21話
「もう少し誠意を見せてほしいところだけど、あんまりやりすぎても可愛そうだし、今日のところはこれくらいで許してあげるわ。確か、こっちに洞窟があったはずよ」
これでやりすぎてないなんて思っているのが末恐ろしい。
俺はすでに精神的に随分と参ってるんだけどな。これ以上やられてたら暴れてたところだって。魔王討伐する前に、殺人を犯すところだったぞ。
「これだけでかい口叩いておいて洞窟にリザードマンが居なかったら覚えてろよ」
「リザードマンがすべての洞窟に確実にいるなんてわからないわよ。そこはショウマの運次第ね。もしいなかったといても私のせいじゃないわ」
「いくら何でも横暴すぎるだろ。一体、どんな教育を受けて育ってきたんだ? そこは、謝るところだろうが」
「なんで私が謝る必要があるの? 私は厚意でショウマを洞窟まで案内してるのよ。そのあとのことまで責任をもてなんて、それこそ横暴よ」
おかしいなぁ。俺の方が悪い感じになってるんだけど。
このままじゃ、俺はずっとベルジナに舐められたままパーティーを組んでいくことになっちまうぞ。圧倒的な力の差があることを見せておかないといけないかもしれない。ちょっと山に甚大な被害が出るかもしれないが、そこは必要なことだし、山には我慢してもらおう。俺が魔王を討伐するのに必要な犠牲だったんだ。
「洞窟ってこの山にそんなにたくさんあるもんなのか? 一か所で生活できる数なんて高が知れてるだろ」
「無数にあるわよ。そのどこにでもリザードマンがいる可能性があるの。一般の人からしたらそんな危険な場所にちかづけけないでしょ。だから、私たち冒険者が定期的にリザードマンを討伐するわけ。それでも、追いつかない程の数がいるんだけどね」
「そんな山で働いてる人達は大変だろうな。俺も戦う力がないんだったらできれば近寄りたくないわここ」
「何をするのにも魔物の危険は付きまとうものよ。ほかの仕事だって似たようなものなんだから。それに、ここはまだ炭鉱を外壁で覆ってるから移動にさえ気を付けてれば問題はないはずよ」
確かに作業しているところまでリザードマンが入ってくるなんて考えるだけでも洒落にならないな。
それはなんとか防がないといけないってわけか。でも、この山にそんな外壁見たいなもんなんて見えたかな。遠くから見ていた時にもわからなかったし、登っている今でさえどこにあるかわからないんだが。
「あっ、あったわよ。あそこに洞窟が見えるわ」
ベルジナが声を上げ、前方を指さした。
その指の先を視線で追うと、そこに洞窟らしきものを発見した。
俺が想像していた洞窟そのまんまだな。入口があって、中へ続いている。この中に入るんだったら光源がないと何も見えないだろうな。太陽の光なんて入口からすぐの場所にまでしか届かないだろうしな。
「マジで覚えてたんだな。ちょっと半信半疑だったけど、無事に洞窟を発見できて一安心だ」
「ちょっと私のことを信用してなかったの? 年季が違うって言ったじゃない。これくらいのことは私にお任せよ」
「それで、この中へ入ってリザードマンを探さないといけないのか? どう考えても中は真っ暗で何も見えそうにないが」
流石にベルジナがそんな初歩的な殊に躓かないよな。
俺は洞窟にリザードマンが生息していること自体知らなかったから、ここで明かりを持っているわけもない。だが、ベルジナはそれを知っていたんだ。何ももあってないなんて間抜けなことはないだろう。
「これくらいだったら、中へ入っても見えるわよ。ショウマも能力値高いんだし、きっと見えるでしょ。これで、見えなかったら目は私のほうが優れてるってことでいいわよね? 少しずつだけど、ショウマに勝てるものが見つかって行って嬉しいわ」
「俺はベルジナの心配をしただけだからな。俺自身は、こんな洞窟なんて何でもねぇよ。外と変わらないくらいだ。むしろ、無駄な光がなくなって外よりもはっきりと見えるまであるぞ」
「それはちょっとおかしいでしょ。暗視の能力を持ってる人でもそうはならないわよ。話を持ってるのがバレバレよ」
なんで、こんなに真面目に否定されてるんだよ。俺が馬鹿みたいじゃないか。
実際にこの洞窟で俺は視界を確保することができるのか? 入ってみないことにはわからないかもしれないが、真っ暗で何も見えませんなんてことになったら、さらに馬鹿にされるに違いない。何としても、俺の目を覚醒させるしかないな。でも、俺の能力値はカンストしているようなもんだ。ベルジナのしょぼい目でも見えるんだったら、俺の目がそれを下回ることはないだろう。
「それじゃあ、入っていきましょうか。中は一本道になってると思うから、奇襲とかは気にしなくても平気よ。リザードマンを見つけたら、騒がれないように一匹ずつ討伐していきましょう」
「ああ、俺も騒がれても仲間を呼ばれるのは面倒だと思ってたんだ。その作戦で行こう」
俺たちは洞窟へと足を踏み入れていった。




