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マンホールの怪物  作者: 小石沢英一
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第二章 二 ハンバーガーショップ

 イヤホンからティーンフュチャーの曲が流れている。


 流都は自宅にいる時はずっと聴いていた。


 毎日のようにりりかからメールが来る。出会ってから三日が経過した。


『今日は暇?』と、文字が送信されるが、『忙しい』と、すでに定型的に返信していた。

 

 三日間、断っていると、『クラス会の事で相談が』


 と、りりかはいつもと違う文を送信した。


『何だよ。内容は?』


 と、流都が返信する。


『メールでは無理』


 流都は無視した。


『ハンバーガーショップで待ってます』


 と、地図も添付してきた。


『忙しい』


 と、流都はいつもの定型文を返信した。


『何時間でも待ってます。来ないと、凍えてしまいます』


 流都は大袈裟だ。と、思った。


『しょうがないから、待ってろ』


 と、返信した。


『はーい』


 と、ハートマークをつけて送信しきた。


 流都は重い腰を上げて、ハンバーガーショップに向かった。


外は風もなく、寒いと表現するにはほど遠い。長袖のシャツで充分である。まだ九月だからだ。


 ハンバーガーショップの前にりりかはいた。特に寒そうな気もしない。


「遅いよ。凍えたらどうすんの?」


 と、りりかの顔は微笑んでいる。


「急いで来たんだぞ。暑いくらいだ」


 流都は苛立っていた。


「そんなに怒らないの」


 りりかはなだめるように言った。


「わかったよ。クラス会の事だろう」


「そうでした」


「こんな所を学校のやつらに見られたらやばいから……」


「どうしたの? 恥ずかしい?」


「……」


「じゃあ、中で話しましょうよ」


「ちょっと……」


 りりかは先に店内に入って行った。


 流都は店内に入るのを躊躇ためらった。小遣いが少ないからだ。と言うより、ティーンフュチャー関係の物に小遣いを使いたいから、ここで出費は避けたかった。しかし、今さら外で話そうとは言えず、価格の安いドリンクだけを注文した。


りりかはハンバーガーセットを頼んだ。


 流都は先に二階に上がった。イートインのスペースは混み合っていたが、空席はあったので、とりあえず座った。


「おーい、こっち」


 りりかがキョロキョロとしていたので、手を上げて呼んだ。トレーにはハンバーガーとポテトとドリンクが乗っていた。


「お待たせ」


「別に待ってないけど」


「そう」


 と、りりかはドリンクを飲んだ。


 流都はじっと見ていた。


「飲まないの?」


 と、りりかは言って、ポテトを差し出した。


「ありがとう」


 流都はポテトを一本取って、口に運んだ。


「日付を決めましょう。佐村先生は早めに言ってくれれば、都合つくからって」


「そう……」


「場所は日曜日なら、教室を使えるかもって」


「そう……」


「学校以外だと、お金がかかるから、そうすると、会費も上がるからね」


「そう……」


「さっきから、元気ないね。これ食べて」


 と、りりかはハンバーガーを差し出した。


「いいよ」


 と、否定したが、流都はハンバーガーを食べていた。


「流都があまり、乗り気ではないから、日付は決めたよ」


「そう……」


「二ヶ月後の第二日曜日の午後一時からって事でいいよね」


「うん……」


「やっと、違う言葉を言ってくれた」


「そう……」


「もう!」


 りりかは頬を膨らませた。


「フグか」


 りりかは笑った。


「フグで思い出したけど、知っている?」


 りりかは真剣な眼差しだ。


「何をだよ」


「カエルを捕まえると、何か、欲しい物と換えてくれるんだって」


「ええ? カエル? それ本当か?」


「昨日も小学校に行って佐村先生に会った時に聞いたんだけど、小学校では流行っているんだって」


「それに似た事を聞いた」


「小学生から?」


「違う、大きなおじさんだ」


「へぇ」


「カエルをおじさんに渡さないと地球滅亡だって!」


「へぇ」


「こんなに話題になっているって事は本当だったのかな……」


 流都は心変わりしていた。


「へぇ」


「さっきから無関心のようだけど……」


「そう?」


「地球が滅亡するんだよ!」


「まあまあ、興奮しないでよ」


「さがしに行こう」


「えっ?」


 りりかは口をポカーンと開けたまま固まった。


「じゃあ、一人で行くから」


 と、流都はハンバーガーショップを出た。


 最近、小学校前にある公園を通る度に疑問に思っていた。遊んでいると言うより、何かをさがしているように見えた。ただし、それほど気にしていなかったから、スルーした。


 今日の公園内も遊んでいる雰囲気ではない。


小学生はいるが、ウシガエルさがしに没頭している。


 流都は辺りをキョロキョロと見回した。


 小学生だらけで、さがす場所がない。


 諦めるしかない。


 販売機が目に入ったので、清涼飲料水を買った。とりあえず公園内のベンチで、喉を潤していた。


「見つけた?」


 りりかだった。


「どうした?」


 流都はボトルのキャップを閉めた。


「カエルさがすんでしょう?」


「ああ」


「ジュースを飲んでないでさがしましょうよ」


「これじゃ、無理だろう」


「無理って言わずに」


「カエル大丈夫なのか? 大きいぞ」


「大丈夫じゃないけど……」


「なら、帰れ」


「嫌。流都が捕まえて、私に頂戴」


「何でだよ」


「欲しい物があるの」


「俺だってあるから、お前には渡さない」


「流都は何がほしいの?」


「チケット」


「何の?」


「ライブだよ」


「何だ、つまらない。お金があれば買えるじゃない」


「つまらない? 抽選だから、お金の問題だけではない。りりかは何がほしいんだよ」


「教えない」


「何だよそれ。俺のを聞いておいて、りりかは教えないのかよ」


「だって……」


「どうせ、めちゃくちゃ値段の高い物でもほしいんだろう」


「お金じゃ買えない」


「何だそれ。わかんーね」


 と、流都は言って、ベンチを立った。


「さがさいないの?」


「こんなに小学生がいたら、見つからないよ。帰る」


 流都はスタスタと歩き出した。正直、りりかが追って来ない事にほっとした。歩きながら、清涼飲料水のラベルを見て、ニヤけた。

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