20話
「それじゃあ、さっさと進もうぜ。リザードマンってこの山だったらどこにでもいるのか? 4匹くらいだったらすぐに終わっちまうな」
「甘いわね。依頼が簡単に終わるとおもっていたら大間違いよ。リザードマンがどこかしこをうろついている山なんて危険すぎて誰も立ち入れないじゃない。少し考えたらわかるでしょ。この山には鉱山なのよ。一般の人達も出入りしているわ」
「いや、そんなこと知らねぇからな。後だしで情報を出しておいて知らなかったらダメだししてくるのはずりぃだろ。知らないことまではわからねぇって」
それにしてもこの山って俺が想像していた木が生い茂っているよくある山とはまったく違っているな。遠くから見ていても茶色いなと思っていたが、雑草すら生えていない。こんな場所も世界にはあるんだな。俺が元の世界で生きていたころじゃあ見たこともない。
しかし、リザードマンがこの山のどのあたりに生息しているのかわからないのにむやみやたらと探すのは効率が悪すぎる。こう言うところでも俺の効率廚の血が騒いでしまう。どうすれば、効率的にリザードマンを探すことができるのか?
少し考えてみたが、今日の今日冒険者になったばかりの俺には荷が重すぎたみたいだ。何も思いつかない。そもそも、リザードマンをりうまく想像できていない俺が考えるの事態無理があったんだよ。
「どうするんだよ。これじゃあ、どこにリザードマンがいるのかわからねぇじゃねぇか」
これぞ、必殺丸投げ。冒険者としての経験は圧倒的にベルジナの方が上だ。むしろ、俺に勝っているところなんてこの一点だけだろう。こういう時でこそ役に立ってもらわなくちゃ意味がないんだ。
だから、俺がベルジナに丸投げしたのは当然のことで、俺が力不足とかそういうことじゃないからな。
「私が何年冒険者をしてきてると思ってるのかしら? Eランク冒険者の頃に嫌という程戦ってるのよ。リザードマンは洞窟を根城にするの。洞窟さえ探してしまえば、そこに4匹はいると思っていいわ。だから、今回の依頼は洞窟を探すようなものよ。戦闘は苦にもならないでしょ?」
「当然だ。俺がトカゲに苦戦することなんてありえねぇ。少し気は進まないが、とりあえず周囲を探索して洞窟を探すってことでいいんだな? はぁ、それじゃあ、手当たり次第じゃねぇか」
「あら、私が洞窟の場所を覚えていないとでも思っているの? 何度も来た場所を忘れるわけないでしょ」
「マジか!? もったいぶるんじゃねぇよ。それだったらさっさと案内してくれよ。思ったよりも役にたつじゃねぇか」
「上から目線ね。ショウマとは違って私は頭もいいからこれくらい造作もないわ。ショウマの頭だったら記憶できていないかもしれないけどね」
なんてこと言うんだよ。大きなお世話だ。
でかい声で反撃してやりたいところだが、俺は何度か来たところでこの山の洞窟の場所を覚える自信もない。ここで下手に反撃して、記憶力を証明しろとか言う話になったら大問題だ。もっと恥をかくことになっちまう。
何事もなかったかのように華麗にスルーしよう。俺が大人の対応をするだけで、図星をつかれたとかそういうんじゃないからな。
「あら? 何も言い返してこないの? でも、そうよね。ショウマの頭じゃ実際、記憶するなんて難しいものね」
「ふざけんなよ!! 俺が黙ってればいい気になりやがって」
「いいの? 案内してあげないわよ? 人にものを頼むときにはそれなりの態度があるんじゃない? どうしたの? ショウマがお願いしない限り私はここから一歩も動くつもりはないわよ」
何て奴なんだ。確かに大人の対応とか言いながら声を荒げてしまった俺にも非はほんの少しだけあるのかもしれないが、絶対にこの件に関して言えばベルジナのほうが悪いだろ。子供みたいなことしやがって。
俺がベルジナに頭を下げてお願いだぁ……無理だ、そんなことプライドが邪魔してできねぇ。そもそも、パーティーにベルジナを入れてるのは冒険者としては初心者の俺をサポートするためなんじゃなかったか? なんで、お願いなんてしなくちゃいけないんだよ。
「……洞窟まで案内しろ」
「それが人にものを頼む態度かしら? 別にいいのよ、私はいくら遅くなろうが構わないわ。むしろ、困るのはショウマなんじゃない? 私は依頼を失敗して帰ってもこれまで貯めてるお金もあるのよ。そろそろ、自分の置かれてる立場を理解したほうがいいんじゃないかしら?」
「っぐ、鬼め……案内してください」
「声が小さくて聞こえないわねぇ。ショウマってこんなに声が小さかったかしら? それとも、頼むのが恥ずかしいの? それくらい子供でもできるわよ」
うざすぎる。これなら、手あたり次第高速で移動して探すほうがいい気がしてきた。
もういっそ、ここでベルジナとは縁を切って、一人で依頼をクリアして町まで戻るのもありなんじゃないか? ベルジナとパーティーを組むメリット何て女の子だってこと以外ないだろ。
「じゃあ、もう俺は自分で探すことにするわ」
「え? ちょっと待ちなさいよ。ここは相当広いわよ。まず、間違いなく日が暮れるわ」
「案内してください!! お願いします!!」
諦めよう。今回だけはベルジナに勝ちを譲ってやる。
でも、これはあくまでも次への布石だ。勝ちにつながる敗北なんだ。




