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第五章 二十九 沈黙
流都はティーンフュチャーのコンサートを終え、興奮状態だった。招待してくれたうえにエマからメッセージをもらい感激した。
横にはりりかがいる。
流都とりりかはずっと無口のままだった。人混みで話すにも憚る。
電車も混雑をしていた。
流都は気持ちを伝えたかったが、タイミング的に難しく、黙ったままだ。
とうとう、降りる駅に着いた。
帰宅する人々が一斉に改札に向かっていた。
その中に紛れないように、人が減るの待った。
改札を出る人も減り、ゲートの前には二人だけになった。
「ねえ……」
りりかが声を出した。
流都は無意識に歩き出していたが、立ち止まり、振り返った。「どうした? 行くぞ」
りりかは何か言いたそうだったが、黙って流都の一歩後に着いていた。
終始無言だった。
何も話さずにりりかの自宅前に着いてしまった。
「送ってくれてありがとう……」
りりかはお礼を言うが、流都は頷くだけで、すぐに背を向け歩き出していた。
りりかはモヤモヤしながら玄関に向かった。
「ちょっと!」
流都が呼び止めた。
「なあに?」
りりかは振り返ると、流都がいた。
「好きだよ……」
流都は顔を赤らめて、ひと言だけ言い残し、走り去って行った。




