11話
「いや、まだよ。まだ私は信じたわけじゃないわ。だっておかしいもの。こんな出鱈目な能力値を持ってる人間がいるなんて信じろってほうが無理なん話なのよ」
「往生際が悪いにもほどがあるだろうが、受付のお姉さんだって俺が冒険者カードに不正をしてないって証言してくれてるんだぞ? どうやっても俺の能力値を信じないつもりなんじゃないだろうな? ……まさか自分よりも能力値が高いのが悔しいのか?」
「そ、そんなわけないじゃない。私がそんな子供みたいな理由だけで認めないっていうつもり? 現におかしいじゃない。その能力値が本当なんだったら魔王討伐も夢じゃないレベルよ。Sランク冒険者でももう少し可愛げのある能力値してたわよ」
へぇー、それはいいことを聞いたな。
つまり俺の能力値はSランク冒険者、冒険者の頂点の奴らよりも高いということだ。まあ、Sランク冒険者とひとくくりに言ってもそこに優劣は存在するだろうし、ベルジナが見たというSランク冒険者が最高峰の奴だったかは謎だがな。
それにしても、冒険者カードに不正をしていない時点で俺のことを信じるしか道は残されていないじゃないか。何がそんなに認められないんだよな。本当に、俺よりも劣っていることが悔しいだけなんじゃないか?
「ベルジナさん、私も言っている通りで不正はないんですよ。これがショウマさんの能力値なんです。多少、いえ、相当おかしな数値ですがこれも将来有望な冒険者が現れたと思えばいいじゃないですか」
「将来有望なんて可愛いレベルじゃないわ。現時点でもショウマに敵う冒険者なんて一人でもいるのかしら? それくらいやばい能力値なのよ。今日冒険者になろうって人が、何年も魔物を討伐してきた冒険者よりも強いのよ。どう考えても異常でしょ」
「そう言うなって。俺だって色々と修行してたんだからな。まったくの素人ってわけじゃないだ。むしろ、俺の方が頑張ってきたまである。確かに、魔物との戦闘経験はないけど、これまでのことを考えれば魔物と戦うのだって別に苦労するもんじゃないしな」
お姉さんがいい感じにフォローを入れてくれるが、ベルジナは一向に信じようとする気配すら見せない。すさまじい負けん気だよ。俺だったら流石に現実を受け入れてるもんな。
それよりも、冒険者たちの視線が俺たちの方に集まっていることの方が気になるんだが……。
これじゃあ、俺の能力値が全員にばれてしまいそうで怖い。そんなことになったら俺は魔王討伐の勇者として旅に出る羽目になってしまうんだろうな。最終目標は魔王討伐だが、そこに至るまでには過程って言うものがあるんだ。俺にも、色々と考えていることがある。それに横やりを入れられるのは相当に不快だ。
「ベルジナがあんなに驚いてるなんて普通じゃねぇよ。一体あいつは何をやらかしたんだ?」
「ありゃ新顔だぜ。これから冒険者登録しようっていう新米じゃないか。それがなんでベルジナさんと一緒にいるんだよ。くそぉ、俺だってベルジナさんと話てぇよ」
「言ってる場合かよ。あの光をお前らも見ただろう? あれはどう考えてもあいつが原因だぞ」
俺の耳にも冒険者たちが話している内容が聞こえてくる。
どうやら、俺には既に疑いがかかっているみたいだ。これが、全部その通りだから言い逃れができないんだよなぁ。冒険者カード何て見られた日には一発でアウトだ。
プライバシーの問題もあるから、俺が見せるのを拒否すればいいだけだが、人の口には戸が立てられないからな。ベルジナとお姉さんが誰かに喋っちまったら芋づる式に広まって行っちまう。それだけは何としても避けないと。
まずは集まっている視線を散らすところから始めないとな。
「ああ、こりゃ参ったぜ。冒険者カードがいきなり爆発しやがった。おかげで俺の能力値も見れねぇよ」
とりあえずでかい声で出鱈目なことを言っておく。
冒険者カードが爆発した光ということで押し通したい。そうすれば、俺が原因なのではなく、不具合を起こした冒険者カードが原因だってここにいる奴らも思うことだろう。俺は晴れて疑いの視線から逃れられるというわけだな。
「いきなり何言ってるの? 頭がおかしくなったの?」
「ちげぇよ。なんかさっきの光で注目浴びちまってるから嫌だったんだよ」
「はぁ、それは仕方ないわよ。目をやられるんじゃないかってほどの光だったしね。ショウマの能力値をみんなにも教えてあげようかしら? 一体何人の冒険者が信じてくれるか気になるわ」
「絶対にやめてくれ。俺は無暗に目立つような真似はしたくないんだ。そんなことされちまったら俺は冒険者として活動できなくなっちまうだろ」
とんでもないことをぬかしやがって。こいつは鬼かよ。俺が目立ちたくないのをわかってて言ってるんじゃないだろうな。もしそうだったら、一生恨んでやるからな。
まさか、本気で全員に俺の能力値を教える気じゃないよな。そんなプライバシーのかけらもないことしないよな? なぁ、ベルジナさん。




