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ショートショート6月〜5回目

花粉猛威を振るう

作者: たかさば

今年の花粉は、とても強い。


強くて強くて…たまらない。

まさに()()だ。


市販の目薬をさしたぐらいで収まらない。

鼻をかんだぐらいじゃスッキリしない。

空気清浄機をフルで回したぐらいじゃ追いつかない。

完全リモートにして花粉から逃げているのに襲いかかってくる。

マスクをしていても突き抜けてくる。

五月を過ぎたくらいじゃおさまらない。


たかが花粉と侮っていたのがまずかった。

ここ数年、花粉症の症状が出ていなかったから油断していた。


毎日窓を開けて換気していたせいで、気付いた時には膨大な量の花粉が家の中に侵入していたのだ。

いつまでたっても花粉が弱体化していかず、家の中でも猛威を振るう事になってしまったという。


朝起きてから寝るまで目がかゆいし、鼻水も止まらない。

目薬は効かないし、ティッシュの使用量は天井知らずだ。


なんという忌々しいことか…。

花粉は、俺がのんびりと暮らしている間に、力を備えていたに違いない。

今年は徹底的に力を見せ付けてやるぜと、フルパワーで暴れているに違いない。


こんなにも……花粉に対して自分が無力になるとは、思いもしなかった。

子供の頃はどれほど花粉が飛んでいても、まるで平気だったというのに。

花粉症の数学教師をビビらせるために杉山に入って、花をむしってきた事もあったぐらいなのに。


……俺は、花粉に負けるぐらい、弱体化してしまったのだな。


もう、我慢の…限界だ。

市販薬はほぼ試したが、全く効いてくれない。

病院に行って、強力な薬をもらってこよう。

場合によっては、外科的な手段も考えねばなるまい……。



「……はい?」


耳鼻科に行ったら、今の時期は花粉が飛んでいないはずだと言われた。

そんなはずはないとひと悶着があり、どんなアレルゲンがあるのか血液検査をしてみることになったのだが。


「ほら、ココ見てください。スギは…アレルギー無いですよ、ハウスダストアレルギーですね」


思いもよらない診断が出て…混乱がすごい。

俺は18年前に…花粉症という診断を受けていてだな!!


「え、でも僕はスギ花粉アレルギーだって言われていて!」

「…今はアレルギーではない、という事ですよ。アーモンドとモモの値が高いですね。今後は食べ物にも注意して、窓を開けて換気して、掃除を心がけてみてください。点鼻薬と目薬も出しておきますけど、たぶん掃除するのが一番いいと思います。お大事に」


……ちょっと待て、俺のこの…花粉対策重装備は?!

もしかして、全部…無駄だった?

というか、マスクを突き抜けてくるレベルの家の汚さ…?!


「……ありがとうございました」


病院を出て、マスクを外してみる。


……。

くしゃみは……、でない。


……掃除、しなくちゃな。


俺は深呼吸を二、三回ほどしたあと。


大きく…、ため息をついたのだった

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