16話
「行きましょうか。私がすぐに依頼を選んであげるわ」
「頼むぞ、そこだけだけがベルジナの役に立つところだからな。それ以外で期待してないんだからそれくらいは頑張ってくれよ」
「依頼を選ぶだけなのに頑張るって何よ。そもそも、私は戦闘でも役に立つんだから。甘く見ないで頂戴。ショウマだって私の能力値は見てるでしょ? 普通の冒険者としてはすごいレベルなのよ」
まあ、能力値もSとかもあったしそれなりに高いって言うのはわかるんだけどさ。それでもさ、俺は魔王を倒すのが目的なわけで人間の中でそれなりに強いくらいの強さじゃ役に立たないんだよな。
ベルジナがこれから成長していって人類最高峰の冒険者になるって言うんだったら俺の時間も無駄にしてたわけじゃないってことになるからそれを信じてやっていくしかないか。ベルジナだって俺と同い年くらいだし、まだまだ成長の余地を残していそうだもんな。最強ってのは無理かもしれないけど、それなりのところまでは何とかなるだろう。
「それで? Eランク冒険者の俺はどの依頼を受けたらいいんだ?」
「そうね、こっちの依頼ボードに張られている紙の中から選ぶんだけど、注意するのが左下に書かれてあるランクね。ここに書かれているランク以下の冒険者は依頼を受注することができないわ。だからショウマが受注できる依頼はFとEって書かれているものだけなの。わかった?」
「ふーん、それじゃあ、選べる選択肢がそもそも相当狭いじゃないか。俺が今日一日過ごせるだけの報酬は貰えるんだろうな?」
依頼をクリアしたのに、まさかの金が少ない何て笑えない状況にだけは陥りたくないからな。
報酬で今日の寝床と飯を確保しないといけない俺は安い報酬の依頼なんてしていられる場合じゃないんだ。ここで、ベルジナとパーティーを組んでいることを使ってAランクの依頼を受けたりはできないんだろうか? いや、そんなことできるわけないか。俺みたいな初心者がAランク冒険者とパーティーを組んでるっていう状況も相当珍しいんだろうが、実力的にそんな依頼に挑戦させたりしたら確実に死んじまうしな。俺みたいな特殊な例を除いて、数ランクも上の依頼をこなしたりできる冒険者なんていないだろう。精々、一つ上くらいまでが関の山だ。無謀なことをする奴から死んでいくからな。
「取り分によるわね。私と山分けなら問題はないでしょうけど、ショウマがクエストじゃ役に立たないことは明白だしね。私のほうが取り分は多くてもいいかしら? 9対1でどう?」
「もうお前とはやって行けそうにない。これっきりで終わりだ。じゃあな」
冗談のつもりで言っているのかよくわからないが、こんなに笑えない冗談に付き合ッてられるほど俺は暇じゃないんだよな。
すぐに、後ろを向き、ベルジナのもとから去ろうと歩き始める。
「ちょっと待ちなさいよ。冗談に決まってるじゃない。山分けなんてけちなことは言わないわ。ショウマの取り分が6でいいわよ。私はこれでもAランク冒険者だから、それなりに稼いでるのよ」
「はぁ? おれの取り分が6だと? 少なすぎるだろ」
「もう、わかったわよ。8でいいかしら? 流石にただ働きさせるつもりじゃないでしょうね? 私だってボランティアで冒険者やってるわけじゃないんだからそれくらいはいいでしょ」
「しょうがないな。俺が8でベルジナが2、これで決定だ。今後もこれを崩すつもりはないから、もし金がなくなった時は勝手に一人で依頼に行ってくれ」
6でもまあ十分だったのだが、案外ごねてみるもんだな。まさか、二人のパーティーで俺の取り分が8割になるとは思わなかった。これで、もはや一人で依頼を受けているようなもんだな。ベルジナには悪いが、俺は正真正銘の一文無しだからな。日頃から稼いでいるベルジナには我慢してもらおう。俺は金が必要なんだ。
「それはおかしいわよ。ゆくゆくはAランクやSランク冒険者になるつもりなんでしょ。そうなっても私が2にしか貰えないのはおかしいわ。ショウマだって十分すぎるほどに稼いでるはずよ。私だけお金がなくなるなんて無理よ」
「そこまで言ったら、半分にしてやってもいいが、そもそもベルジナが役に立たなかったら解散するパーティーだってことを忘れるなよ。俺がべるじなのことを見限った時は抜けてもらうんだからな。ってか、ベルジナの知り合いにSランク冒険者とかはいないのか? いたらパーティーに誘うから紹介してくれよ」
「Sランク冒険者の知り合いなんていないわよ。私は基本的にこの町を活動の拠点にしているの。たまに、別の町にも行くことはあるけど、Sランク冒険者と関りになれる機会なんてほとんどないわ。この町にはSランク冒険者はいないから、この町で探すのは諦めたほうがいいわよ。ほかの町のSランク冒険者もこの町に用事なんてないでしょうしね」
それじゃあ、俺は活動拠点を違う町に変更したほうがいいってわけだな。
早くも、この町を離れる可能性が生まれてきてしまったな。




