表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/24

7話

「俺の実力を見て、腰を抜かすんじゃねぇぞ。あと、俺は実力を認めた奴としかパーティーは組まないからな。俺が強いからって一緒にパーティーを組もうなんて考えはやめろよ」


「大きく出たわね。私がパーティーを組みたくなるような相手この町には一人もいないわよ。それを、今日冒険者登録するような人が自信満々に言い放つなんてね。私も舐められたものね」


「ということは、今は誰ともパーティーを組んでないのか? 冒険者って一人で行動するもんなのか?」


「いいえ、一人で冒険者してるのなんてこの町では私くらいよ。私だって最初はパーティーを組んでたのだけど、実力があまりにも違いすぎてついていけないって追放されちゃったの。もう昔のことだし、気にしてないわ」


 これは何気ない強さアピールだな。自分の強さをアピールすることに余念のないやつめ。

 一人でも活動できるんだったら俺も確実にそっちのほうが楽なんだろうな。魔王と同じような実力の俺についてこられる奴なんてそうそういないだろうし、居たとしても俺と性格が合わなかったらパーティーなんて組めないしな。わざわざ探すほどの労力に見合わない気がする。


「見えてきたわ。あれが冒険者ギルドよ」


 そういうと、角を曲がって見えてきた大きな建物を指差していた。


「思ってたよりもでかいんだな」


「当然でしょ。冒険者ギルドと言えば、お金を持ってるイメージを誰しもが浮かべるものよ。王都にあるギルド本部なんて凄いみたいなんだから」


「別に行く機会もないだろうしどうでもいいな。とりあえず、俺が生活できるだけの報酬さえ支払ってもらえればそれで満足だ。ほかに臨むものなんてねぇよ」


「それは貴方の実力次第よ。自信があるのでしょ? それなら自力で稼げばいいじゃない。冒険者は実力に応じて稼ぎがまったく違うからそこは覚悟しておいたほうがいいわよ」


 へぇ、それなら俺は一瞬で億万長者だな。

 魔王と並ぶ実力の俺に並みの依頼をさせるのはもはや世界の損失だ。俺という存在の無駄遣いだ。少しでも有効活用するために危険度の高い、報酬が破格の依頼を任せてほしいところだな。


「さぁ、入りましょう」


「ああ、どんなもんか楽しみだ。中も相当豪勢なんだろう?」


「広いけどこれといって珍しいものがあったりはしないわよ。しいて言えば、酒場が一緒になっているくらいかしら?」


「いいじゃねぇか。依頼で稼いだ金でぱぁーっと騒ぐ。完璧な流れだ」


 俺の期待はかなり膨らんだ。

 冒険者として稼ぐことさえできれば俺は毎日酒場で豪勢に食事をできるということだ。あんまり無駄に稼いでもしょうがないんだが、金なんていくらあっても困るもんじゃないからな。折角だし、がっぽり稼がせてもらうぜ。


 ガチャ。


 ドアを開けて冒険者ギルドの中へ入る。

 道行く人もかなりの人数だったが、この冒険者ギルドにも相当な人が集まってるな。鬱陶しい。

 中の作りとしては、メインの冒険者ギルドとしての設備と酒場に綺麗に分かれている感じだ。まだ昼間ということもあり、酒場のほうにはあまり人がいないのだが、冒険者ギルドのほうは人が無駄に溢れかえっている。


「初めて冒険者ギルドに入った感想はどうかしら? 何か感じるものでもある?」


「人が多くて鬱陶しいな。いつもこんなにいるのか? 混雑して大変だろ。これなら、酒場をなくして全部冒険者ギルドにしちまったほうがいいんじゃないか?」


「まぁ、この町にもそれなりに冒険者はいるのよ。魔物なんていくら討伐しても無限に湧いてくるのだし、依頼がなくなることもないわ。冒険者はいつだって人手不足なのよ。それと、酒場は冒険者の楽しみの一つなの。よほどのことがない限りは冒険者ギルドと酒場はセットで作られてるわ。依頼で配ったお金を回収するためかもしれないわね」


「確かに依頼をクリアした金で食べる飯はうめぇだろうな。でもそれなら、俺は冒険者界の救世主だな。俺が一人入るだけで、その状況は一変しちまうからな。おっと、あんまり派手にやりすぎるのは良くないな。俺も慎みというものを覚えないと」


「一人で何言ってるのよ。人一人の力でどうにかなるような問題じゃないわ。Sランク冒険者級でも言えることよ。初心者の貴方にはいくら何でも無理よ」


 これはさっきと同じ流れになっちまうな。

 何回同じやり取りを繰り返せば気が済むんだよ。俺だって暇じゃないんだぞ。さっさと冒険者登録を済ませて依頼をクリアしないと今日を食つなぐ金も宿代もないんだからな。こんなしょうもないことで時間を食ってる場合じゃないんだ。


「それに関しては俺の実力を見てから判断してくれ。それで? 冒険者登録するにはどこに行けばいいんだ?」


「それなら、あそこにある左手のカウンターよ。手続き自体は簡単だから世間知らずっぽい貴方でもできると思うわ」


「それを聞いて安心した。わかった。じゃあ、サクッと登録してくるから待っててくれ」


「それくらい一緒に行くわよ。貴方を見てると、無事に登録できるか心配だしね」


 俺はどういう存在だと思われてるんだ? さっき俺でもできるくらいの簡単な手続きって言ったじゃないか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ