1.混血妖怪
美しい黒の毛並み。
それが僕等一族の特徴の一つだった。
長い永い時間を生きる妖怪達。
永い年月を生きていくうちに、多くの妖怪が種族の垣根を越えて子を生した。
それが僕等『狐猫』をはじめとした混血妖怪の始まり。
何処の世界にも、血の純粋さを重んじる者は居る。
その為に、僕等のような混血と呼ばれる一族は混じりっけのない純血種の妖怪達からは嫌われていた。
そして特に僕等狐猫は、彼等に命を狙われる。
理由は簡単。僕等の毛皮だ。
妖怪にとって黒は特別で、最も美しく至高の色なのだ。
だからその色を纏った僕等は、混血なのに、という嫌悪とその毛皮を手に入れようという、二重の意味で狙われていた。
狐猫は名前の通り、狐と猫の妖怪の混血。
妖術の方が長けている狐猫は、だからこそ純血種に見つからないように、姿を隠して暮らしていた。
純血で、なおかつ戦闘能力の高い鬼等には、勝算が低いからだ。
けれど純血種は、執念深く、僕等を見つけようと追い回す。
だから、多くの仲間は殺された。
そして殆どの仲間は毛皮を剥がれ、服に使われた。
僕自身も、捕まったことがある。
だけど、僕は他の仲間と違う特徴を持っていた。
だから、毛皮の為に殺される事はなかったけれど、身体中がボロボロになるまで殴られ、蹴られた。
長い時間、鬱憤を晴らすように暴行され続け、僕は解放された。
「命拾いしたな、白子」
そんな捨て台詞を、吐かれながら。
白子:メラニン の 生合成 に関わる 遺伝 情報の欠損により 先天的 にメラニンが欠乏する 遺伝子疾患 がある 個体 の呼称である。
この遺伝子疾患に起因する症状は 先天性白皮症 (せんてんせいはくひしょう)、 先天性色素欠乏症 、 白子症 などがあり、そこからつけられたものである。
現在は上記の事をひっくるめ、『アルビノ』と通称とされることが多い。