19話
やっと町を出て、依頼へと繰り出した。
一体、ここまで来るのにどれほど無駄な時間を過ごさせられたことだろうか? 確実に言えているのは、あの能力値を測る水晶さえなければ俺は普通の冒険者として登録してすぐに依頼にいけていた。ここで、消費した時間が大部分をしめているし、その他だとベルジナとのやり取りもなければもっと早かった。良かったところとして強いて上げるならば、ベルジナとパーティーをくめたことくらいだろうな。それもまだ、本当に良かったことなのか証明されていないから、これからの楽しみとして見物しようじゃないか。魔物と出くわしたところで、俺は身を隠すか、すべてをベルジナに丸投げして仁王立ちして見に徹してやろう。
「なんでずっと黙ってした向いてるのよ。足元そんなに見なくても転ばないわ。用心深いのもそこまで行くと病気よ?」
「誰が病気だ。俺はただ考え事をしてただけで、足元に注意を向けていたわけじゃないんだよ。さっき勘が鋭いとか言っておいてこんなことも理解できないのかよ」
「もう少し言い方に気を使いなさいよ。私はか弱い女の子なのよ。強い言葉でいじめられたら泣くわよ」
「それは悪かった。でも、俺のパーティーメンバーはか弱い女の子に務まるもんじゃないからな。本当に残念だけど、パーティーから抜けてもらってもいいか?」
「ああっもうっ!! ああ言えばこう言うんだから。私が言いたかったのは女の子に対してもう少し気を使いなさいってことよ。そんなんだからモテないのよ」
ベルジナは俺の何を知っているというんだろうか?
俺がこれまでの人生どれだけモテてきたことか。こいつにも見せてやりたいわ……俺が泣きそうだ。
「知らないくせに適当なこというんじゃねぇ。俺がモテないってそんなわけないだろうが!! 撤回しろ!! 撤回しやがれ!!」
「その焦りようがもう肯定しているようなものじゃない。さぞかし、モテない人生を歩んできたみたいね。私は見ての通り可愛いから、まあ、これまで数知れないほどの男たちから告白されてきたわよ」
ふんぞり返って自慢げな顔をしているベルジナをぶん殴ってやりたいが、こいつの顔がいいって言うのはまぎれもない真実なんだよな。でも冷静に考えて、Aランク冒険者なんて高位の冒険者がそんなにモテるのか? 強すぎて恐れられそうだけど、そこは俺も実際のところはどうなのかわからないな。尊敬されることはあるだろうけどさ。
「お前こそ適当なこと言ってんじゃねぇぞ。俺がベルジナの今までを知らないからって大ほら吹きやがって」
「な、なんで嘘だってわかるのよ!! あっ……」
「やっぱり嘘なんじゃねぇか。わかってんだってそれくらい」
「う、嘘じゃないわ。実際に何度も告白されてるんだから!!」
俺が言えたことじゃないんだが、焦っているところが妙に怪しい。告白されたって言うのは本当なのかもしれないが、何かがおかしいぞ。
ってか、なんでまた俺たちはこんな無駄な話をしてるんだよ。俺がモテてたとか、ベルジナがモテてたとかこれから魔王を討伐するうえで一ミリも関係ないじゃないか。馬鹿か俺は、こんなことで言い争ってるくらいなら少しでも早く目的の岩山へ急ぐべきだろうが。
「わかった。そういうことにしておいてやるから。急いで行くぞ。おしゃべりしすぎてペースがかなりおちてるからな」
「そうね。そうしましょう」
明らかに助かったという風だが、もう問いただす必要もないな。
これは一つ貸しにしておいてやろうじゃないか。
「やっと着いたな。ここがお目当ての何とか山か。遠くからでもわかってたけど、すっげぇ標高だな」
「ガンセキ山よ。依頼の場所なんだからおぼえておきなさいよ。それくらい冒険者としては当たり前に必要なことよ」
「いやいや、覚えてたって、俺はベルジナがしっかり覚えてるか試そうとしたんだよ。俺の能力値見ただろ。そんなことも記憶できないわけがないんだ」
「おかしいわね。確かショウマの能力値で知力だけ普通だったような気がするんだけど、むしろDとかじゃなかったかしら?」
おっかしいなぁ。俺の能力値はカンストしてるはずなんだけどなぁ。なんで神様は頭だけいじってくれなかったんだ?
おかげさまで記憶力が悪くてちょっといじられてるんですけど。今からでも入れる保険ってありますか? 頭だけ少し強化してくれませんかねぇ。
「見間違いってことにしておいてくれ」
「何? もしかして気にしてるの? フフッ、ショウマの弱みを一つ握っちゃったわ。これで当分からかって上げるから覚悟しなさいよ。私を今まで散々馬鹿にしてくれたお礼をしてあげるんだから」
「鬼じゃないか。おーい、ちょっと手加減をお願いしまーす」
なんでこんなことになっちまったんだ。まぁ、俺の頭は別にそこまで悪いわけじゃないからな。ほんの少しだけ平均よりも低いかちょうど平均くらいかな。そうだって、俺の頭が悪いんじゃないんだ。
でも……俺の能力値をベルジナに見せるんじゃなかった……。




