ち着きがない。そう思ったその時だった。
「あ・・・」
彼女は、商品をポケットに突っ込み、お菓子コーナーを離れようとしていた。僕は、本当に何を思ったのだろうか。考えるより体が先に動いてしまった。
僕は、彼女の手首を掴んだ。
「あの!今、ポケットの中に!!!おか」
「キャァぁぁぁああああ!!!!」
「・・え?・・・・」
「誰か!!!!助けて!!!!」
「はぁぁぁぁあああ!?」
僕と彼女は、バックヤードに行って、店長さんと少しやる気のなさそうな警察官にお話を聞いてもらった。
店長さんは、彼女を指さして言った。
「えっと?君が、万引きをしたんだね?」
「やってません。このバカです。」
「は?」
このクソガキは何言ってるんだと思った。そんな中、店長さんが口を開いた。
「あのねぇ、夢ちゃん。これで何回目?もうお母さん呼ぶからね」
「え、ちょっと!何してるのよ!!」
「何回目?」
僕が疑問を口にすると、警察官の人が大きなため息をついて、口を開いた。
「彼女は、すぐそこの大市南高校の生徒でして、ここのスーパーでよく万引きをするんです。これでもう9回目でして・・・」
「な、なるほど・・」
だから、警察の人も、店長さんも呆れてるわけか・・っていうか、なんでこんな犯罪を…しかもこの歳で。母親を呼びたくないって・・
「はぁ、じゃあお母さん呼ぶね」
「えっ・・や、やめ」
「すみません。やめてあげてください。
「「「え?」」」
僕はバカだ。




