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まぜそば  作者: はな
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 満を持してテスト最終日をむかえた。英語のテストの答案用紙を全て埋めたあと、残り時間でまぜそばに思いを馳せ始めた。ピリ辛と山椒どちらを選ぶか、それが問題だ。ピリ辛は醤油ベースで山椒は塩ベースらしい。どちらにも温泉卵がのっていて肉の具材は異なるのだが、残念なことに二杯平らげる胃袋は持っていない。男子高校生の名折れである。

 脳内で難しい二択に頭を悩ませていると、終了のチャイムがなった。


 自転車をとばして念願の連王閣(れのうかく)に辿り着く。

「やって来ました!新作まぜそば!そしてありがとう神さま仏さま高倉様!」

 道中もピリ辛と山椒に迷っていると高倉が、片方俺が頼むからメインで食いたい方を頼みなと提案してくれたのだ。救世主か。いや、心の友よ。ちなみに高倉はラーメン二杯くらいものともしない健啖家である。ピリ辛醤油ベースに心を決めた僕は神妙な面持ちでまぜそばの到着を待った。十数分後、いざ、実食。

 

「最高だったな、ピリ辛の肉味噌があんなに美味いとは予想外だった、メイン客層が家族向けだから基本あっさり志向だけど僕にとってはちょうどいい味付けで温泉卵との相性は言わずもがな、そしてこの価格ときたものだ。山椒の方もニラとネギに染み込む塩ダレが美味かったしあれをもし家で再現するなら前作ったことのあるごま油のネギだれで作ってみようかな……。高倉?」

 テンションが上がって喋りすぎてしまうのは悪い癖なので、不味いと思った矢先、高倉の顔を伺うと、真顔の標準装備を外した、なんだか見た事のある表情をしていた。『お前の顔は、表情がくるくる変わるところが好ましいと思う。』あの場面が脳内でリフレインする。

「高倉がまぜそばに付き合ってくれたおかげだよ。ありがとうな。」

「まぜそば、好き?」

「おう!」

「走るのも好き?」

「ああ、好きだぞ。」

 話があらぬ方向に飛ぶのは僕の専売特許のはずなのにと思いながら答える。

「そういえばいつも僕の好きなことに付き合ってもらってばっかりだからさ、高倉もなんかあったら遠慮なく言えよな。」

 腹ごなしに自転車を押して歩いていると土手に到着した。せっかくなので土手っ腹に仰向けになる。少し遅れて高倉は隣に座った。

「俺は、君の色々な表情がみたい。」

「ん?」

「俺自身、走るのもまぜそばも好きだけど、君の好きなものと一緒にいれば、僕も君の好きなものに加えてもらえるチャンスがあるんじゃないかと思ったんだ。」

「だからもっと君の好きなものをもっと教えて。」



 なんということでしょう。寝っ転がった僕には高倉の表情は逆光で見えなかった。おいそれはどういうことだ。顔が熱いし心臓がすごい。

心の、友よ?



「いざ、実食」は古いかもしれん。

ありがとうございました。

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